![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/120853492/rectangle_large_type_2_e30fde8351495ea64903b057b8daae75.jpeg?width=1200)
全国自然博物館の旅【6】我孫子市鳥の博物館
人と鳥の共存をテーマにして開催される、日本最大級の鳥類系イベント「ジャパンバードフェスティバル2023」。フェスティバルが千葉県我孫子市で開催される理由は、野鳥が数多く訪れる手賀沼と、鳥類を専門とする博物館があるからです。
ジャパンバードフェスティバルで盛り上がった我孫子の街より、鳥類の研究展示の超エキスパートと言うべき「我孫子市鳥の博物館」を紹介します。
全国の鳥好きが集結! 人と鳥の未来を考える祭典
「鳥博」の名で知られる本館は、日本唯一の鳥を専門的かつ総合的に研究展示する博物館です。つまり、鳥類学の超プロフェッショナルであり、鳥についての多大な知識を本館から得ることができます。
博物館は手賀沼という湖に面していて、水辺に生息する鳥たちに関する知見も膨大です。鳥の生態や進化の秘密、手賀沼の自然環境、人と鳥の共存への道ーー非常に魅力的で考えさせられるテーマを展示から受け取ることができますので、老若男女問わずたくさんの人に来館して見ていただきたいです。
![](https://assets.st-note.com/img/1699170884247-7zxItIikwG.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1699221013719-6Fe2K8DVSg.jpg?width=1200)
筆者が訪れたときは、ジャパンバードフェスティバル2023の真っ最中! 国内各地のNPOや地方自治体をはじめとした鳥の保護団体が我孫子市に集結し、それぞれの保全活動について一般の方々に教示してくれます。また、街の公共施設は鳥に関する催し物であふれ、手賀沼には大勢のバードウォッチャーが訪れます。
つまり、鳥を愛する人たちが全国から集まってくるのです!
この期間中は博物館も入館無料になるので、来館者には嬉しいですね(笑)。
博物館へ向かう道中では、ジャパンバードフェスティバルの催しをしっかりと満喫しました。
まずは駅前の坂を下り、手賀沼の畔のアビスタへと向かいます。
![](https://assets.st-note.com/img/1699173164221-Vf7tQIDmVI.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1699174373228-It3OqEEr02.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1699174937955-1gwCmh8YFa.jpg?width=1200)
手賀沼沿いの道を歩くこと約10分、ジャパンバードフェスティバルのメインエリアである手賀沼親水広場に到着。フェスティバルの期間中、本施設の駐車場は鳥の保護団体の出展会場へと変わります。
全国各地で鳥の保護を行われている団体の活動報告について、展示と解説で学ぶことができます。環境保全活動の現場の最前線を知るために、こういった機会はとても貴重だと思います。
![](https://assets.st-note.com/img/1699176919361-iHAO9vPz5E.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1699177183489-kvWXLcur82.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1699177319756-pqJ7WI6AcW.jpg?width=1200)
各ブースで興味深い時間を堪能したら、親水広場から道路を挟んで反対側へ。
お待たせしました! 我孫子市鳥の博物館へと到着です!!
![](https://assets.st-note.com/img/1699173708400-EMY0Wb8jDX.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1699173766208-9DhWIpHS2c.jpg?width=1200)
国内唯一! 鳥類学の専門博物館!!
手賀沼の自然環境と多種多様な現生鳥類たち
本館の鳥の標本は剥製・骨格合わせて膨大な数にのぼり、とても見応えがあります。鳥は最も繁栄している陸上脊椎動物であり、サイズや形態には驚くほど多様なバリエーションがあります。鳥博の剥製展示を目の当たりにすれば、その驚異的な多様性がわかります。
地球スケールの展示へ繰り出す前に、まずは手賀沼の自然に根づく鳥類の生態を学びましょう。水辺に飛来する鳥たちの各季節の暮らし方を、ジオラマ展示によって知ることができます。我孫子市ではどの季節にどの鳥と出会えるのか、バードウォッチャーにはとても参考になりますね。
![](https://assets.st-note.com/img/1699172351156-34qbuexwm4.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1699172470314-P0uEfXzJ6l.jpg?width=1200)
そしてやはり圧倒されるのは、百花繚乱ーーそれ以上に壮観な世界中の鳥たちの剥製標本。2階と3階には大型の展示ケースが設けられており、2階では企画展の標本が展示され、3階には268点もの剥製が常設展示されています。
鳥たちのかっこよさ、美しさ、神々しさにはきっと息を呑むはずです。
![](https://assets.st-note.com/img/1699174006246-IlBIrUHJP0.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1699174201656-nwMfYgR9S6.jpg?width=1200)
筆者来館時の企画展は猛禽類であり、空中最強のハンターたちの凛々しさと強さの秘密をしっかり目に焼きつけることができました。そして、他の鳥たちにもまた違った美しさがあり、その姿は常設展示で存分に味わえます。
![](https://assets.st-note.com/img/1699177576297-w8X9FGWb6g.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1699177699558-mtAUd6RcEG.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1699177815780-YdpwlPwnxi.jpg?width=1200)
どの剥製標本からも気高さを感じられ、ぜひ1点ずつじっくり見ていただきたいと思います。近い種類同士の差異を見つけてみるのもおもしろいかもしれません。
さらに、剥製だけでなく、各種類ごとの卵や巣の展示もあります。卵・巣の形態的特徴は、鳥の種類を見分けるうえで重要なファクターです。こういった標本を詳細に研究することは、鳥たちの生態解明に大きく役立つのです。
![](https://assets.st-note.com/img/1699178543706-L480h6N6v9.jpg?width=1200)
数百体の剥製標本を改めて眺めてみると、鳥たちの多様性には本当に驚かされます。空を飛べるだけでなく、どんな環境に適応していけるしたたかさが、現代の彼らの大繁栄へとつながったのでしょう。
![](https://assets.st-note.com/img/1699178219967-oiW3f5h9gu.jpg?width=1200)
過去から未来へ! 人と鳥の共存を目指して
鳥の進化の道程と古代種についても、本館には興味深い展示がたくさんあります。まず目につくのは、始祖鳥アルカエオプテリクスの実物大模型と化石の復元展示。最新研究で甦った繊細で美しい姿を、ぜひ堪能していただきたいです。
![](https://assets.st-note.com/img/1699189578392-gDNVctnpvK.jpg?width=1200)
巨大なジャイアントモアの骨格とディアトリマ(ガストルニス)の実物大模型でしょう。後者は約5000万年前の地上に君臨した陸上鳥類であり、哺乳類と競合関係にあったと考えられています。とっても大きくてかっこいい!
![](https://assets.st-note.com/img/1699190221132-ok7yu1RSaY.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1699190493313-G1RUJjTkFL.jpg?width=1200)
なお、鳥類絶滅の原因の多くは、私たち人類の影響によるものです。モアやドードー、エピオルニスは無作為な乱獲によって個体数が激減し、彼らの種族は地球上から永遠に失われてしまいました。人類のどのような活動が彼らを滅亡に追いやったのか、本館の展示から知ることができます。
![](https://assets.st-note.com/img/1699191217793-GekWuVDxA7.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1699191443951-7lVKOF9QdT.jpg?width=1200)
本館の素晴らしいところは、鳥の形態や進化のみならず、飛行の秘密や生理学的特徴までも展示で解説してくれる点です。鳥に関する全般的な学習ができるので、鳥類学への関心を一気に高めてくれます。
鳥たちはなぜ長時間滑空できるのか、なぜ軽々と空高くへ舞い上がることができるのか、山よりも高く飛んでいる鳥たちはどうして酸欠にならないのか。鳥たちが持つ驚異的な能のメカニズムを、本館の展示でくまなく理解することができます。
![](https://assets.st-note.com/img/1699191950134-gWyqyhbN6W.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1699192382478-03StVZOano.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1699192524271-wvBDJb5bDE.jpg?width=1200)
展示の最後は、人と鳥の共存についての問題提起で締め括られています。
人類の活動によって滅んでいった鳥たちは数知れません。失われた種類を取り戻すことは現在の技術では非常に難しいですが、身近な鳥たちの保全ならば我々にもできることは必ずあります。
ジャパンバードフェスティバルで出会ったNPOや学生の方々が継続実施している鳥たちの保護活動は確実な成果を見せており、種の保全に大いなる貢献をしていると思います。人と鳥の共存を考えうえでも、このフェスティバルが持つ意義はとても大きいと感じました。
![](https://assets.st-note.com/img/1699194140508-Quaz3pRslA.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1699194808631-7syr61WuRr.jpg?width=1200)
我孫子市鳥の博物館 総合レビュー
所在地:千葉県我孫子市高野山234-3
強み:国内唯一無二の鳥類専門博物館ゆえの圧倒的な専門性の高さ、手賀沼での学術活動を含めた地域との強い連携、学術機関・NPO・鳥類ファンからの厚い支持
アクセス面:JR我孫子駅からバスを使用すれば容易にアクセスできます。徒歩でも行けなくはない距離ですので、道中の手賀沼公園や飲食店などで休憩しながら進めば、徒歩移動も苦にならないかもしれません。車を運転して向かうのが最も楽だと思われますが、年に1度のジャパンバードフェスティバル開催中は駐車場が制限されることもありますのでご注意ください。
本館は、鳥の専門の博物館として国内で唯一無二の地位を築いていて、そのブランド力はとても強いです。多種多様な鳥の剥製により、展示の視覚的な迫力は十二分にあります。なおかつ、鳥の生態や飛行のメカニズム、進化についても解説が充実しており、来館者は鳥類学の広範な分野に触れることができます。鳥に関する幅広い知識を一挙に習得できるので、観覧後には鳥への興味が倍増しているはずです。
我孫子市では年に1度ジャパンバードフェスティバルが催されますので、そちらの機会もぜひ活用していただきたいと思います。全国各地の環境保護団体の活動成果を見られるチャンスはなかなかないので、環境系の進路に進みたいと考えておられる学生さんには特にオススメです。
![](https://assets.st-note.com/img/1699188387587-EkImtF5EiU.jpg?width=1200)