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詩作、過去作品 公開保存用

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#詩誌

淡水魚たちのいいわけ

     斜めにふる雨。筆跡。雨季に地図を作ろうとして、あえて河岸を曖昧にしていた。淡水魚が虹の根元で産まれて、空を細長くみつめながら、動詞そのもののまま潜水していく。午前の陽射しはもともと、音がない日記だった。密告の声を半音上げるこの、初夏の動悸を、魚たちの胸骨は知っている。
         川はいつからか、誰かの忘却で流れていた。そして川であることまでも、少しずつ置き忘れていた。忘れるという

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