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カレーライスは食べにくい
カレーライスは食べにくい
そんな弱音は吐きにくい
まあ最後までおつき合い
途中おなかがすいたなら
カレーライスを食ゃあいい
そもそもカレーライス
そもそもカレーライスって、どうしてこんなに食べにくいんだろう。久しぶりのカレーライスを前に、僕は思った。
なんとか食べ終えてから「カレーが食べにくい」ことについて、ちょっと考えてみた。
以前、友人に訪ねて回ってみたのだが、まったく共感が得られなかったことを思い出した。ここで会ったが百年目。こうなれば、読んだ人がカレーを食べにくくなるようなものを書きなぐってやる。
「カレーライス たべにくい」で検索してみると、皿が汚れない食べ方がたくさん出てくる。
知りたいのは、そういうことじゃない。
お皿の上じゃなくて口の中が問題なのだ。
何よりカレーライスは噛みにくいんだよね。
でもってカレーライス
ここでいうカレーライスとは米にルーがかかった、ごく普通のとろっだか、どろっだかしたカレーライスのことだ。
もっとも「標準的がカレーライス」というものがあるかどうかなんて知らない。120%のカレーライスというのも。
なんだか村上春樹みたいになってきた。
まあいいや。各自で脳内補正をしてくれたらいいと思う。
でもってカレーライスだ。
カレーライスは咀嚼するのがとにかく難しい。
ご飯とルーを混ぜ、スプーンで口に運ぶ。
スプーンを抜いたあとに残る、米とカレールー。
そこから、少々困った展開になる。
とはいえカレーライス
僕は胃腸が弱い。
だから、食事はよく噛んで食べるよう心がけている。当然、口に入ったカレーライスも、よく噛もうと試みる。
とはいえカレーライスだ。
カレールーがするするっと、喉の奥へ逃げていく。
ちょっと待ってくれ!オレはまだお前を、十分に味わってはいない。
残された米粒たちも、誘われるようにルーに追随する。
行かないでくれ!
どうして忘れていたんだろう。
はっと思い出した。
カレーライスは噛めないのだ。
前回も、当然ながら今回も。
そう、いつだって僕の完敗だった。
けっきょくカレー
「カレーは喉ごし」そんな名言がある。
いやいや、カレーは食べ物だろうって?
ライスは飲み物ではない、具材だってそうだ。
しかし、ルーは噛もうとする意思に反し、どんどん胃の腑へ落ちていく。
ライスを連れて。
咀嚼をかわし、歯の間をすり抜けて食道へと流れていく。
けっきょくカレーは飲みのもだ。
そう結論付けるしかない。
カレーライスは食べにくい
カレーライスは食べにくい。
なぜなら「噛めない」うえに「飲みもの」だからだ。これまで、必死に咀嚼をしようとしていた自分がいかに愚かであったことか。
食べにくいはずだ。飲み物を噛もうとしていたのだから。まるで、夜空の星を手でつかもうとするように。
認めなくてはいけない。
「食べにくい」=「カレーは食べもの」と決めつけていたことを。
どうりで共感が得られないわけだ。
全ては先入観による、偏見だったのだから。
※
こうして、カレーとの戦いは静かに幕を閉じた。
大きくひろがった食器の戦場。スプーンと皿の攻防。ライスとルーのせめぎ合い。口内での葛藤。いまでも目を閉じると、ありありと浮かんでくる激しい戦い。
必至の抵抗も虚しく、勝利することは叶わなかった。
だが、これだいいのだ。
だってカレーライスは食べにくいんだから。