今野敏と警察小説とアクション小説等

警察小説にハマった時期がある。

大沢在昌（おおさわ・ありまさ、1956年～）の『新宿鮫』シリーズ。佐々木譲（ささき・じょう、1950年～）の『笑う警官』から始まる道警シリーズ。逢坂剛（おうさか・ごう、1943年～）の『裏切りの日日』などの公安警察の百舌シリーズなどである。それぞれの作家の特徴というか、作品の色や味があり、非常に楽しめた。

それぞれの作家や警察小説などについては以下の記事にまとめているので、宜しければ是非チェックをしてみて下さい。

で、同様に警察小説を書いていて、その作品群にハマった作家がいる。

今野敏（こんの・びん、1955年～）である。本名は、同じ漢字で読みの異なる敏（さとし）。北海道三笠市の生まれで、岩見沢市、江差町で育つ。函館ラ・サール高等学校、上智大学文学部新聞学科を卒業。

作家としての流れは以下の通り。

1978年に『怪物が街にやってくる』で第4回問題小説新人賞を受賞しデビュー。
2006年に『隠蔽捜査』で第27回吉川英治文学新人賞を受賞。
2008年に『果断 隠蔽捜査2』で第21回山本周五郎賞を受賞、第61回日本推理作家協会賞（長編および連作短編集部門）も受賞。
2017年に『隠蔽捜査』シリーズで第2回吉川英治文庫賞を受賞。

隠蔽捜査（新潮文庫）

1978年、大学在学中に作家としてデビューしている。作品数も多く、警察小説やSF、アクション、伝奇などとジャンルも幅広い。加えて、シリーズ系も豊富。また過去に出した作品を改題して新たに出版している場合もあるので、その点は注意が必要。

取り敢えず、警察小説だけでも複数のシリーズがある。

先に挙げた『隠蔽捜査』シリーズ（13冊）をはじめ、『潜入捜査』シリーズ（6冊）、『同期』シリーズ（3冊）、『リオ』などの警視庁強行犯係・樋口顕シリーズ（8冊）、『触発』などの警視庁捜査一課・碓氷弘一シリーズ（6冊）、『ST 警視庁科学特捜班』シリーズ（12冊）、『曙光の町』などの 倉島警部補シリーズ（7冊）、『逆風の街』などの横浜みなとみらい署暴力犯係シリーズ（7冊）、『密闘』などの渋谷署強行犯シリーズ（4冊）…といったように、なかなかの種類のシリーズがある。

リオ―警視庁強行犯係・樋口顕―（新潮文庫）

繰り返すが、あくまでも警察小説だけで、これくらいはある。つまり、他のジャンルのシリーズも存在するのである。警察小説シリーズだけでも全てを拾い切れていないと思うし。
デビューしてから約50年くらいは経るので作品数的には、当然かもしれない。……いや、それでもかなり多い方だと思うけど。

映像化されている作品も多いので、シリーズのタイトルは見たり聞いたりしたことがあるかもしれない。気になる作品から手に取って欲しいところ。

スタンダードな感じの警察小説が希望であれば、『隠蔽捜査』シリーズ、『リオ』などの警視庁強行犯係・樋口顕シリーズ、『触発』などの警視庁捜査一課・碓氷弘一シリーズの辺り。

潜入捜査　〈新装版〉 (実業之日本社文庫)

アクション系が読みたいのであれば、『潜入捜査』シリーズ、『密闘』などの渋谷署強行犯シリーズ。注目のポイントとしては、今野敏は、格闘技というか武道に造詣が深い点。中学では剣道部、大学では空手同好会に所属。1999年からは空手の道場も開いている。

そのため、格闘やアクションの描写が非常に優れているのである。文字を読んでいるのに、映像を観ているかのような状態になりやすい。躍動感の溢れる作品が好みであれば、この辺りから読んでいくのもアリかも。

ＳＴ　警視庁科学特捜班　エピソード１＜新装版＞ (講談社文庫)

お気に入りは、特殊能力系の『ST 警視庁科学特捜班』シリーズ（4冊）である。STとは、Scientific Task Forceの略称のこと。全体として、STシリーズと呼ばれるが、更にこのシリーズの中でもシリーズがあるから、ややこしい。まぁ面白いし楽しいので良いんだけれど。

能力の秀でたSTメンバーそれぞれに焦点を絞った『青の調査ファイル』から始まる色シリーズ（5冊）、そして『為朝伝説殺人ファイル』などの歴史・伝奇系の要素も絡まった伝説シリーズ（3冊）である。全てを読むと12冊ということになる。存分に堪能できる分量である。エンタテインメント小説として上質であり、特に好きなシリーズである。

陰陽　祓師・鬼龍光一 (中公文庫)

他にも警察と伝奇の要素が組み合わさった『陰陽』などの祓師・鬼龍光一シリーズ（6冊）。警察の覆面捜査専門のバイク部隊をメインにした『特殊遊撃捜査隊』から始まるTOKAGEシリーズ（3冊）。町医者と警察の絡んだ『38口径の告発』などの歌舞伎町特別診療所シリーズ（2冊）もある。

警察系以外でも、沢山のシリーズ作品のある今野敏。要素を抽出して、以下の通りに列挙してみる。基本的には格闘・アクション系が多いけれど。

降臨　聖拳伝説（1） (朝日文庫)

【格闘・冒険】
『降臨』などの聖拳伝説シリーズ（3冊）。

【格闘・武道】
『秘拳水滸伝』シリーズ（4冊）。

【格闘・中国武術】
『孤拳伝』シリーズ（5冊）。

【格闘・琉球空手】
『義珍の拳』などの琉球空手シリーズ（5冊）。

特殊防諜班　連続誘拐 (講談社文庫)

【格闘・古代・超能力】
『連続誘拐』などの特殊防諜班シリーズ（7冊）。

【格闘・古武術・諜報機関】
『邀撃捜査』などの内調特命班シリーズ（2冊）。

【格闘・元傭兵・諜報機関】
『ナイトランナー』などのボディーガード工藤兵悟シリーズ（4冊）。

【格闘・拳法・対テロ用特殊部隊】
『切り札』などのトランプ・フォースシリーズ（2冊）。

【格闘・音楽・宗教・超能力】
『奏者水滸伝』シリーズ（7冊）。

奏者水滸伝　阿羅漢集結 (講談社文庫)