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熟達者の学級経営を垣間見る【読書のキロク】
こんばんは、"もっちゃん”です。
記事に興味をもってくださり、ありがとうございます。
6月に入り、早いところの学校では、運動会や遠足などの行事が終わり、一段落していることかと思います。
一方で、6月というと、学級経営において少しずつ課題等が現れ始める頃かとも思います。
学級経営計画を立てていながら、それとは少し異なる様相を表してきたり、子どもたちにとっても若干の不適応感が出てきたり、思わぬ綻びが出始めるのも6月のような気もしています。
そんな中、読んだ本のキロクです。
◯今回読んだ本:『学級経営は「問い」が9割』 著者:澤井陽介 東洋館出版社
澤井先生の本になります。また、「9割」シリーズになります。
以前、こんな記事を書きましたが、再び出てきた「9割」です。
では“残り1割はなんなのか”、とか考えているのももはや野暮でしかないので、今回はその議論については置いておくことにしたいと思います。
◯概要
近年、大人や子供を取り巻く社会環境の変化を受けて、「一人一人の子供」という「個」に対する目配り・気配りといった社会的要請が強くなりました。その結果、(良い面もある一方で)「子供たち」というくくりでの「集団」に対する教育力が、以前よりも相対的に弱まっているように感じられます。
「個」への対応ばかりにとらわれていると、「教師は常に子供についていかざるを得ない」状況が生まれます。しかし、それでは、どれだけ緻密に、どれだけ細心の注意を払っても、教師と子供との間に横たわる隙間を埋めることはできません。
実は、考え方が逆なのです。「教師が子供についていく」のではなく、「子供が教師についていく」ようにしていかなければならないのです。これが、まさに集団づくりです。
学級づくりは「集団づくり」です。よりよい「集団」が、「個」の学びを深め、輝かせるのです。そんな学級づくりを実現する指導の核となるのが「問い」です。
これからの時代によりいっそう求められるのは、ファシリテーターとしての教師です。子供たちの学びを触発し、仲間と共に深めさせ、よりよい集団を通して、その子自身が輝くような指導です。まさに、子ども自らが生きる力を湧き出させるエンパワメント(Empowerment)の指導と言ってよいでしょう
そこで、本書では、子供の思考をアクティブにする問いの指導とは何かを明らかにすることを通じて、多様な子供たちがそれぞれに、学級の中に自分の持ち場をもち、仲間と共に自らの課題を解決していける学級づくりの本質と手法を明らかにします。
【注】エンパワメント(Empowerment)とは、「個人や集団が自らの生活への統御感を獲得し、組織的、社会的、構造に外郭的な影響を与えるようになること、人びとに夢や希望を与え、勇気づけ、人が本来持っているすばらしい、生きる力を湧き出させること」を言う(wikipedia)。
もはや概要というよりも、本書の内容がほぼそのまま書かれています。本書では、その具体的内容について記述されていました。
本書はとても新鮮な感じがしました。おそらく対象は教員向けに書かれていますが、多くの教員が納得しつつ、自分のやっていることと照らし合わせながら読むことができると思います。
◯熟達者の学級経営
自分が読んでいて思ったことは、「熟達者の学級経営である」ということ。
そもそも、澤井先生は小学校教諭として務めて以降、行政で指導主事等を経て、文科省の教科調査官まで勤めた方です。
こう言ってしまってはあれですが…
そこまでの方が自分の学級経営について書籍を通して語るということが新鮮でしかないです。
(完全に私見ですが、こうした方は自分の実践は比較的棚に上げて語らない場合も少なくないと思っています。)
ご自身の経験の中でもエッセンス的なところを抜き出しているとは思うのですが、非常にリアルな感じがして、私としてはどこぞのハウツー本よりも参考になる学級経営の本であると思いました。
熟達者がさらにエッセンス的なところを抜き出している感じはするので、現実的な部分は若干ブラックボックス化されている感じはしますが、ある程度教職を経験なさった方にとっては、非常に興味深く読める本ではないかと思います。
◯個人的に印象に残ったこと〜褒めると叱る〜
せっかくなので、印象に残ったことを少しだけキロクしておきたいと思います。
「褒める」と「叱る」についてです。
教職大学院の中で生徒指導について語る際に、最近話題になったこともあり、自分の中でホットワードになっていたことが本書でも出てきたので紹介します。
本書を少し引用させていただきます。
「叱る」行為は子供たちに自分の行為を見つめ直させないといけない場面のとき、「褒める」行為はその子が次のアクションを起こすために必要な自己肯定感を与えたり、モチベーションを高めたりする場面のときに、それぞれ効果が得られます。
そもそも、「叱る」ことが悪しとされていきている感じがする昨今ですが、「叱る」ことの捉え方をうまく言語化していただいた気がします。
それぞれの具体的な方法については本書を参照していただけるとよいかと思うのですが、今回本書では「褒める」と「叱る」は異なった効果を狙う別々の指導方法として述べていました。
もちろん不用意な叱責を肯定するわけではありません。
ただ、指導方法の一つとしての「叱る」の目的と具体的方法を熟知した上で用いることで、一定の効用はあるのではないかとも思います。
こうしたことを熟達者が述べていることも、なんとなく新鮮さを感じた一因なのかもしれません。
◯小学校と中学校の学級経営
なんとなく学級経営について考えていると、小学校と中学校以降では大きく様相が異なるようにも思います。
中学校では教科担任制を敷くところかと思いますが、小学校ではそうではないところが多いと思います。
それを踏まえると、学級経営と授業等学習指導の密接な関わりがうかがえます。
学校生活の大きな基盤として、小学校では学級経営が大きなウェイトを占めることとなるでしょう。
中学校教員である私は、まだ比較的引いた目で学級経営を捉えているように感じてしまうところもあります。
少しでも本書からエッセンスを吸収していきたいと思います。
そんなことを考えた1冊でした!
改めて、学校の先生っていろいろなことをやらなければならない、大変な仕事なんだなぁと思うばかりです。
頑張っていきましょう!
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