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言語の身体性を考える【読書のキロク】

こんばんは、“もっちゃん”です。
記事に興味を持ってくださり、ありがとうございます。

今回は【読書のキロク】です。
なかなか面白い本でした。
「新書大賞」なるものを受賞しているようで、ひょっとするとけっこう話題になっていたのかもしれません。

◯今回読んだ本:『言語の本質ことばはどう生まれ、進化したか』 今井むつみ/秋田喜美 著 中公新書

新書になります。
書店で見かけてそのまま手に取ったのですが、新書大賞を記念してか、大きな帯で表紙をカバーしているような感じでした。

ブックカバーなしでも表紙を守りながら読むことができます。

◯概要

日常生活の必需品であり、知性や芸術の源である言語。なぜヒトはことばを持つのか? 子どもはいかにしてことばを覚えるのか? 巨大システムの言語の起源とは?ヒトとAIや動物の違いは? 言語の本質を問うことは、人間とは何かを考えることである。鍵は、オノマトペと、アブダクション(仮説形成)推論という人間特有の学ぶ力だ。認知科学者と言語学者が力を合わせ、言語の誕生と進化の謎を紐解き、ヒトの根源に迫る。

上記ホームページ内容紹介を引用

個人的に、今オノマトペに興味があり、その流れで読みました。

オノマトペの章自体もとても面白かったのですが、
それに加えて「記号接地問題」「アブダクション推論」の話が本の中では取り上げられています。

どの章の話題も興味深く読むことができました。

◯オノマトペについて

そもそも「オノマトペ」とはどういったものでしょうか。
いろいろな受け取り方をされる「オノマトペ」ですが、本文ではオランダの言語学者マーク・ディンゲマンセによる定義が紹介されていました。

オノマトペ:感覚イメージを写し取る、特徴的な形式を持ち、新たに作り出せる語

本書p6より引用

ということです。
これでも非常に幅広い定義のような気もします。

そもそも“感覚イメージ”というものも難しいように思っていますが、本書を読んでいると、オノマトペの具体像に関しては非常にイメージしやすかったです。

自分の中で頭に入れておきたいと思ったのは、
オノマトペは「擬音語」「擬態語」に加えて「擬情語」も含まれるということ。

例えば、「わくわくする」みたいな言葉も、日本語ではオノマトペとして括られることがあるようなのです。

なんとなく納得するような、そうでもないような。
日本語に特徴的なところなのかもしれませんね。

本書でのオノマトペのくだりはとても面白いです。
他言語のオノマトペにも共通するところがある、だとか。
言語学的にこういう背景がある、だとか。

詳しく書くとキリがなくなってしまいます。ただ、それらは納得するものばかりで、とても面白かったです。

◯記号接地問題

AIの発達に伴い、広く語られるようになったことです。

一つ一つのことば(記号)は、人間には経験や感覚に対応づけられているベースがあるということ。

ことばの“身体性”といった感じでしょうか。

逆に言えば、AIにはそれがありません。
だから、ことば(記号)の本当の意味を理解しているわけではなく、他の記号と結びつけたりしながら、あたかも理解しているかのように振る舞っているだけなのではないか。

というのが「記号接地問題」とのことです。

非常に面白い議論になると思います。これも詳しく書き始めるとキリがないので、興味のある方は本書なりその他を参照していただければと思います。

ただ、ことばの“身体性”、
特にオノマトペはより身体に紐づいた言語ではないか
と思っています。

ひとりひとり感覚に結びついた表現を行う際には、オノマトペは非常に有効に機能するようにも思います。
そこのところは頭に置いておきたいと思いました。

◯アブダクション推論

本書内での議論は多岐に渡り、子どもの言語獲得にまで及びます。

後半は自分の研究とは直接的に結びつくところではなさそうな気がするのですが、とても面白い内容だったのでキロクしておこうと思います。

アブダクション推論の話が出てきます。

とはいっても、個人的に面白いと思ったのは、その中でも対称性推論の話です。

例えば、

「AならばB」ということがあった時に、
必ずしも「BならばA」は成り立つわけではありません。

考えてみればわかります。
チンパンジーでもそう考えているようです。

ただ、人間の子どもは、けっこう
「AならばB」となったときに
「BならばA」みたいに考えていくことがある。

それは誤りの場合もあるのだけれど、そのリスクを負いつつもその推論をしていくことが言語獲得につながっている

みたいな論の展開だったかと思います。

(端的に書こうと思ったり、理解が浅かったりして誤りがあったら申し訳ありません。)

いやぁその発想はなかった!
言われてみればそうだなぁと思わされることばかりです。

オノマトペに始まった本書でしたが、言語の面白さに興味を掻き立てられる1冊でした。


そんなことを考えました!

ことばの研究者だけに、書いている文章も非常にことばを大切にされているような感じがしました。
加えて、とても読みやすい本だったように思います。

みなさんにも非常にオススメの本です。

自己紹介はこちらから。



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