【読書感想文】京都ものがたりの道 彬子女王 〜溢れ出る知性と親しみやすさに感銘〜
手に取ったきっかけ
先日、彬子女王がテレビにご出演されているのを拝見しました。
ご自身の苗字がないことや住民票がないことにまつわるお話を交え、驚くほど気さくに語られるお姿に親しみを感じました。
イギリス留学時代のエッセイがベストセラーとなっていることも知り、すぐに本屋へ足を運びました。
そこで見つけたのが、この『京都ものがたりの道』です。
関西出身の私にとっても、京都は何度も訪れたことのある特別な場所。
そんな馴染みのある京都をテーマにした本から、まずは読んでみることにしました。
彬子女王とは
彬子女王は大正天皇のひ孫であり、寛仁親王と同妃信子様のご長女。
学習院大学をご卒業後、オックスフォード大学での留学経験を経て、現在は京都産業大学の専任研究員として活動されています。
特に、日本美術の調査・研究や日本文化の研究に精力的に取り組まれている学識の深い方です。
本の内容と魅力
この本は、彬子女王が京都での暮らしを通じて感じたこと、見聞きしたことを、京都の通りや名所、そしてその背後にある歴史や人々の暮らしと絡めて綴られたエッセイ。
河原町通や寺町通など、京都にゆかりのある地名に秘められた逸話とともに、京都の街の風景と人々の暮らしを生き生きと描写されています。
多面的に描かれる京都への愛
本書は、京都の歴史、自然、そして人々の暮らしが多面的に描かれています。
歴史的な背景への深い造詣が随所に感じられ、桜や銀杏、雪景色といった京都の四季折々の美しい自然が鮮やかに描写されています。
また錦市場や季節の行事を通じて、京都の市井の人々との触れ合いもあたたかく描かれて、彬子女王の親しみやすくお優しいお人柄が滲み出る一幕も。
京都の通り名にまつわる逸話が紹介されている部分は、京都を新たな視点で楽しめる貴重な一冊だと感じました。
親しみやすさと気品が共存する文体
彬子女王の文体には、テレビ出演時と同じく親しみやすさと知性が見事に融合しています。
まるで友人に語りかけるような温かみのある文章でありながら、その表現は非常に洗練されていて、知的な魅力が満ち溢れています。
この気品と親しみやすさに私は大きく惹きつけられました。
個人的な経験を通じた深い洞察
彬子女王は皇族という立場からの視点や、日常の小さな出来事、さらには感情の変化を率直に綴っており、その人間味に溢れる一面にも心を打たれました。
私たちが普段知り得ない日常や、皇族としての思索も交えながら語られていることで、より彬子女王に親近感を覚えました。
日本人の寛容さと共生の精神
本書を通して特に嬉しかったのが、彬子女王が日本人の素晴らしい側面にも光を当てていらっしゃるところでした。
外国文化を柔軟に受け入れ、それを日本らしく消化し、共存させていく日本人の精神について改めて気づかされた点が印象深かったです。。
また、常に身近にいる警察官の方々の仕事ぶりにも深く敬意を表されており、日常の中で日本の良さを再確認する機会を与えてくれます。
単なる観光ガイドではない
あとがきで、彬子女王は「この本をかばんに入れて京都を散策する人が増えるといいなぁ」とおっしゃっていますが、本書は単に京都の通りや景色を紹介するだけではなく、彬子女王自身の個性や思索が色濃く反映された魅力ある内容です。京都好きの方にはもちろん、これから京都を訪れようとしている方にぜひ手に取ってほしい一冊です。