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民主主義のトレーニング
先週、北九州市民カレッジ「日本遺産『関門”ノスタルジック”海峡』」の最終回があった。
この講座は、初回に日本遺産について学んだ後、間の3回はまち歩きをして、最終回は自分が語り手になっていこうと思えるようなものを目指そうという話になっていた。
講師は、佐賀大学芸術地域デザイン学部准教授の花田伸一先生で、「関門海峡〈私〉語りー小さな歴史と大きな歴史の渦の中」というテーマ。
講師が最初に言われたのが、「今日のテーマは民主主義のトレーニングです」ということ。
どんな展開になるのか、最初から興味深い。
歴史(世界史)は、西洋白人男性の目線から語られたもの。
西洋黒人男性や女性、アジアの人から見たら、違ったものになってくる。
正史を正しく身につけ、正しく語ることが大事なのか。
「私にとって」「私はどう思うか」が大事。
表現の世界では、人と違うこと、独創性が大事。
社会は、人と同じことが求められる。
社会で人との違いに苦しむ人が、表現の世界ではプラスの価値に変わる。
表現は、生まれつきの才能や感性、手の届かない世界と思われているが、1人1人に独創性や個性はあり、それを見出すものになってほしい。
私目線の歴史をあぶり出していきたい。
人と違うことが価値を持つ社会であることに気づく時間にしていきたい。
ということで、コーディネーターや受講生が順番に、「私のイチオシの関門海峡」について語ったところ、幼少期の思い出などを話す人もいて、同じ場所についての話でも、とても多彩なものになった。
そしてまとめのお話。
民主主義は、多数の意見、少数の切り捨てではない。
本来、少数者の意見をちゃんと聞くためのもの。
色々な立場の意見を聞くことで、権威の間違いを防ぐためのものであり、人と違うことが認められるのが前提になっている。
人と違うことが尊重される社会であるために、「私」にこだわってほしい。
自分と違う意見にも向き合うことが大切。
こういう考えの人もいる、と免疫をつけること、100%好きになれなくても、受け入れられる部分を見つけることが大事。
これは意識してやらないとできない。
スマホは学習して、同じような考えの記事ばかりが上がってくるようになり、それを繰り返しているうちに、自分の意見が世界の常識と思えてきてしまう。
嫌いな番組もたまには観てみることも必要。
まちづくりは、私の中から湧き上がる情熱から始まる。
社会課題の解決だけでは続かない。
「このまちのここが好きだから守りたい」「私がやりたいからやっている」という思いが大事で、私がこのまちを好きな理由は、権威から押し付けられるものではない。
世間体を気にして、世のため人のためではなく、「私は私のためにこれをやる!」「私はこれが好き!」と安心して人前で言える社会をつくっていきたい。
というお話で、まさか日本遺産をテーマにした講座で、こんな深い話にたどり着くとは思わず、びっくりした。
すごく大事な視点が盛りだくさんで、勉強になったしおもしろかった。