NAOTO

自動車メーカー勤務。公認会計士。英検一級。自分のために読書記録をつけます。

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最近の記事

ジェイソン・ヒッケル「資本主義の次に来る世界」を要約する

本書のタイトルである「資本主義の次に来る世界」を知りたくて本書を手に取った。本書は環境生態学の知見をもとに世界が向かうべき先を提示している。一方でエコファクトから語られる環境生態学の側面、他方でデカルト二元論vsアニミズムを核として展開される哲学的な側面の両面から語られる。本書を解読することで「資本主義の次に来る世界」とは何か考えてみたい。 1. 環境生態学の側面本書で語られるエコファクトは以下のようなものである。 自然の中では独立して存在しているものはなく、各々が連関し

    • 千葉雅也『センスの哲学』を要約する

      1. 要約本書はドゥルーズの哲学をベースに意味や主体性からの解放を軸にしているが、従来通りのただ無秩序な自由な逃走線を志向するのではなく、現実に即した形でドゥルーズ哲学を実践しようとしている。それは意味に執着するパラノと自由に発散するスキゾの間に位置するものと思う。千葉雅也氏の代表作である「動きすぎてはいけない」からその主張は一貫しており、年を重ねるごとにより平易な言葉で説明されるようになってきている。 本書の主張は前半/後半で毛色が異なる。前半パートはドゥルーズ哲学の簡易

      • 宮台真司『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』を要約する

        本書が刊行されたのは2014年。日本はグローバル化と情報社会化の潮流を受け、共同体の空洞化が進んでいく。2008年にはリーマンショック、2011年には東北の大震災・福島原発事故などを経験し、得体の知れない不安の中で、個人としてどのように生きるかという実存的問題が人々の関心のテーマとなり、書店では自己啓発本が飛ぶように売れた。宮台は戦後以降の日本にフォーカスし、「社会がどこから来て、どこへ向かうのか」が展開される。 1. 加速化するバトルロワイアルの時代 宮台はマックス・ウ

        • 山崎正和『柔らかい個人主義の誕生』を要約する

          1. 国家概念の変化明治時代以来、日本は百年にわたり、近代化と工業化の道を歩んだ。この過程で、国家という存在は国民に強く意識されるようになった。特に1960年代、日本は経済成長を経て、国民総生産が自由世界で第二位に達し、国民一人一人に自信と満足をもたらした。この時代は「追いつけ追い越せ」というスローガンのもと、国家の一員という意識が強くなり、日本はその成功で世界の注目を集めた。 これに対して、1970年代は時代を飾るはなばなしい標語もなく、「モーレツからビューティフルへ」

        • ジェイソン・ヒッケル「資本主義の次に来る世界」を要約する

        • 千葉雅也『センスの哲学』を要約する

        • 宮台真司『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』を要約する

        • 山崎正和『柔らかい個人主義の誕生』を要約する

          ニーチェ『ツァラトゥストラはこう言った』を解説する

          1. ニーチェ思想を整理するニーチェは隣人愛=同情を猛烈に否定する。無私の行為になぜここまで嫌悪感が表れるのか。目の前に困っている人がいれば、助けたいと思うのは健全に思われる。勿論、財産を投げ売ってしまうほどの宗教へのコミットメントから自己犠牲をしてしまうのは良くない。しかし、人間的な強さから、困っている人を助けるのは純粋に善い事に思える。 ニーチェが同情をここまで非難するのは、同情がルサンチマンに変化する性質があると考えているためである。そして、このルサンチマンはニーチ

          ニーチェ『ツァラトゥストラはこう言った』を解説する

          『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来 下』を要約する

          1. 人間至上主義革命近代以降、ニーチェの「神は死んだ」に代表されるように、人間の自由意志を中心に据えた人間至上主義が主流になった。人間至上主義は、人間が自分の内なる経験から人生の意味を見出すことを求め、人生の目的は多様な知的、情動的、身体的経験を通じて知識を深めることだと説く。 人間至上主義は正統派、社会主義的、進化論的の三つの宗派に分かれる。正統派は個人の自由意志と独自性を重視し、単に「自由主義」とも呼ばれる。社会主義は他者への共感と団結を強調し、進化論的人間至上主義

          『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来 下』を要約する

          『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来 上』を要約する

          1. 人類が新たに取り組むべきことは何か本書においてハラリが優れているのは原始時代から現代までの歴史を大きな物語の枠組みの中で解釈したことにある。 20世紀以前の歴史は、飢餓、伝染病、そして戦争との闘いであった。人々が宗教に深く依存したのも、人智を超えた災難が頻繁に起こったからであろう。20世紀以降、テクノロジーの進歩により、人々はようやくこれらの問題に対処することができるようになった。農業の発展によって飢餓を、医療の進歩によって伝染病を、そして核兵器の抑止力によって戦争

          『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来 上』を要約する