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|横井まい子の小部屋|

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画家・横井まい子が描く少年・少女たちが棲まう幻想の苑。繊細な筆先から生まれる絵画作品をお届け致します。
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#絵画

ディケンジング・ロンドン|TOUR DAY 4|大いなる遺産《2》

* 『大いなる遺産』あらすじ 
両親のいないピップは、年の離れた姉とその夫で鍛冶屋のジョーと暮らしていた。クリスマス・イブに、ピップは一人の脱獄囚に遭遇するが、その男は再び捕えられる。それからしばらくしてピップはミス・ハヴィシャムの屋敷に連れていかれる。そこでは、ピップの運命を変える出会いが待っていた。 *  もうしばらくサティス荘に滞在します。  時が降り積もり、屋敷全体が灰モーヴ色で覆われている奥の一室で、画家・横井まい子さまが描く二人の女性が、現実から遊離し

ディケンジング・ロンドン|TOUR DAY 3|デイヴィッド・コパフィールド《1》

* 『デイヴィッド・コパフィールド』あらすじ  
母と乳母ペゴティと幸せに暮らしていたデイヴィッドは義父となったマードストンから過酷な仕打ちを受け、寄宿学校に送られる。個性あふれる人物たちと出会いながら、デイヴィッドは自分の人生の物語を描いていく。 *  骨董屋を出て次に向かうのは、『デイヴィッド・コパフィールド』ゆかりのノーウッド。  ゼラニウム咲き乱れる温室で、ある少年と少女に出会いました。温室いっぱいに広がる横井まい子さまの馨しく美しい描線を堪能しましょう。

ART & ESSAY《1》|熊谷めぐみ & 横井まい子|幸せがそよぐ季節

Text|熊谷めぐみ  「チャールズ・ディケンズ&ヴィクトリア朝文化研究室」として活動中のモーヴ街5番地・サティス荘。本イベントより新たに「ART & ESSAY」のシリーズがスタートします。  気鋭のアーティストを迎え、ディケンズの小説を題材にした作品を発表。小説のあらすじと小説案内、アート作品解説を熊谷めぐみが担当いたします。  記念すべき初回は、画家・横井まい子様を迎え、ディケンズの二つの小説をテーマに繊細を極める美しい水彩画をお披露目します。  クリスマスの時期、

YAYACO YONEYAMA & 横井まい子|菫模様のカルトン《1》|菫の街へ

 カルトンとはフランス語で厚紙のことです。画板や紙挟みとも呼ばれています。菫模様のカルトンをそっと開き、作家様がモーヴ街イベントのテーマにあわせて制作してくださった作品を香りのムエットをお渡しするようにご紹介させていただきます。  横井まい子様の描く《菫の街へ》ようこそ。  ちょうどこちらの街では菫が花開いたばかり。かぐわしい香りに誘われて少女達が目を覚ましたところです。眠りから覚めた少女達の鼓動がさざなみのように伝わってまいります。  花を摘む喜びに満ちた少女、花を髪に

レース模様の図書室、再訪|横井まい子|午後の図書室

TextKIRI to RIBBON  晩春の美しい光と新緑に誘われて、今日も静やかにレースが舞う図書室に来ました。やわらかな日差しが届く午後の図書室はぽかぽかと暖かく、図書室を包む菫色も微睡んでいます。  1年前に出会った三編みの少女たちが、図書室で待っていました。少女たちの時間を邪魔しないように、そっと覗いてみたいと思います。 * * *  菫色のヴェールの奥に、少女たちはいました。  ヴェール越しに見る少女たちの表情は少し大人びたように感じましたが、図書室の