YAYACO YONEYAMA & 横井まい子|菫模様のカルトン《1》|菫の街へ
カルトンとはフランス語で厚紙のことです。画板や紙挟みとも呼ばれています。菫模様のカルトンをそっと開き、作家様がモーヴ街イベントのテーマにあわせて制作してくださった作品を香りのムエットをお渡しするようにご紹介させていただきます。
横井まい子様の描く《菫の街へ》ようこそ。
ちょうどこちらの街では菫が花開いたばかり。かぐわしい香りに誘われて少女達が目を覚ましたところです。眠りから覚めた少女達の鼓動がさざなみのように伝わってまいります。
花を摘む喜びに満ちた少女、花を髪に飾りアンニュイな眼差しを浮かべる少女、うっとりと顔を埋ずめる少女、花を手に風に身をまかせる少女。
三色スミレと少女たちとの輪郭は曖昧で溶け合い、まるで三色スミレから少女達が生まれてきたかのように見えます。
柔らかなアイボリーの紙に銀いろで描かれた少女達。精緻な筆致は細い糸で編まれたレースのようではありませんか。
本作で横井様が使用された銀筆はシルバーポイントとも呼ばれ、鉛筆が誕生する前から使われている画材です。支持体に銀が擦り付けられることで淡く繊細で硬質な線が現れます。
文字どおり銀の線で紡がれた少女達なのです。
しろいかんばせに紅さすようにモノクロームの世界に三色スミレが灯ります。
少女達が手にする三色スミレに施されたセンシュアルな彩り。みずみずしい花弁にレースをそっと押し当て色を写したよう。天空にアメトリンをかざして光を投影したかのよう。
菫の香りに誘われて羽化する少女たち。三色スミレの根が張りひろがってゆくように少女達は無意識下でもつながっているのでしょう。
少女達の世界に色彩が滲みはじめるひとときを捉えた横井様のリリカルな筆致は半睡半眠に見る夢だけに存在する街へと貴方を誘います。
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作家名|横井まい子
作品名|菫の街へ
油彩・銀筆・白土・アイボリーケント紙
作品サイズ|19.8cm×19.8cm
額込みサイズ|
制作年|2022年(新作)
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