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唐傘の傘わずらい

テレビをつけていたら、「ゲゲゲの鬼太郎」(第6期)が再放送されており、思いのほか面白く、つい最後まで見入ってしまった。

見た目は現代風にアレンジされているものの、物語の構成は私がよく見ていた第3期~第4期と同様、「妖怪とは人間の業の裏返しなんやで」的なメッセージが込められており、違和感なく楽しむことができた。

今回の話では、和傘に一本足が生えた妖怪・唐傘が、現代の便利なビニール傘に憧れつつも、そのぞんざいな扱いや大量消費される様子に心を痛め、怒りを募らせるという内容だった。

実際、現代のビニール傘の扱われ方は雑だと私も感じる。唐傘が怒りを覚えるのも無理はない。

私はというと、傘が半壊するまで使い倒す派で、傘骨が1本折れたくらいなら気にせず使ってしまう。肩幅もあるので、体がはみ出さないようにサイズは55cm以上のものを選ぶようにしている。

最近はコンビニなどでうっかり取り違えられないように、持ち手にマイメロディの目印チャームをつけているし、突然の雨にも対応できるよう、折りたたみ傘も通勤カバンに常備している。

雨に濡れるのが苦手なせいもあるが、こうして考えると、私はそれなりに傘に対して愛着があるのかもしれない。

マイメロディの目印チャームをつけてからは、傘をなくしたり取り違えられたりすることはなくなったが、一番困るのは「他人のだとわかっていて持っていく人間」だ。

特に学生時代にはそういう人をよく見かけ、「傘は天下の回りもの」なんて言う人もいた。当時は深く考えなかったが、今では思い出すだけで怒りがこみ上げてくる。

そんな人に、マイメロちゃんの目印チャームごとお気に入りの傘を盗まれでもしたら、怒りでどうにかなってしまうかもしれない。そのときは犯人を探すだろうが、結局見つからないほうが傘泥棒にとっても私にとっても一番いい結末になるだろう。

もし私が妖怪になるとしたら、唐傘のような存在になりそうな気がする…………………


「いや~、これがねぇ、ほんと不思議な話なんですよ。あれはね、ある雨の日のことだったんですよ…。もう夜も遅くなっててね、コンビニで傘を一本買おうと思ったんです。

でも、ふと見たら入り口の傘立てに、ビニール傘があったんですよねぇ。『ラッキー!』なんて、つい思ってね。で、まぁ、中に入っていたマイメロディの目印チャームがついてたんですが、ま、気にせず持って帰ったんですよ…。

それで家に帰って、寝ようかと思ったら…なんか妙にゾワゾワしてね。眠れなくなっちゃったんです。『変だなぁ』って思ってたんですけど…ほら、なんて言うか、視線を感じるんですよ。

ふと玄関の方を見ると、傘立てに置いたはずのその傘が…ないんですよ。

まさかと思って、いったん寝ようとしたんですけどねぇ、もう寝れやしない。それで、どこかでカサ…カサ…って音がするんです。傘の生地がこすれるような、あの音ですよ。

その音がねぇ、だんだんと近づいてくるんです。で、見に行こうとした瞬間ですよ、ドアがバタンと音を立てて開いたんです。

『何だ!?』と思って玄関に出てみたら…そこに、一本足の妖怪みたいな影が立ってるんです。よく見たら、さっきのマイメロディのチャームが付いた傘が一本、クワッと開いたまま、こっちを睨んでるじゃありませんか!

あぁ、これが"妖怪さそび唐傘"だったんでしょうね…。うわぁーっと思ったけど、もう逃げるしかないでしょ!?慌てて外に飛び出して、雨の中、走り出したんです。でも、後ろからその傘が、カサ…カサ…って音を立てて、追いかけてくるんですよ!

『助けてくれぇ!』って叫びながら逃げてたら、道端に…そう、鬼太郎が立ってたんですよ。

鬼太郎がねぇ、じっと私を見て『稲川さん、その傘はあなたが間違って持っていったものですよね。妖怪さそび唐傘が怒っているんです』って言うんですよ。

私は訳も分からず、ただ頷いて『でも、これどうすりゃいいんだ…』って呟いたらね、鬼太郎がニヤッと笑ってこう言ったんです。

『傘を返しなさい、ちゃんとね。それから、傘をぞんざいに扱わないことですよ』と。

…その瞬間、妖怪さそび唐傘が、ぐぐっと体を縮めて消えていったんです。

で、隣にいた夢子ちゃんって女の子がねぇ、『稲川さん、傘はみんなにとって大切なものだから、ちゃんと使ってほしいんです』って、私にそう優しく言ってくれるんですよ。

あぁ、やっぱりなぁって思いましたね。傘ってただの道具じゃないんですね、あれには魂が宿ってるんですよ…。だから、私もそれ以来、しっかりと自分の傘を持ち歩いて、大切に扱うようにしてるんですよ。

で、もし、また見かけることがあっても、間違えて持っていかないようにしてるんですよ。あの時の…妖怪さそび唐傘の睨むような顔を思い出すと、ぞっとしますからねぇ…。

やだなぁ… 怖いな…。


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