妹からの質問『RPGとは?』
実家に帰ったついでに、妹と話すことが増えた。私と妹が実家に住んでいた頃は、お互い干渉しない関係性だったので、同じ家に住んでいても業務連絡的なやりとりしかしていなかった。
私とは違って、妹は飲んでは終電を逃すようなパリピ寄りの人間だったのだが、最近は家でNetflixやDisney+でアニメを見ることにハマって、すっかりインドア派になったらしい。
今期はアニメ「ダンダダン」がアツいらしく、かなりの熱量で推してきた。詳しく話を聞くと、アニメはまだ2話しか放送されていないようだ。それでこれだけの熱量を持って語れるのは、若さゆえの才能というか、眩しく感じる。
妹が「ダンダダンはウルトラマンをリスペクトしている」と熱弁するので、思わず私も「エヴァもウルトラマンリスペクトだし、映像の才能ある人はウルトラマンに行き着くよね」と、俺の方がこの界隈に詳しいですけど? 的な、一番めんどくさいオタクマウントを取ってしまった。
いや、正確には「刀を抜かされてしまった」という表現が正しい。俺の時代のオタクは、いつでも斬るか斬られるかの間合いでしのぎを削る。妹が迂闊すぎたのだ。そこはすでに私の"円"の中に踏み込んでいる。
話題はゲームの話になる。妹は普段ゲームをやらないらしく、当然ゲーム機も持っていない。ただ、バイオハザードシリーズやサイレントヒルといったホラーアクションには興味があるようだ。
しかし、ポケモンやドラクエはやったことがないらしく、それらを「育成する何か」としか認識していない。これもまた、すでに私の"円"の中に入っている。もっと解像度の高い知識を持っていれば、妹もきっと得をする日が来るだろうと思い、ポケモンは収集型と育成型のRPG、ドラクエはストーリー主体の冒険型RPGとして、それぞれ違いがあることを説明した。2作は同じ米料理でも、チャーハンとオムライスくらい違う、とたとえてみた。
だが妹にはまだ疑問が残っているらしく、「RPGとは何か? 140文字で答えて」と言われる。試されているのかもしれない。
「RPGとは何か」というのは、ちょっとした哲学だと思う。まるで、幼い子が母親に「人は死んだらどこに行くの?」と聞くような純粋無垢な質問だ。
RPGは「ロールプレイングゲーム」の略だが、それだけでは解答にならない。日本においては、ドラクエを始祖として派生していったジャンルとも言えるが、それも何かズレているし、逃げたような解答だ。
頭脳戦艦ガルのような例を出して、「RPGとは言ったもん勝ちである」と有耶無耶にするのもどうかと思う。
ダンダダンの件で余計なマウントを取ってしまった分、「言うだけのことはある」と思わせる必要がある。オタク兄としての矜持が問われる。
そこで私は、「RPGとは『成長』である」と答えた。
これだ! 深いっ!37年生きてきた集大成だ。そう、RPGとは成長がゲームの核なのだ。パラメータの成長や、仲間が増えて戦力が増強されるといった表面的な成長もあるし、物語の中でキャラクターたちが精神的に成長するケースも多い。
さらに、プレイヤーは効率的なリソース管理や高度な戦術を求められる。それによって、プレイヤー自身も成長していく。RPGの本質は、プレイヤーとキャラクターの両方の「成長」にあるのだ。
この「RPGとは成長である論」、なかなかいいんじゃないか?
妹は何か分かったような、でもまだ腑に落ちていないような顔をしている。妹にはまだ早かったかもしれないな。
とりあえず、「真・女神転生Ⅲ マニアクスクロニクルエディション」をやれば全てがわかる。
ドラクエとポケモンの良いところを集め、慈悲という小骨を職人の手で一本ずつ丁寧に取り除いたような名作だ。RPGとは何なのか、マタドール先生が全て教えてくれるだろう。難易度はハードでやってくれ。
妹よ、君の創る東京を兄に見せてくれ。
完