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女偏に母なのにおじさん【中国語】山姆大叔(劉慈欣《三体II 黒暗森林》)
“知道他们后代要过什么日子吗?在造船厂 ━━造太空船的厂━━里累死累活一天,然后到集体食堂排队,在肚子的咕咕叫声中端着饭盒,等着配给的那一勺粥……再长大些,山姆大叔,哦不,地球需要你,光荣入伍去吧。”(p.41)
「あの人たちの子孫がどんな目にあうかわかる?造船所、つまり宇宙船の工場で、死にそうな思いをしながら朝から晩まで働いて、1日の終りには食堂に長い列を作って、腹の音を響かせながら食器を抱えて並んで、一さじの粥の配給にありつく……もっと大きくなったら、アンクル・サムが─じゃなくて、『地球が君を必要としている。栄光の軍隊へ』というわけよ」
説明不要の中華SFより。
宇宙人の襲来を前に、暗い未来が語れる場面。
山姆大叔とは、『やまんばと木こり』みたいな昔話に由来する成語か諺かなにか、かと思ったら、アンクル・サム(アメリカ合衆国を擬人化したキャラクター)のことだった。
第一次大戦時の募兵ポスターで有名なこれだ。
男性名の Sam (注1)に女偏に母の漢字「姆」をあてるとは予想外だった。これは漢字を、外来語を音訳するための音符として使っているのだろう。
しかし考えてみると、日本語の「アンクル・サム」の方がヘンだ。なぜ「サムおじさん」ではないのか。
『アンクル・トムの小屋』にひっぱられたのか。これには『トムじいさんの小屋』という邦題もあったようだが、なぜか前者の方がメジャーになってしまっている。
ちなみに『アンクル・トムの小屋』は中国語でなんて言うのか調べてみたら《汤姆叔叔的小屋》だった。
トムは汤姆 tang1 mu3 なのである。
中国語の「汤」は、初学者にはおなじみだが、お湯ではなくスープのことだ。
「汤姆叔叔的小屋」は、おばさんとおじさんが経営する、スープがうまいちょっとした定食屋のように思えてしまう。
ちなみのちなみに、『うる星やつら』のラムちゃんを調べてみたら、「拉姆」だった。
予想通りだったので、逆にびっくりした。
ひねりなさい、ひねりなさい。
注1. ここでは Sam は男性名詞だが、Samantha の愛称でもあって、ジェンダーニュートラルな名前なのだそうだ。