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【映画感想文】①連邦らしい俗な名前だ(『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』)
観てきた。大満足。
何がよかったのかについては、すでに大量に語られてると思うので、ここでは個人的に気になったことについて書いてみる。
冒頭でシャアがガンダムのことを「連邦らしい俗な名前だ」というようなことを言う。
これはメタ的な言及だろうか?作品全体を見るに、たぶん違う。
「銃」を意味する gun と接尾辞 dom をくっつけたネーミングが俗っぽい、という意味だろうか。
これは英語表記 Gundam との齟齬の問題もあるが、いずれにせよ、英単語を元にしたこのネーミングが俗だ、と言っているのだろうか。
ということは、この架空の物語には英語という言語が存在している、ということなのだろうか。
例えば『スター・ウォーズ』の「スカイウォーカー」や「ミレニアム・ファルコン」は、我々にとっては英語由来の名前だが、この架空の世界に英語という言語が存在しているわけではない。
「C3PO」(注1)や「R2D2」は、むき出しのアルファベットと数字で構成された名前だが、この世界にアルファベットとアラビア数字が存在するわけではない。
いわばこの架空の世界の物語をわれわれが鑑賞するための便宜として、事物の名前が英語に翻訳されている、あるいはたまたま英語の発音に似ている、という暗黙の了解がある。
もちろん、ガンダムの世界は、未来とはいえ現実の太陽系の物語だし、月やオデッサやヒトラーが物語中に存在し、言及されている。
ガンダムのマニュアルには「V」って書かれていたり、本作では「警察」という文字がザクの盾に書かれてたりする。英語や日本語がこの世界に存在するのは当然と思われるかもしれない。
では「ザク」や「グフ」はもちろん「ザビ」とか「ジオン」など架空の名前が存在するのはどういうことなのか。
つまり私は、例えば「ファルコン」とか「タイガー」とかいう兵器があるように、「ザク」とはこの世界の言語でこの世界のミドリガメのような生き物の名前だったり、「グフ」とはこの世界の言語でこの世界のホオジロザメのような生き物の名前だったりするのだろう、と無意識に思っていたわけだ。
そして「ガンダム」は英語由来のように見えるが、それは「スカイウォーカー」などと同じように偶然の一致、もしくは翻訳であると思っていたわけだ。
では、シャアがこのとき「ガンダム」を「俗な名前」と判断したのは、「ザク」や「グフ」のような名前とは違うと判断したのは、なぜなのか。「ザク」や「グフ」は粋な造語で、「ガンダム」は普通名詞をくっつけただけにすぎない、ということなのか。
そういえば「ホワイトベース」や「ボール」も英語のように見える。英語(もしくはこの世界固有の言語)の単語をそのまま使っているのが「俗」という意味なのだろうか。
たとしたらそれは「俗」ではなく「不粋」ではないか。
あるいは、やはりここではメタ視点を挿入しているのだろうか。「ガンダム」なんて、子ども向けのアニメのロボットみたいな名前だ、と言いたいのだろうか。だとしたらファンサービスなのかもしれないが、私には余計な配慮に思える。
やはり太陽系に似てるけど、たまたま地球とそっくりの星があるけど、『ガンダム』は遠い昔、はるか彼方の銀河系の物語なのだろうか。(注2)だとすると、なぜシャアは「ガンダム」が「俗な名前」だと判断したのだろうか⋯
ようするに、長々と書いたけど、ここのセリフを「連邦らしいつまらん名前だ」とかにしておいてくれりゃよかったのに、というグチなのである。
富野さんだったらこんなセリフ入れないだろうになあ、と。
注1. 昔コカ・コーラの瓶の自販機があって(自販機に栓抜きが付いている)、王冠の裏にスター・ウォーズのキャラクターの写真が付いていた。その写真でこの2体のロボットの名前を覚えたのが、初めてアルファベットの読み方を覚えた記憶になっている。ちなみにルークが「シースリーピーオー」ではなく「スリーピオ」と呼ぶのが粋だと思う。
注2. ちなみに、なんと今回初めて気がついたが、この世界では軍人がみんなファーストネームで呼び合っている。「シャア少佐だ」って自己紹介してたけど、現実にそんなことありうるのだろうか。「ドズル中将」とかも結構変だ。トランプさんがバイデンさんを「ジョー」と呼んだり、中曽根康弘とレーガンが「ロン」「ヤス」と呼び合っていたのとはわけが違うだろうに。