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ふつうの人【表現】put one's pants on one leg at a time

One night while we were eating Chinese before a gig in Miami Beach, I asked Amy if there was any one question she was never asked during the Q-and-A that follows almost every writer’s talk – that question you never get to answer when you’re standing in front of a group of author-struck fans and pretending you don’t put your pants on one leg at a time like everyone else. (p.14)
ある晩、マイアミ・ビーチでギグの前に一緒に中華を食べているときに、エイミ・タンに聞いてみたことがある。たいていの講演会の後に用意されている質問コーナーで、一回も聞かれたことのない質問って何かあるか、と。憧れの著者に会えて感激してるファンの前で、スターみたいに振る舞っているときに、決して聞かれることのないような質問のことだ。

Stephen King / On Writing: A Memoir of the Craft (2000)

put one's pants on one leg at a time とは、「ふつうの人である」という意味で、1930年代にテキサスから全国に広まった決まり文句だという説がある。

確かにどんな人でも、王様でもアスリートでも小学生でもテロリストでも、ズボンを履く時は片足ずつ履く。おもしろい表現だ。

しかし本当だろうか?もしかして無重力空間では両足同時に履く宇宙飛行士もいるのではないか。床に置いたズボンに両足を入れて、ズボンを腰まで上げる、という履き方をしている人もいるかもしれない。まあそういう人はふつうではないかもしれないが。「人は両足で同時にズボンを履くことはできるか」って探偵ナイトスクープあたりでやっていそうだ。芸人をクレーンで吊り下げたりして。

引用した例では、もちろんキングが借り物の言い回しをそのまま使うわけはなく、否定形にしておかしみを持たせている。このキングからの質問に対するエイミ・タンの答えがこの本を書くきっかけになったそうで、この本は彼女に捧げられている。

ちなみに日本語に似た意味のことわざがないかちょっと探してみたが、見つからなかった。ChatGPTに聞いてみたら、「富士山麓にありて天下の高嶺を衝く」というのを教えてくれた。なにそれ。聞いたことないよ。

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