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「良すぎる」の否定は「あまり良くない」ではなく「良すぎるということはない」【デンマーク語】Det bedste er ikke for godt (Jens Andersen / The LEGO Story)
My grandfather’s motto has always caused us problems when we have to translate it into English. We simply haven’t found the right way of putting it, maybe because “too good” is very Jutish (the Danish phrase is “Det bedste er ikke for godt,” literally, “The best is not too good.” Since this implies something much more negative in English, it is usually translated as “Only the best is good enough”). (p.356)
祖父のモットーを英語に翻訳するのは、いつもひと苦労でした。「良すぎる」という言い回しはユトランドに特有のものらしく、正確に訳す方法がなかったのです(デンマーク語で “Det bedste er ikke for godt” は直訳すると『ベストなものは、あまり良くない』という意味になる。英語ではこのようにずいぶんネガティブな意味合いになってしまうため、たいていは次のように訳される。『ベストなものだけが、本当によいものである』)。
レゴ社の伝記より、創業者の孫にして後継者のコメント。
創業者のモットーとは、「ベストなものは、良すぎるということはない」ということだが、英語では not too good は「あまり良くない」「いまいちだ」という意味になってしまう。
そこで英訳では enogh を持ち出しているが、これではベストを目指せば事足りる、完ぺき主義を称揚するかのような意味合いになってしまう、と後継者は続ける。創業者の意図は、ベストなものもさらにより良くすることができる、努力と改善に終わりはない、ということなのだから。
too 〜 to 構文の訳しにくさや面白さについては何度か書いたが、デンマーク語と英語という同じゲルマン語同士でもこういう齟齬があるというのは、意外だった。
そして、デンマーク語を英訳することの難しさについての英文を、日英間の齟齬など存在しないかのように、いやむしろそこに英語など存在しないかのように和訳するというこの珍妙な営みが、面白くて仕方がないのである。