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最大多数の最大感動【読書感想文】川越宗一『熱源』

Audible。

明治から第二次世界大戦にかけて、大国に翻弄されるアイヌの人々を描いた歴史群像劇。

のっけから青年漫画のような話なので不安があり、途中で何度かやめようかとも思ったが、時代背景や少数民族の文化への関心に支えられて、あといつものようにコンコルドの誤謬(別名貧乏性)に惑わされて、なんとか最後まで聴き終えた。

感動的な場面、印象的な場面はいくつもあるが、フォーマットがあるかのような書かれ方で、「やはりこうなるのか」「これが今のエンタメか〜」という感慨が先に立って、もうひとつ感動しきれなかった。

最近では原田マハさんの『たゆたえども沈まず』を読んだときの感覚に近い。

あまり詳しくないので印象に過ぎないが、どうも本屋大賞とか直木賞の近辺では、必勝テクニックみたいなものがシェアされているのではないか、とさえ思える。

高レベルで研ぎ澄まされてはいるのだけれど、もうそっちの方は掘り尽くされていて鉱脈がない、というような。

誰しも安心して味わえる感動(エンタメ)を求めていて、需要と供給が一致しているのだから、当然といえば当然なのだけど。

目指すは最大多数の最大感動。

M1とかハリウッド映画とか、みんなそうなっていっている気がしないでもない。

そして私はふと、ドリフのコントやファーストガンダムが観たくなってしまうのだ。

話は戻るが、朗読者の声質と演出も関係しているのかもしれない。

ラストはなかなかよかった。

金田一京助『あいぬ物語』を読みたくなった。

直木賞受賞は納得。

86点。

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