ぜひ知ってほしい!伝説の盲目ハープ奏者/作曲家 オキャロラン
バンドやソロ活動の他に
アイリッシュやスコティッシュなどの伝承曲をカバーするプロジェクト
をやっています。ティンホイッスル(アイルランドの縦笛)もしくはアイリッシュフルートとピアノのシンプルなアンサンブルです。
今回カバーした曲は、"17世紀アイルランドの伝説的な盲目のハープ奏者"であり作曲家でもあるターロック・オキャロラン(Turlough O’Carolan)の代表曲のひとつ「エレナー・プランケット」です。
プロデュースは僕が担当し、ティンホイッスルはバンドのメンバーに演奏してもらいました。
演奏動画
プロジェクトの特徴
100年以上前に書かれた伝承曲の中でもとくに、ゆったりとしたテンポで美しいメロディーが特徴の「スローエアー」と呼ばれるものに特化しています。またコード進行やメロディーの一部を現代的にしてアレンジしています。
ターロック・オキャロラン
曲の背景にあるもの
楽曲に縛られず自由に味つけ
同じ曲であったとしても演奏者ごとに楽器、メロディー、リズム、抑揚などが違い、それが伝承曲ならではの面白さだと思います。そのため、J-POPなどをカバーするのとは少し方向性が異なります。
いい意味でオリジナルの曲自体が洗練されていないため、演奏者が楽曲に縛られず、自由に味つけができます。
つまり、アレンジの可能性は無限大です。
アレンジ
ティンホイッスルのメロディーとピアノのコードがハーモニーを形成し、ときおりピアノがカウンターメロディーを奏でます。
キーは「Gmaj7」ですが、メロディーの最後がAの音で終わることで、なんとも言えない余韻が残るかもしれません。
メロディーを担当するティンホイッスルの音色は"田園風景の素朴さ"を、ピッチの揺れは"人の心情"を、装飾音符は"切なさ"を表現することを意図しました。
調べてみると、オキャロランは仕えていたエレノア・プランケットに対して恋心を抱いていましたが、しかしそれは到底許されない想いだったそうです。その心情がメロディーの起伏や余韻が残るような終わり方に表れているように感じます。
もしかすると、彼のハープは叶えられない恋に対する彼自身の気持ちを代弁していた可能性もあります。
コード進行
「Gmaj7」で切なさをともなってはじまり、4番目に登場する「C#m7/b5」の響きが心の衝動を抑え込むような印象を与え、それに続く「A7」の響きでさらに不安定な感覚を強調し、最後の「D」のコードで心が解放感され、「Gmaj7」に落ち着く構成です。
展開を「G→C→D」のスリーコードにせず、心の微妙な動きを響きで表現するようにコード進行を考えました。
音源販売
音源はBandcampで販売しています。
https://flauto.bandcamp.com/album/eleanor-plunkett
またティンホイッスルのパートをミュートしたピアノだけのいわゆる"伴奏バージョン"も制作しました。
さらに「笛とピアノのアンサンブル譜」も販売していますので、興味がある方は、自分なりの表現で演奏してみても面白いかもしれません。
▼譜面販売(PDF)
最後に
オキャロランが活躍していた17世紀に作られた曲が、約400年後の現在もたくさんのミュージシャンによって演奏されていることに驚かされます。
音楽が受け継がれることの素晴らしさや、メロディーが時を超えて響く神秘性を感じます。
中世ヨーロッパの田園風景にタイムスリップするような感覚で、「エレナー・プランケット」をお聞きいただけるとうれしいです。
補足
過去にカバーした伝承曲の中からいくつか紹介します。
Hector the Hero
スコットランドの作曲家でありフィドル奏者でもある ジェームズ・スコット・スキナーによって1903年に書かれた古典的な哀悼の曲。
sheebeg and sheemore / Sí Bheag, Sí Mhór
ターロック・オキャロランの処女作として有名な曲で、アイルランド語「シーヴェグ・シーウォア」と発音。「小さな妖精(の丘)と大きな妖精(の丘)」という意味です。
Give me your hand
17世紀始めごろアイルランドの盲目のハープ奏者Ruaidri Dáll Ó Catháinによって書かれ、仲直りする為に贈ったワルツ曲だそうです。
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