#55 おでんがまだあるか、知りたいだけなのに
まだまだ暑い九月中旬におでんとは、気が利かない感じですね。このトピック、タイトルの響きに反してとっても大切な内容なのです。大学の1〜2年生の授業で取り上げてディスカッションして、それを英語でまとめて発信する、とかいう出前授業、やってみたいなあ。
柳仙のおでん
以前の投稿「#33 つくばウォーク 〜盛大なる1人イベント〜」で登場した居酒屋、柳仙。この店は冬限定でおでんを出すのですが、人気メニューなので早々に売り切れてしまいます。ある時店に入った僕は、おかみさんに尋ねます。
実はその段階では、おでんを食べるかその他のものを食べるか迷っていて、おでんが残っているかどうかを確かめたかっただけなのです。しかししばらくの後、おかみさんがおでんを手にやってきました。
柳仙のおでんは「すぐ売り切れになる」名物なので、「おでん、まだありますか?」は「おでん、まだあったらください」の意味に解釈されたのだと思います。
コミュニケーション能力?
以前ネットニュースでこのような記事を読みました。職場でのいわゆる「コミュニケーション能力」についての記事で、就職活動中の学生や新社会人に向けて、このようなことが書かれていました。
だそうです。個人的には全く同意しません。僕なら部下に仕事をどうしても頼みたい時は、今どの仕事に取り組んでいるかを聞き、重要度を判断して、それでも頼もうとしている仕事の方が重要な場合は、「今の仕事は脇においていいから、こっちをやって下さい。でも予定通りの時間に帰るようにしてね」と頼みます。でも、上のようなコミュニケーションが一般的なのでしょう。
ここで問題発生!
おでんの話と職場でのコミュニケーション能力の話、つながりが見えたでしょうか?上に書いたようなコミュニケーションでは、実は次の場合の情報をうまくやりとりすることができないのです。
その場の空気を読んで先回りすることで、確かに意思疎通が円滑にいく場合もあるとは思いますが、言葉通りの意味がやりとりできず不自由な思いをすることもあるわけです。さらに、海外とのやりとりでは文字通りの意味でやりとりすることがほとんどなので、逆に「コミュニケーション障害」を生みかねません。
外国人が「おでん、まだありますか?」と聞いて、おでんが出てきた場合、おそらく「注文してません」と言われるはずです。若手社員が無理をして頼まれた仕事をしても、「時間が空いているからやってもらっただけ」と思われ、外国人上司からプラスの評価を得ることはないでしょう。
言葉どおりの方がいいのでは
「コミュニケーション」あるいは「コミュニケーション能力」の定義はとても難しいですね。おそらく僕が思っている能力(内容を正確に言語化して伝える=欧米の価値観に近い)と日本の職場環境での定義(人間関係に波風を立てない言動を心がける)は、異なるというより時に正反対にもなり得ます。
僕は、できる限り言葉通り解釈するコミュニケーションの方が、人間関係の風通しが良くなり、ストレスが減るのではないかと思います。波風が立つとしんどいからといって、波風を立てないためにその「しんどさ」より大きい「気づかい」をするのは、もったいないと思うのです。
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ちなみに、最初の柳仙でのエピソードは、おそらく今から25年以上前のことです。その時からずっとこのことを覚えていて、遠く離れたドイツでエッセイにしているとは、僕もかなりの変わり者ですね。いつか、今回の「コミュニケーション能力」みたいに、異なる考え方があるようなトピックについて、複数で対話して考えを深め合うような活動ができれば、と思っています。
今日もお読みくださって、ありがとうございました🍢
(2023年9月15日)