#122 次のステージへ〜英語学習の特効薬!
新年度が始まりましたね✨「英語学習に関わる記事を積極的に書いていきたい」と思っていますが、note には多くの優秀な英語の先生方がいて、それぞれの分野で素晴らしい発信をなさっています。なので、それをなぞるような記事を書いても仕方がないと思いました。今日は、僕が一つだけ思いつく、「英語学習の特効薬」を紹介したいと思います。
英語学習は by stages
NHKラジオの「やさしいビジネス英語」を長年担当されていた杉田敏先生が昔から繰り返しおっしゃっていたことに、英語学習の進み方、英語力の伸び方は gradual(徐々に)ではなく、by stages(ある時ポンと次の段階へ上がる)ですよ、ということがありました。その通りだと思います。
今日ご紹介したいのは、高校を卒業して大学に入り、現段階の英語力が TOEIC で700点くらいまでの人が、次のステップに上がるための特効薬です。
* * *
イノちゃん再登場
先日、僕がお世話になった英語の先生方4人を記事で紹介したのですが、この「特効薬」を授けてくださったのは、中1〜中3の3年間お世話になった、甲陽学院のイノちゃんこそ井上良二先生です。
先生の最初の授業は上の記事で紹介した通り、「大きな声・正しい発音・繰り返す」でしたが、最後の授業ではこんなことをおっしゃいました。
英英辞典って何?
それを聞いていた僕たち中3生は、「英英辞典って何?」と質問しました。英英辞典は、英語の単語の意味を英語で説明した辞書で、日本語訳はありません。ネイティブ用のものと英語学習者用のものは編集方針が多少違っており、学習者用のものでは、語の説明に使う定義語彙(defining vocabulary)を決めて、それらの語だけで全ての語を説明しています。
僕がオススメする英英辞典 Longman Dictionary of Comtemporary English(LDCE:ロングマン現代英英辞典)では、定義語彙は約2000語です。今のカリキュラムでは、日本の小学校〜中学校で学習する単語がすでに2286語あるので、多少のズレはあったとしても、ほぼ中学までに習う単語で全単語が説明されているということになります。
英文和訳は必要?
先日の記事で書いた通り、井上先生に送り出された後の我々の学年は、「鬼の岩尾(先生)」に3年間しごかれたわけです。岩尾先生は「訳せるものは徹底的に訳す」タイプだったので、英英辞書の出番はありませんでした。僕が井上先生の言葉を思い出し、だまされたと思って英英辞典を買ったのは、大学に入った時でした。
英英辞典を使おうとして最初にぶつかる壁は、なんといっても「日本語訳が書いていないこと」です。英英辞書を引いても、「英文和訳」には使えません。ここで、大きな発想の転換が必要です。「英文和訳」って、大学に入った後、そんなに必要ですか?僕は大学入学後今日までの32年間で、「英文和訳」が必要になったことは、数える程しかありません。
大学での勉強・研究でも仕事でも友達とのやりとりでも、英語の書類は英語で読んで対応、日本語の書類は日本語で読んで対応、「翻訳」という作業が介在することはほとんどありません。仕事で翻訳や通訳に携わる人以外は、実は「訳」はそれほど必要ではないように思います。多くの人が、「日本語に訳さないと分からない」と思い込んでいるのではないでしょうか?
* * *
訳すのをやめた瞬間
ここで、杉田敏先生の言う by stages の登場です。僕にとって、「受験科目の中で得意だった英語」が、「専門家として扱える英語」のステージへ上がったのは、辞書を変えた時でした。最初は苦しかったです。なにせ日本語が全く書いていないので、単語の意味を調べても「なんとなく」しか分かりません。英和辞典に戻ったことも何度もあります。それでも、英英辞典を使う割合が増えていき、ついにはほぼ100%、つまり日本語をほぼ介在させずに英語の勉強ができるようになりました。
上で紹介した『ロングマン現代英英辞典』を毎日ひたすら引くので、すぐにボロボロになってしまい、これまでに5冊ほど買ったのではないかと思います。英英辞典だけで事足りるようになった時、英語は「勉強」するものから「使う」ものに変わった気がします。「井上先生の言った通りだ」と今になって思います。
* * *
言語に対する感度が上がる
英和辞典と英英辞典の定義がどう異なるかをご紹介したいと思います。手元にある MacOS 標準の辞書を使いますね。混乱することの多い2語、logic と theory を取り上げます。logic は「論理」、theory は「理論」と訳されますが、日本語に訳してもその違いはピンときません。英英辞典なら明確に違いがわかります。英和辞典にある日本語訳と、英英辞典にある英語の定義を引用します:
なんと、日本語訳では「理屈」が両方に登場してしまいました。しかし、logic と theory は全く違う概念です。英語の定義を見ると違いは一目瞭然で、logic はその意味のベースは reasoning(理由づけ)であり、一方の theory は supposition(仮定)であることが分かります。ここで、やはり reason や suppose という元の動詞の最低限の意味は日本語で知っておく必要があるので、井上先生は「英英辞典は大学に行ってから」とおっしゃったわけです。
上の英語の定義を読み比べれば、「論理」が、「正しいと分かっていることに基づいて理由づけすること」なのに対し、「理論」は「何かを説明するために、〇〇であると仮定してみること」であることが分かります。日本語の世界だけにいては分かりづらいことが、英語を通すことで、「論理」「理論」という、漢字の順序が逆な二つの熟語の異なる意味が、逆輸入的によく分かりました。これで、日本語の作文を書く時に、「論理的」と「理論的」の意味の違いに悩むこともなくなります。
* * *
いつ辞書を変える?今ですよ!
今日僕がオススメした「英語学習の特効薬」は、数千円で入手できるものです。高価な教材や英語スクールの宣伝ではありませんでした。以下の3種類の学習者用英英辞典が日本では最もよく用いられており、僕のおすすめはロングマンで、オックスフォードの方が一段難しいです。
コウビルドは語義を完全な文で説明するという特徴があり、熱心に勧める先生方もいますが、僕は「文未満の単位(上の logic, theory の定義のように)に慣れることは英語習得上重要」という観点から、お勧めしません。どれも、大型書店や大学書籍部へ行けば見ることができると思います。辞書を変えるなら、今ですよ✨
今日もお読みくださって、ありがとうございました📕
(2024年4月1日、新年度によせて)