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大人が大人として読む本。

『中学生の質問箱 思春期のしんどさってなんだろう? あなたと考えたいあなたを苦しめる社会の問題』(鴻巣麻里香/平凡社)読了。

スクールソーシャルワーカーとして現場で活動する筆者の当事者への想いが伝わる一冊。「当事者に寄り添う」というスタンスなので、理想論だと感じる部分もあるけれど(特に「自分らしくいられる場所」は現在の社会にはないのでは、ということには真摯に向き合う必要があると思う。これは大人だってそうだけど)、それも含めて「大人が大人として」読まなければならない本だと思う。

この本にあるように、「大人が子どもに甘えている」というのはまったくその通りで、この本を読んで当事者が少しでも気が楽になればと思うけど、それはあくまでも対症療法にすぎない。本当は原因は大人にあって、社会を変えていかなければならないのも大人だ。そもそも弱い立場のひとが「知識を身につけなければならない」という構造自体がいびつなんだけど、もう多くのひとが麻痺しちゃっているんじゃないかなと思う。

私自身も馬鹿な男子中学生だったし、決して被害者面できる立場ではないけれど、読むひとは(おそらく書いた著者も)苦しいと思う。病気のこととかは「現象」と割り切ってしまえば書くことができるけど、家庭にせよ学校にせよ、自分自身が生まれ育ったコミュニティを疑いノーを突き付けるということは、誰であってもものすごくしんどいことだと思う。それができない大人が多いから、いまある価値観が再生産されてしまうんじゃないかな、とも。

私もゆくゆくは学生時代のことを自分の言葉で書けるようになりたい。いまはまだ壊さなくていいものまで壊してしまうし、もう少し訓練が必要だけど。

いまの日本では「人権」がパンドラの箱になってしまっていることをあらためて思う。

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