篠井菜央人

大学院生のときにこころが追い付かなくなってしまったひと。 就労移行支援を経て某特例子会社に就職。 2020年に精神保健福祉士資格を取得。

篠井菜央人

大学院生のときにこころが追い付かなくなってしまったひと。 就労移行支援を経て某特例子会社に就職。 2020年に精神保健福祉士資格を取得。

最近の記事

打出の小槌。

障害者雇用や精神保健分野に関しては、当事者としても専門職も、経験や知識を持っている立場だから、仕事上で意見を求められることも多い。 もちろんそれは幸せなことだしやりがいのあることだ。チームや組織にとってプラスになるなら、伝えられるものは積極的に伝えていきたいと思っている。だけど、自分の持っている知識や経験に「タダ乗り」されるのはやっぱり嫌だな、と最近強く思う。 たまに「(意見や知識があるから)篠井さんに振れば何とかなるだろう」みたいな依頼をされるけど、そのたびに「私は『打出の

    • 他力本願、だからこそ。

      おかげさまで順調に歳を重ねているけれど、見た目が相変わらず幼く若く見えるので、未だに20代に間違われることがある。20代に見られて嬉しかったのは30歳になってからせいぜい2, 3年で、歳を取るにつれてショックの方が大きくなっている。40代になって20代に間違われたら心底へこむと思う (昨年から習っているピアノの先生は、私のことを新卒だと思っていたらしい。それはいくらなんでも言いすぎだろう……!)。 書きたいのは私が若く見える、ということではなく、「他人から自分がどう見えるか

      • 「書くことがうまくなる」ってどういうことなのだろう。

        年度の変わり目くらいだったか、書くことに対してすごく怖い、と思うようになった。 特に仕事でも文章を書いていると、「勉強になりました」と言われることがあるけれど、そう言われても嬉しいという気持ちは全然なくて、とにかく怖い、と思うようになった。 相手に何かをあげたくて書いていると、別に思想を誘導しようとかそういう気持ちはなくても、自身が相手より知識や経験を持っていて、書くことで影響を与えてしまうということに向き合わなければいけない。その「自身と相手の非対称性」が怖かったのだと思

        • 子どもを持つことへの"想い"は障害の有無に依らない、と思う。(2024年9月追記)

          ※この記事は2022年4月に書いたものを加筆・修正したものです。 はじめに旧優生保護法をめぐる最高裁判決が出て2か月になる。 障害があることを理由に、ひとの身体、その中でも特に根源的な「性」に侵襲したことは決して許されることではない。考え方そのものが誤っていたことを国はきちんと認めて、国民に示してほしい……そう思っていたのがようやく長い道のスタートラインに立った。 この法律が廃止になったのは平成8年。つまり私が生まれた後のことであり、私にとっては決して「過去のこと」でも「他

          障害があってもなくても就職は「スタート」であってほしい。

          仕事柄、特別支援学校や就労支援機関の方とお会いすることがあるのだけれど、話していると「ああ、就職させたいんだな」と思うことがままある。 「何を当たり前のことを言っているんだ」と思うかもしれないけれど、教育や福祉の領域では就職する(させる)ことがある種の「ゴール」と捉えられているフシがある。 企業で長く働いているひと、特に人事や人材開発、後輩の指導に関わった経験があるひとにとっては、こう思われたらたまったものではないだろう。 就職はキャリアの「スタート」に過ぎず、たとえゆっく

          障害があってもなくても就職は「スタート」であってほしい。

          「研究」と一口に言っても。

          新年度になり、どこかの大学のどこかの研究室で、「研究は勉強とは違うよ」と言われている学生がいると思う。私も10年以上前はそんな学生のひとりだった。ただ、その言葉を何も考えずに鵜呑みにしていた自分には、「研究」する力がまだまだ足りなかったのだなとも思う。 「研究」と一口に言っても、実験で仮説を検証する「研究」と、史料を読み解いて解釈する「研究」と、フィールドに出て得られた結果を考察する「研究」は、一括りにはできない。 自然科学と社会科学 いまの仕事で精神保健福祉や障害者雇

          「研究」と一口に言っても。

          大人が大人として読む本。

          『中学生の質問箱 思春期のしんどさってなんだろう? あなたと考えたいあなたを苦しめる社会の問題』(鴻巣麻里香/平凡社)読了。 スクールソーシャルワーカーとして現場で活動する筆者の当事者への想いが伝わる一冊。「当事者に寄り添う」というスタンスなので、理想論だと感じる部分もあるけれど(特に「自分らしくいられる場所」は現在の社会にはないのでは、ということには真摯に向き合う必要があると思う。これは大人だってそうだけど)、それも含めて「大人が大人として」読まなければならない本だと思う

          大人が大人として読む本。

          持続可能な勉強。

          先日、簿記3級の試験を受けて無事に合格した。 簿記を受けた理由は、「何か勉強したいな」と思ったときに、会社勤めにとってお金に関する最低限の知識があったほうがよいのではと思ったのと、NPOの経理を手伝っていた経験があったので敷居が低かったから、である(もっとも、商業簿記とNPOの経理は全然違うのだけれど)。 実際に勉強してみて、仕訳の考え方(減価償却とか貸倒引当金とか株主への配当とか)や、BSやPLができるまでの流れがさわりだけでも勉強できたのはよかった。簿記の試験は精神保健

          持続可能な勉強。

          努力や節制の先に。

          先月で36歳になった。年男である。 誕生日を無事に迎えられてよかった、という気持ちももちろんあるけれど、それ以上に時間が過ぎる速さへの驚きのほうが大きい。昨年35歳になったのがつい最近のように思う。 おかげさまで仕事も続けられているし、将棋やピアノのように楽しめることもあるし、読みたい本も勉強したいこともある。今年は忙しい一年になると思うけれど、休むしかなくて先が見えなかった頃には(いい意味で)想像がつかなかった生き方ができている。ありがたいという気持ちと、今まで以上に心身

          努力や節制の先に。

          闇が網膜を灼く前に

          闇が網膜を灼く前に

          ギロンギング。

          たまーに、友人知人から「もう研究はしないの?」と聞かれることがある。研究室にいた頃を振り返ると、そう言ってもらえるのは申し訳なさもあるけれど、とても嬉しいことだと思う。 正直に言うと、「研究」をしたいという想いはいまはない。研究はまず解決したい課題があってのことだし、その課題を検証していくのには、どの分野であれ大変なエネルギーが必要だということは経験上わかっているつもりだ。その過程にたどり着くだけのものをいまの自分は持っていない。 ただ、「研究」はできなくても「議論」をし

          ギロンギング。

          2023年に読んだ本。

          今年は9冊(マンガ・棋書は除く)。 1.教養としての精神医学(松崎朝樹/KADOKAWA)  この本のキモは、各疾患の解説よりも精神疾患というものが人類の歴史のなかで生まれたものであることを誰にでも分かるかたちに落とし込んでいるところだと思う。 疾患の解説については、そもそも精神医学が一冊の本にまとめられれば苦労はないわけで。 2.臨床心理学(丹野義彦ほか/有斐閣) 分厚い本だけど、臨床心理学についてはこの本を読むのがいちばんの近道だと思う。各疾患のモデルがわかりやすく解

          2023年に読んだ本。

          「言語化」から少し離れて。

          「観る将」が今年の流行語になった。このように将棋が注目されるようになったのは、棋士の強さや姿勢だけではなく彼らの「言語化」する力も大きく影響していると私は思っている。対局する棋士だけでなくそれを観るひとにわかりやすく解説する棋士がいなければ、楽しめるひとはぐっと減ってしまうだろう。 将棋のルールを知らなくても羽生善治先生の名前を知らないひとは少ないと思う。羽生先生の将棋でのすごさはここに書くまでもないけれど、私はそれと同じくらいに、彼の言葉にする力も評価されるべきだと思って

          「言語化」から少し離れて。

          世界観を問う44問(INFP)

          引用: 回答者:INFP 当たり前ですが、人の生活がより良いものになることを期待しています。同時に不幸をもたらす可能性もあると思っています。謎が解明されることについては、それがプラスになるのもマイナスになるのも課題次第なのではないかと。それらの見極めや科学の成果を人に寄り添ったものにするには、ヒトの熱意や知識や倫理観が不可欠だと思っています。 年齢というより積み重ねた経験によって左右されると思うので、間接的には関係していると思います。「指示をする」は年齢や経験の影響が大

          世界観を問う44問(INFP)

          マイノリティの靴。

          新しい靴を買った。 いままでは量販店で買っていて、選ぶ基準も「価格≧デザイン>機能」だったのだけれど、今回は百貨店の紳士靴売場に行き、シューフィッターの方と相談しながら自分に合う靴を選んだ。 12月になり賞与をいただくことができたというのもあるけれど、これには理由がある。 実は、私は足のサイズがすごく小さくて(今回きちんと測ってもらったら23.5cmだった!)おまけに偏平足である。男性用の靴は24.5cm~というのが多くて、サイズが多少大きくてもインソールをいれてやり過ご

          マイノリティの靴。

          ハッピーエンド。

          SHISHAMOの『ハッピーエンド』は彼女たちの作品のなかでも大好きな曲のひとつだ。SHISHAMOの夏の曲は名曲ぞろいだけど、この曲は3人の骨太なサウンドも、何かが乗り移ったかのような朝子さんのギターソロやCメロのボーカルも、ラストの歌詞の切なさも、すべてが心を揺さぶる。 さて、SHISHAMOに限らず『ハッピーエンド』というタイトルの曲は、いわゆる「ハッピーエンド」という内容ではないけれど(back numberもそうだし、ほかにもあるだろう)、最近になって、たとえ一緒

          ハッピーエンド。