男の僕が生理用ナプキンを履いた理由
タイトルを見た瞬間ページを閉じようとしたあなた。
「何だ変態か」と次の記事を探そうとしたあなた。
もう少し話を聞いて欲しい。
これは性癖をこじらせた男の告白ではない。
いたって真面目な体験談だ。
常々思うことがある。
なぜ生理の時期になると女性は不機嫌になるのか。
生理で不機嫌になるパートナーにイラついてしまう男性は多いと思う。
自分も正直に言って何度もある。
けれど、同時に思う。
我々は、その辛さを理解しようとしたことはあるだろうか。
さて、今月も妻の生理の時期がやってきた。
妻がめんどくさそうに生理用ナプキンを交換しに行くのを見ながらふと思った。
「生理って、実際どれだけ辛いんだろう?」
知識としては何が起きているかはだいたい知っているつもりだ。
けれど、具体的にどれだけ面倒か、どんなに不快かは知らないし、わからない。
そんなとき、妻に「見てみる?」と言われた。
迷った。あまり血を見るのは得意じゃない。
グロテスクと分かっているものを見るのは抵抗がある。
とはいえ、百聞は一見にしかず(紀元前61年:趙 充国という中国の武将が言ったらしい)だ。
恐る恐る見てみると、ナプキンが真っ赤に染まっている。
これが毎月やってくるのか。そりゃ女性は貧血にもなるはずだ。
意外と冷静な頭で考えていると妻が重ねて言った。
「ナプキン履いてみる?」
「え……」
迷った。男としてのしょうもないプライドが邪魔しているのを感じた。
ただ、知識として知っているだけと、体験して知っているのでは雲泥の差だ。
妻のナプキンを履いてみることにした。
百見は一履にしかず(2021年:日下 秀之)だ。
妻に余っているナプキンをもらい、できるだけ実際の生理に近い感覚を再現しようと試行錯誤した。
まず、ナプキンに水をかけてみた。
妻に湿り具合をチェックしてもらい、「こんなもん」とお墨付きをもらう。
ナプキンの外側(身体に触れない側)には粘着面がついており、ずれないよう下着にくっつけられる。非常に便利だ。
準備も整い、いざ出陣。
おそるおそるナプキンを履く。
……ぐちょり。
「うわぁ」思わず声が漏れる。
これは……気持ち悪い。
湿った感覚が肌にまとわりつき、すごく気になる。
しばらく静止していると徐々に慣れて来るが、動き出すと意味がない。
歩く、屈む、立つ。
動作をするたびに微妙にナプキンが動き、身体から離れ、また肌に付着する。
ひどく不快だ。
履いたまま会社に行ってみる。
駅までの徒歩、電車の席に座った瞬間、立った瞬間。不快感が続く。
妻曰く「出血が多い日はトイレにいくたびにナプキンを交換する」らしい。
それに習って自分もトイレのたびに交換することにした。
……のつもりが、初日から交換用ナプキンを忘れてしまった。
帰宅後、忘れた場合はどうするのか妻に聞いてみた。
妻曰く「ロッカーなどに常備しておく。無ければ同僚に借りるか、コンビニに走る」らしい。
自分は財布や鍵を当たり前のように家に忘れる人間だ。
一つ準備物が増えただけでもストレスになる。
そして、コンビニと薬局では価格が全く違う。
コンビニでは1枚あたり22円、薬局では一番安いもので1枚あたり6円。
1個あたりの値段が4倍近く違う。凄く損した気分になる。
また、付け方が不慣れなこともあってか、簡単にナプキンがずれてしまう。
へらへらしながら妻にずれることを報告すると「ズレた時点でアウトだよ。本当なら、もうズボン赤くなってるよ」と言われた。
今回はたかだか水が漏れるだけなので、下着やパンツが若干濡れるだけだ。
血が漏れた場合は、すぐに洗わないと落ちなくなる。
平日の朝にソファに妻の生理の血が付き、「なんでこの忙しい時に……」とイラつきながらカバーを手洗いした日を思い出した。
寝る前、ナプキンを夜用に交換した。
昼用と夜用ではサイズが違う。眠っている間に漏れないように、面積が大きく吸収量も多い。
履いたときのゴワゴワ感はあるが、非常に安心感がある。
「ずっとこれでいいのでは?」と聞いてみたが、「高い。3倍はする」と返事がきた。
貧困に苦しみ、生理用ナプキンが買えない大学生がいる、という話を思い出した。
ナプキンの交換をしながら2日間が過ぎた。
慣れてきたのでもう1段再現度を上げることにした。
実際の生理時、血はサラサラな血ではないらしい。
赤ちゃん用のベッドだったものが 剥がれ落ちるので、それがドロっとする。
水溶き片栗粉を加熱し、とろみを付けて再現することにした。
ナプキンに付ける量を妻と一緒に試行錯誤。
「いい感じ」とのことなので、いよいよ履いてみる。
……ぬるり。しかも生暖かい。
水だけに比べて不快感がマシマシだ。
ぬるぬるするからナプキンもずれやすい気がする。
そのまま一晩寝てみたが、深夜謎の腹痛に襲われた。
自分にも生理が来たのかと思ったが、水分に体温が奪われ身体が冷えたらしい。
調べてみると、ナプキンをつけた時の冷え性に悩む女性の声がいくつも見つかる。
結局、3日間のナプキン生活で音を上げた。
その間、得したことは一つもなかった。不快だし、動きづらいし、交換は面倒だ。
そして、世の女性はこれを毎月経験している。
ホルモンバランスが崩れて精神的に落ち込んでしまったりもする。
自分がやったのはあくまで「生理ごっこ」で、ただ股間周辺の不快感を味わっただけだ。
それでも、わかろうとしたこと、体験しようとしたことに、意味はあるはずだ。
この世界には、
・実際に分かっていること
・知っているつもりのこと
の2つがある。
後者のことであっても、前者に近づける努力はできるはずだ。
生理のたびにパートナーにイラついてしまう、世の男性にオススメしたいことがある。
パートナーのナプキンを履いてみてほしい。
水溶き片栗粉で経血を再現してみてほしい。ちなみに食紅を足すとよりリアルだ。
数時間ごとに交換してみてほしい。
多分、話はそれからなのだ。
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