筋トレのコツ15:筋肥大に必要不可欠な「アイソトニック」
この記事では筋トレを続けていく上で重要になるコツの中でも、『アイソトニック』の特徴についてまとめています。
尚、「アイソトニック」とは簡単言えば「筋肉の収縮の仕方」の一つです。更にこのアイソトニックには「コンセントリック」と「エキセントリック」という2つの種類の収縮があります。ここではそれぞれの特徴についてもまとめています。
「アイソトニック」とは?
前回の記事にある「アイソメトリック」とは名前が似ていてややこしいですが、ここで説明するのは「アイソメトリック」ではなく、「アイソトニック」です。
まず前回の「アイソメトリック・コントラクション(等尺性筋収縮)」について簡単に説明すると、アイソメトリックでは筋肉を収縮させる際、関節に動きを伴いません。つまり関節を動かさずに、筋肉の収縮度合いを自分の意思で調節する事ができます。
一方、今回説明する「アイソトニック」では、アイソメトリックとは異なり、「筋肉を収縮する際、関節に動きを伴う」事になります。つまり筋肉の収縮度合いを自分で調節するのではなく、筋肉にかかる負荷とそれに必要な筋力が釣り合う事によって、関節の動きに伴い「筋肉の収縮度合いが自動的に変化」します。
それについて簡単に説明すると、例えば手にダンベルを持って、肘を伸ばした状態から、力コブを作るようにしてゆっくりと肘を曲げてみます。この時、最初の肘を伸ばした状態では、腕の筋肉(腕の表側にある上腕二頭筋)は脱力して伸ばされていますが、そこから肘を曲げていくと、腕の筋肉(上腕二頭筋)が収縮して筋力を発揮し、縮んだ筋肉が盛り上がって「力コブ」ができます。
つまり関節を曲げたり伸ばしたりする際、一緒に筋肉が縮んだり伸びたりするため、「動作間で筋肉の長さが変わっている」訳です。特にそのような収縮の事を「アイソトニック・コントラクション(等張性筋収縮)」と言います。
尚、最初に書いたように、このアイソトニックには「コンセントリック・コントラクション(短縮性筋収縮)」と「エキセントリック・コントラクション(伸張性筋収縮)」という2つの種類の収縮があります。下記ではそれぞれについて説明していきます。
「コンセントリック」とは?
前述の例と同じで、手にダンベルを持ち、肘を伸ばした状態から、徐々に肘を曲げていくような動作から考えてみます。
そうしてダンベルを持ち上げ、肘を曲げていく際には、腕の表側にある「上腕二頭筋」が収縮し、筋力を発揮して、骨を引っ張っています。
その時、上腕二頭筋が発揮している筋力は、ちょうどダンベルの重さと釣り合っており、肘を曲げると筋肉が縮み、肘を伸ばすと筋肉が伸ばされ、関節の動きに伴って筋肉の収縮度合いが変わっています。
すなわち動作間で筋肉の長さも変わっており、特にこの収縮では、そうして筋肉を収縮して筋力を発揮する時、筋肉が短くなっています。そのような収縮の事を「コンセントリック・コントラクション(短縮性筋収縮)」と言います。これは前述のアイソトニックに関する説明と同じですね。
尚、一般的な「筋力トレーニング(いわゆる筋トレ)」では、殆どの方法でこの「コンセントリック」を利用しています。よってコンセントリックは、「最もオーソドックスな筋肉の収縮の仕方」と言えると思います。
「コンセントリック」を利用したトレーニングを行うメリット・デメリット
このコンセトリックを利用したトレーニングを行うメリットとして考えられるのは、
・関節を動かす際、筋肉を収縮させ、そのまま筋力を発揮させるだけで良いので、動作自体は簡単。どのように関節を動かせば、どこの筋肉が収縮するかという事さえ分かっていれば良い。
・筋肉を動かすので、動作間で血流が止まる事がない。
・筋肉に対して、今の自分の筋力以上、あるいは今の自分の体重以上の負荷(ストレス)を与える事ができる。それにより筋肥大を起こす事ができる。
・最大筋力に近い重量を用いる事で、最大筋力の向上も狙える。ただしこの場合には筋肥大は起こりにくくなる。
・逆に小さな重量を用い、素早い収縮を意識して行う事で、筋肉の収縮スピードを高める事もできる。ただし筋肥大は起こりにくくなる。
・小さな重量を用いて、やや緩やかに筋肉を動かす事で、筋持久力を高めるトレーニングにもなる。ただし筋肥大は起こりにくい。
などになります。
特にこのコンセントリックでは、ダンベルやバーベルを利用する事で、今の自分の筋力以上の負荷(ストレス)を与える事ができます。つまりコンセントリックは「筋肥大を目的とするトレーニング」に適していると言えます。
一方、敢えて扱う重量を抑えたり、筋肉の収縮のスピードを変える事では、例えば筋肉の収縮スピードを高めたり、筋持久力を高めるなど、「筋肥大以外を目的とするトレーニング」を行う事もできます。
あるいはコンセントリックだけをピンポイントで起こす事ができるなら、複数の筋肉を連動させたり、実際のスポーツに近い動作を取り入れて行う事もでき、このように「応用が効く」というのもコンセントリックの特徴と言えると思います。
ちなみにですが、コンセントリックを利用したトレーニングのデメリットを考えてみると、
・筋肥大を狙うには大きな重量が必要。しかしあまりに重量が大きすぎると、今度は筋肥大が起こりにくくなる上、アイソメトリックになってしまう。
・場合によっては小さな重量が必要になる。ただしその場合、脱力しやすいため、筋肉の収縮の仕方を意識しなければ、行う意味すらなくなってしまう。
・ダンベルやバーベルの重さによって、要求される筋力は大きく変わる。目的に合わせ、重量は「最適なもの」に設定しなければならない。重量が適切でなければトレーニング効果はなくなってしまう。
・筋肥大の場合、基本的にはダンベルやバーベルが必要になる。中にはダンベルやバーベルだけでは鍛える事が難しい筋肉もあり、マシントレーニングが必要になる。
などが挙げられます。
このようにデメリットはあってないようなものですが、特に重要なのは「目的に応じた負荷の設定」、すなわち筋肥大なら筋肥大、筋肥大以外なら筋肥大・・・というように、それぞれに合った重量を設定する必要があるという事です。それに関しては初心者にとってはやや難しいと感じるかもしれません。
「エキセントリック」とは?
エキセントリックは前述のコンセントリックとは異なり、やや特殊な収縮の仕方になります。
まず簡単に表現すると、「エキセントリック・コントラクション(伸長性筋収縮)」とは、「筋肉が伸ばされる時に筋力を発揮する収縮」の事です。しかし前述の例のように、単に力コブを作った状態から肘を伸ばしていくだけでは、エキセントリックにおける真のメリットは得られません。
例えば右の肘を曲げて力コブを作り、左手で右手首を、小指側が上になるようにして掴みます。その状態から、左手を使って「右肘を伸ばす」ようにして、前へ押していきますが、力コブを作っている右腕は、その左手の押す力に抵抗するようにして耐えます。
この時、両手の力を上手く調節して、一旦、右腕の耐える力と左手の押す力をちょうど釣り合うようにしたら、「左手の押す力にギリギリ負ける」ようにして、右腕の力を少しずつ弱めていきます。
すると、左手によって少しずつ右肘が伸ばされていき、最終的には右の肘が左手によって完全に伸ばされる事になります。
特にこのような動作を行う時、右腕の表側にある上腕二頭筋は、伸ばされていっているにも関わらず、筋肉が収縮して筋力を発揮していますね。つまり前述した「筋肉が伸ばされながら収縮して筋力を発揮している」状態になっており、この収縮こそが「エキセントリック・コントラクション(伸張性収縮)」になります。
「エキセントリック」を利用したトレーニングとは?
では、このエキセントリックを利用したトレーニングの例について簡単に説明していきます。
前述したコンセントリックを利用したトレーニングでは、通常、筋肉を収縮させ、大きな筋力を発揮した後、筋肉を伸ばして脱力していきます。つまり、例えば腕の表側にある上腕二頭筋を鍛える「アームカール」というトレーニングであれば、肘を曲げてダンベルを持ち上げた後、肘を伸ばして脱力していきます。
特にそうして筋肉が伸ばされていく時、「ダンベルなどの重さに対して抵抗するように、少しずつ伸ばされていく」ようにします。つまりいきなり筋肉を脱力せずに、やや緩やかに戻すようにする訳です。実はこのようにして行うだけで、通常のトレーニングでもエキセントリックを起こさせる事ができます。
尚、この「やや緩やかに伸ばす(戻す)」という運動自体は、別に特殊な運動ではありません。むしろ筋トレに慣れている人ほど当たり前の事です。しかしそれを「エキセントリック」と意識して行うかどうかは、大きな違いがあります。
特にポイントとなるのは、そのように「負荷に耐える」という事です。つまり軽い重量の負荷に耐えてもあまり意味がないので、エキセントリックを起こさせるには、それなりに大きな重量が必要になります。「単にゆっくりと伸ばす(戻す)」だけではダメという事です。
ちなみに敢えて「筋肉を収縮させた状態から動作を始める」ように行う事で、エキセントリックだけを利用してトレーニングを行う事もできます。例えばアームカールであれば、大きな重量のダンベルを持ち、肘を曲げた状態から始めて、肘をゆっくり伸ばしていくようにする訳ですね。
特にそのようにエキセントリックだけを利用するトレーニングの事を「エキセントリック・トレーニング」と言います。俗には「ネガティブ・トレーニング」などとも呼ばれます。一般的な筋トレで利用される「コンセントリック」とは収縮の仕方が異なるので、そうして区別されて呼ばれる事が多いです。
「エキセントリック」を利用したトレーニングを行うメリット
このエキセントリックを利用したトレーニングを行うメリットとしては、
・筋肉を動かすため、動作間で血流が止まる事がない。
・筋肉を縮ませる時だけでなく、筋肉が伸ばされる時にもストレスを与える事ができ、短時間で効率的なトレーニングが可能になる。
・筋肉に対して、普段とは異なる刺激、異なるストレスを与える事ができる。また方法にもよるが、コンセントリックよりも大きなストレスを与える事ができる。
・同じトレーニング種目であっても「別種のトレーニング」として行う事ができ、バリエーションが増える。
・「筋肉が伸ばされる」ようなストレスに慣れておく事ができる。怪我の予防にも繋がる可能性がある。
などの事が考えられます。
特にこれらの中で重要なのは、筋肉を縮ませる際にも伸ばす際にもストレスを与える事ができ、「トレーニング効率が大きく向上する」という事です。よく「私は筋肉がつきにくい体質で・・・」という事を言う人がいますが、「比較的大きな重量を用いて、やや緩やかに戻す(エキセントリック)」という事を意識するだけで大きく変わります。
また筋肉がいわゆる「肉離れ」を起こすきっかけの多くは、「意図しないエキセントリックが起こる事」と言われています。これはイメージしてみると分かりやすいと思います。全力で力を入れている筋肉が、いきなり予期せぬ強い力で引き伸ばされたらどうなるのかを・・・その筋肉は縦や横に激しく切れてしまうでしょう。
つまりエキセントリックを意識的に行って、普段からエキセントリックによるストレスに慣れておく事で、そのように不意に起こるエキセントリックによるストレスを軽減できる可能性があります。まぁそれでも肉離れをする時はするので完全な予防にはなりませんが、行う意味は大いにあります。
ちなみにエキセントリックだけを起こさせる「エキセントリック・トレーニング」の場合、例えば「バック・エクステンション(いわゆる背筋動作)」で考えると、足を固定して膝立ちの状態から始め、誰かに後ろから肩を押してもらい、それに耐えながらも、最終的には負けてうつ伏せになる・・・というような感じになります。
つまり何が言いたいのかというと、このように「伸ばされながら結果として負ける」という理屈さえ分かってしまえば、既存のあらゆるトレーニング法を「エキセントリック・トレーニング」にし、別種のトレーニングとして行う事ができるという事です。この工夫、意外にトレーニングを長年続けている人でも知らなかったりします。オススメです。
「エキセントリック」を利用したトレーニングを行うデメリット
一方、エキセントリックを利用したトレーニングを行うデメリットとしては・・・、
・扱う重量はそれなりに大きな物が必要になる。小さな負荷ではエキセントリックを意識してもあまり意味がない。
・コンセントリックよりも筋肉に与えるダメージが大きい。扱う重量が大きい場合、トレーニング後の休養・回復を十分に行う必要がある。そのため高頻度にはできない。
・特にエキセントリックのみを起こさせるようなトレーニングで、大きな重量を扱う場合、トレーニング中の怪我のリスクも高くなる。
・扱う重量が大きくなれば、高い集中力が要求される。なるべくパートナーがいた方が良い。
などの事が考えられます。
このようにエキセントリックは筋肉に与えるストレスが大きいため、大きな重量を扱う場合、かなりの注意が必要になります。
特にエキセントリックだけを起こす高重量の「エキセントリック・トレーニング」においては、反復回数・セット数・頻度などを少なめに調節したり、誰かに補助してもらいながら行ったり、行ったら休養を十分に取ると良いでしょう。以前のままトレーニング量だけを増やすべきではありません。
今回はこれで以上になります。何かのお役に立てれば幸いです。
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