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さらば素数

43歳が去った。
44歳がやってきた。

簡単に言えば、一つ歳をとった。私自身何も変わっていないのに、年齢だけを重ね続けている。時は無情であり、残酷だ。とはいえ特に感慨深いとも切ないとも思っておらず、43年間元気に生きられたことに感謝している。

誕生日だからといって、特にやりたいこともなく欲しいものもない。「今日はどうする?」と聞かれても、「そうだねぇ」としか返答ができない自分に寂しさを覚えつつ、「欲しいものは?」と聞かれて「老眼鏡かリーディンググラスかな」と答える自分に老いを感じた。

それじゃあ、とメガネ屋に行こうということになった。せっかくだからと、もうすぐ閉店を迎える福岡市西区にあるマリノアシティ福岡に足を伸ばすことにした。

ごらんよ青い飲み物、これが青い夏だよ

マリノアシティ福岡は24年の歴史に幕を閉じる。
開業は2000年。ちょうど私が二十歳になった歳で、仕事を始めた歳でもある。夫ともよくデートに出かけた場所。子どもを連れて出かけるにもちょうどよく、思い出がたくさんある場所だ。

そんな場所がなくなってしまうというのは、なんだか寂しくもある。

マリノアシティには観覧車がある。誕生月には、2周回ることができるので、家族の誰かが誕生月になると意味もなく観覧車に乗って2周回っていた。その日は私の誕生日だったけど、観覧車には乗らなかった。カップルでもなく、子どもが小さくもなければ、我が家では観覧車に乗ろうという話にはならない。観覧車に乗ってたよね、と言いながら、下から観覧車を眺めた。青い空に青い観覧車がよく映える。

かつてマリノアシティには、もう一基観覧車があった。日本一と言われる大きさで、一周20分かかる代物だった。私も結婚する前に夫と乗ったが、かなり高い位置まで登るので緊張した覚えがある。全台エアコン完備で、寒い冬の日に行列に並んで乗った。食べ物を持ち込んで乗って、ゆっくりと展望を楽しみながら会話を楽しむ観覧車という印象だ。その観覧車は、数年で撤去されてしまったけれど、一つの商業施設に大きな観覧車と小さな観覧車が並んでいたのは、今思えば不思議な光景だった気がする。

結局、老眼鏡もリーディンググラスも買わずに帰ってきた。ここにはあのお店があったよねとか、機関車トーマスの乗り物に小さい頃は必ず乗ってたよね、とか。あのお店では何を買ったんだったけ、とか。閉店セールをしているお店に入っては、そこそこで思い出を語って帰ってきた。

数年後には新しい商業施設が開業する計画もあるとか。

帰宅後、すぐにビールを開ける。
ドンキがクラフトビールを販売していたので、興味本位で買ってみた。

四種類あったので、全部買って、ピンクを飲んでみる。

なんか爽やかな感じ。注いだ時の濁りがザ・クラフトビール! 普通に美味しかった。

今日は誕生日だし、と自分の食べたいものを食べたいだけ作る。作るのがめんどくさいから外食でもいいんだけど、お金もかかるし案外自分で作った方が自分好みのものができるので、楽しめたりもする。

エビとキノコのアヒージョにチーズフォンデュ。ぶりの刺身とサラダ。これ以外にも豆腐とアボカドとゴーヤチャンプルー。家だからできるラインナップ。作りながら飲めるのもいい。テーブルに料理が並ぶ頃には、すでに私のお腹はいっぱいになっていた。

次の素数は47歳。

なぜか素数の年齢になると嬉しくなる。特別感があるからだろうか。特別な人になりたいのかもしれない。陳腐な願望だな、と思う。普通だからこその幸せを知りつつ、何か違う人生に憧れたいというわがままは、まだ精神が成熟していないから湧く願望のような気がしてならない。もう少し大人になりたいと思いながらも、まだ気持ちだけは子どものままでいたいような気もしている。





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