11月4日のはじまり
薄手のスウェットに、薄手のジャンバーがちょうどいい季節になった。
外に出ると、頬に冷たい風が当たる。少しひんやりとして、心地いい。鼻から息を吸うとツンとして、肺が冷たい空気でいっぱいになる。
先日の大雨で、金木犀の花が散っていた。
道路にはオレンジ色の花びらがぎゅっと集まって、あてもなく佇んでいる。そういえば、今年は金木犀が二度咲いていた。10月のはじめと、10月のおわり。
最初の金木犀は、どこに花が咲いているのかがわからないくらいささやかで、終わりの金木犀は、しっかりと存在をアピールするかのように咲いていた。暑かったり寒かったり、人間だけじゃなくて、植物も体調を崩すよなぁなんて思う。おかげで、野菜も米も高いわけだし。
休日の朝の散歩は、静かでいい。
人もほとんど歩いていないし、車も少ない。7時台になると、少し賑わってくるけど、6時台は街を独り占めしているような気分にもなる。空は明るくて、でも東の空は少しだけ赤い。
何だか得をした気持ちになる。
ぴいぴい、ちちち、と甲高い声で鳥が鳴く。
姿は見えないけれど、いろんなところで鳥の鳴き声が聞こえていて、心地よい。川沿いに行けば、水の音もする。平日の喧騒はどこ吹く風で、私は、ものすごく田舎に住んでいるのかもしれないと錯覚する。時折、カラスの鳴き声がガァガァと聞こえてきて、なるほど、カラスが嫌われ者になる理由もわかる気がすると思った。あまり美しい鳴き声ではない。カラスにとっては、あずかり知らぬ話かもしれないけれど。
長く歩くと、ジャンバーの中がほてってくる。今日も暑くなるのかな、と空を見上げると、秋らしい淡い空色が広がっていた。
さて、今日は何をしよう。
まずは、昨日安売りをしていた特大ホームランでも打てそうな198円の大きな大根を、なんとかしないといけない。