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認知症の母のメガネ

母は認知症になってから、たまにメガネのことで荒れる日があります。

ここ1年くらいは少しくらい荒れてもこちらが優しく接していると、そんなことを思ったことすら忘れるので、数時間もすると落ち着いていました。

ところが先日、このメガネのことで母が大荒れしたのです。

始まりはいつものように「これは自分のメガネじゃない!全然見えない!」から。
その日私は用事があって、出かける時間が迫っているのにメガネのことをグズグズ言う母にイライラしていました。
それでつい「90歳にもなれば目だって見えなくなってくるし、メガネも合わなくなってるんでしょ!もしかしたら白内障とかかもしれないし、今度お医者さんとメガネ屋さんに連れて行くから!」と、きつく言ってしまったのです。

すると今までかけていたメガネを私の方に投げ、捨て台詞のような言葉を投げかけて自分の部屋に戻っていきました。

たいていは数時間もすれば全部忘れて何事もなかったようになるのですが、今回は何日も続きました。

さすがにメガネがないとテレビもよく見えないので取りには来るのですが、数時間もすると「自分のじゃない!誰かが隠した!」と大騒ぎ。
挙句に、メガネ屋や医者に行こうと言うと泣きまねもしたりするようになって、家族みんな本当に滅入っていました。

ところが・・・です。
意外なところから今回の大荒れは落ち着きました。

ある時、母が置いていったメガネを何気なくかけてみたのです。
すとどうでしょう!
手垢だらけで、物が歪んで見えるではありませんか!!
なんだ、ただそれだけだったんだ。。
母はもう、そんなことにも考えが及ばなくなっているのです。

その後も何度か「自分のじゃない!」とか、青いメガネなんて持っていないのに「自分のはもっと青い!」とか「誰かが意地悪して隠した!」などと言いに来ましたが「うちに意地悪な人なんて誰もいませんよ~。」と優しく言いながら洗ってあげると、そのまま戻ってこなくなり、時々洗ってあげているからか、そのうちメガネのことを言いに来ることもなくなりました。

今回のことでは、やはりこちらがきつい言い方をするとその記憶は残ってしまうんだなぁと反省しました。

それ以降は名女優に徹して、優し~く優し~く接していますが、これが母のことが大好きだったとしたら耐えられなかっただろうな。。。

これは、よかったのか悪かったのか・・・

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