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煩悩の取り扱い方

 今日は煩悩の役割についてのお話をシェアしたいと思います。煩悩と聞くと良くないイメージがありますが、扱い方によっては宝になる大事なもの。では、どんなふうに扱ったらよいのでしょうか。数ある煩悩の中から、身近なものを例として挙げてみますので、取り扱ってみましょう。

「あの人と出会わなければこんなに苦しまなかったのに」
「あの出来事がわたしの人生を狂わせた」
「職場や学校や家庭の環境がいけない」
「なんでわたしばかりこんな目にあうんだ」

普段は口にはしないけど、実は腹の奥底にひそんでいませんか?
誰もが1度は思ったことのある、こんな思い。これは一般的には被害者意識と言われ、煩悩の一つです。
 ひどい目にあったのだから当然な感情です。つらいですよね。何がつらいのかと言うと、この感情を持ちつづけ、感じつづけることがつらいのです。さらに、こんな嫌な感情を抱いている自分を責めはじめると、つらさ倍増!本当の自分はこんな人間じゃないのに、と。でもこの感情を握りしめているのは自分なので、どこへ行っても誰といても、どこまでもついてきます。

被害者意識


孤独が安心になっていく

 自分は被害にあったんだ、そんな自分はかわいそうなんだ、だから謝ってもらわなければ気が済まない、正論で相手を論破したい、被害者の自分は楽しいことをして喜んではいけない、だからいつも落ち込んでいなければ、喜び・楽しさを感じてはいけない、といった思考が数珠つなぎになって現われ、捉われ、自分の心を苦しめつづけることになります。自我による孤立した在り方へと進んでしまいます。

頓・瞋・痴

 懺悔文(さんげもん)の中に出てくる「頓(とん)・瞋(じん)・痴(ち)」。これは三毒と呼ばれるもので、煩悩をざっくり分けるとこの3つに分けられるよ、というものです。

頓(とん):むさぼる心、欲 *承認欲求や食欲など
瞋(じん):怒り *かなしみもここに分類されます
痴(ち):愚かさ *すべては自分の身と口と心から生じたもの

 今回のテーマの被害者意識という煩悩は、頓(とん)の要素と、瞋(じん)の要素が大きく、「もっと自分をわかってほしい」「自分を大事にしてほしい」という欲、「自分の思い通りの反応をくれなかった相手に怒る」「そんな思いを表現できずに黙って拗ねる」「傷ついた様子を常に演じる」という怒りの思いや行為は、煩悩ということになります。

大事なのはそこから!


 
でも、残念に思うことはありません。お釈迦様はこんなことをおっしゃっています。

生れによって賤しい人となるのではない。生れによってバラモンとなるのではない。行為によって賤しい人ともなり、行為によってバラモンとなる。

バラモンとは、インドの聖職者のこと。人の尊さは、生まれた家ではなく、その人の行為によって決まるのだという意味です。たとえ貧しい家に生まれて、思い通りではない人生を与えられたとしても、悔しい思いをしても、そこでどんな生き方を選び実行するのかが重要なのだと。


人生の分かれ道

 
今回の話で言えば、被害にあって、人生台無しになって、傷ついた自分が、そんな目にあった自分が、この自分が、
じゃあ、ここからどうする!どう生きる!
と発想を転換して、行動していく、ということが大事だということになります。拗ねて閉じていくのか、傷ついた経験を受け入れ、認め、癒し、そこから心新たに生まれ変わる思いで立ち上がっていくのか。人生の価値は行為によって決まるのなら、後者の方が豊かにひらけた人生につながりそうです。  
 
 傷ついて初めて知るかなしさ、だからこそ生まれるやさしさを携えて、人と、自分と、新しく出会い直していく。これを慈悲といいます。傷ついて被害者として生きる人生にケリをつけて、人は皆同じようにこころに傷を持って生きているものなんだと、慈悲心を持って行動し、生きていく。例えれば、新しい人生に生まれ変わるような大きな覚悟が必要ですが、これが自分の人生を大事に生きる、ひいては人の人生も大事に生きるということにつながっていきます。仏の世界の入り口ですね~。

新しい道をつくっていく

煩悩即菩提

 そうです。煩悩は即ち菩提(ぼだい:悟りのこと)。煩悩=悟りなんですね!頓(とん)・瞋(じん)・痴(ち)の煩悩を感じないようにすることではなく、それらを認め受け入れて活かしていくことを修行といいますが、そうやって自分の人生の道を自分で一歩一歩作り上げていく過程が、もうすでに悟りの道。もう悟りの道の上にいるのです。煩悩=悟り。見ないようにするのではなく、大事に拾い上げてあげるとたちまち宝に変わります。どうせ生きていくなら、やさしい気持ちで喜びと共に生きていきたいですよね。

 過去を後悔したり、人のせいにしたりするのではなく、怒りの裏にあるかなしみを見つめ、その時の自分の傷に寄り添い、自分の人生を受け入れ、新しく目を上げ、目の前の人の心にも寄り添いながら毎日を大切にすること。身の回りの人とのつながりや関係そのものが仏の世界に変わっていくと、縁も豊かに巡っていくようになります。

 他にも人間はいろーんな煩悩を持っています。生きずらいな、なにかが苦しいな、そんな風に感じたら煩悩をつかまえるチャンス!つかまえたら、よく見て確かめて、素直に受け取り、そんな自分がどう生きようかと作戦を立ててみてください。煩悩の数だけ悟りの道がひらけます。なんだか煩悩がありがたく感じてくるのは私だけでしょうか!?悟りへの道しるべである煩悩に感謝です。

生活に活かす仏教講座

 今日のお話は、仏教講座の一部です。そもそもの仏の世界の考え方や、言葉の意味などを基本的に学びつつ、それぞれの個人の学びをワークを通して深めていきます。少人数ですが、参加者同士で疑問や感想をシェアしたりするのも気づきになります。今年最後の仏教講座の日程は

①10月11日(金)18時
②10月25日(金)18時
③11月8日(金)18時

の3回コースとなっています。ご予約は、3回とも出席できるようご都合をご確認のうえお問い合わせください。みんなで楽に日常を生きる学びをシェアできたらうれしいです。他の講座でも、寺子屋にお越しいただいた時に、みなさんの煩悩トークを聞けるのを楽しみにしています^-^

お問い合わせは寺子屋さらんホームページよりお気軽にどうぞ!


 


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