読書感想文:『狂狗集 Mad Dog Riprap』
今日は朝からどんよりとした天気で、頭がズキズキ。よく寝たはずなのに眠気が取れない散々な一日です・・・
こんな日はサクッと読める作品がいいですね。
表題の『狂狗集 Mad Dog Riprap』(菅啓次郎 左右社 2019)は、つい数日前に買ったばかりの詩集(句集?)です。Amazonで注文したら翌日にはもう届きました。Amazonすごい(今更)。
スミマセン。本題に戻りましょう。
著者の菅啓次郎さんは、詩人であり、明治大学で教鞭をとっている比較文学者でもあります。大学時代にネイティブアメリカンの文化について調べていた時に、菅啓次郎さんと漫画家の小池桂一さんによる『野生哲学ーアメリカ・インディアンに学ぶ』(講談社 2011)という本を読んだことが、菅さんを知ったきっかけです。(ちなみにこの本もおすすめです!巻末ではナバホの創世神話がマンガで描かれており、面白く読めます。)
何よりもまず!この本の装丁がいい!
イラストなし。 ザ・厚紙色なグレーの表紙。 天アンカットの素朴な表情。 手のひらに収まるサイズ。 無駄という無駄を排除したシンプルこの上ない見た目なのに、不思議と見ごたえがある・・・。サイズ感もなんかカワイイ。この簡素な装丁のおかげで本の内容への先入観なく、個々の句のイメージに沈むことができるように思えます。
本を開くと、見開きに六つの句がきちんと並んでいます。ページ数も多くないので、すぐに読み終わる長さの作品です。さらっと通読するもよし、一つの句をじっくり味わうもよし。「???」となるものもあれば、写真のようなものもある。クスッとなるものもあれば、なつかしい気持ちになるものもある。その日の気分に刺さるものもあれば、そうでないものもある。
私は職場にいつもこの本を持って行って休憩時間に読んでいますが、毎回新鮮な気持ちになります。昨日の印象が今日は違っていて、自分が日々刻刻と変化していると感じます。ちなみに私は好きなページを開いて最初に目にとびこんできた句を、「今日の一句」と勝手に題して読んで楽しんでいます・・・。ビブリオマンシーってやつです。
ところで英題にある"riprap"ってなんだ?ラップの一種?調べてみたところ、"riprap"とは、防波堤の基礎を作るために使用される「捨石」のことだそう。これに関して、巻末の「あとがき」にある菅啓次郎さんの言葉が印象的でしたので引用させていただきます。
英語題名にはriprapを充てた。護岸工事などのために投げ込まれる捨石のことです。ぼくのイメージにあるのはモンタナ州あたりの標高の高い湖の岸辺に投入され、水面下に続く法面をなしているような石たち。自然物のかけらをもって人工/自然の境界を画す。(93)
そこらへんに転がってる石は自然物にカテゴライズされる。しかし、人の手によって配置されると人工物の性質を付与される。石それ自体は変わっていないのに、「意味」は変わっている。もっと言えば、その「意味」を与える「私たち」が変わっている。
この作品に対する私の読書態度を踏まえると、タイトルに"riprap"を充てたことが腑に落ちた気がします。
上手く言えないけど、「変化」って捉えどころのない曖昧なもので、深く考えてると頭痛くなってくるけど、けっこう大事なテーマですよね!!(唐突)
ここまで読んでくださりありがとうございます。雑なオチで申し訳ないです。
出典: 菅啓次郎『狂狗集 Mad Dog Riprap』左右社 2019
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