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『雨が、そして太陽が…』
仰向けになったコガネムシをひっくり返すのが夏の主な仕事であった。
気づけばすっかり秋に。今度はハチの動きが活発になり、お寺の中に迷い込んだ彼らを虫網で捉えて庭に逃がす毎日。
季節が変われば仕事も変わる。自然の成り行き。
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ふと思い出す。
大学に入学し、はじめて読まされたテキストがフランクルの『それでも人生にイエスと言う』だった。
悩むことだけは一丁前な少年。自己啓発を連想させるタイトルや極めて共感しにくい内容から忌避感を覚えていたような気がする。
しかし時は数年経ち、あの著作の持つポジティブなエネルギーがまさに今、身体中を駆け巡っている。
どんな時であれ、置かれた状況の中で最善を尽くすことの素晴らしさがここにはある。
デヴィッド・グレーバーのアナキズム、アメリカ心理学における「レジリエンス」の研究、あるいはカミュの諸作、それらが全てフランクルの元で統合されていく。
足先から「それでもなお」というポジティブなエネルギーが上昇していく。
揺らぎを含んだその波は、こめかみを強く締め付ける車輪である。
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今の土地では数多くの出会いがあり、別れがあった。
それらはあまりに素晴らしく故にコミカルでさえあった。
人と人は出会うべき最適なタイミングで邂逅を遂げる。
過去を振り返る時、そう解釈する以外なにができるだろう。
全ては宿命であり、それは自らの行動を経て現象となる。
雨に濡れた地面が太陽に照らされやがて固まるように。
一年の間に幾度となく繰り返される…
どうやらここに来るべきだったようだ。
そして、これから赴く場所もすでに決まっているらしい。
呼ばれている、そんな感覚がある。
あとは身体を動かすのみである。
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