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友とキルギスと参鶏湯

先日、大学からの長い付き合いの友人に会った。

新大久保の参鶏湯サムゲタン専門店。
人が少なくて静かで、落ち着く店だ。

久しぶりの再会に話が弾む。

その友人は私より一つ年上で、いつも穏やかで優しいが、少々ぶっ飛んだところがある。

ざっくり言うと、放浪癖があって、どこにでも行ってしまうのだ。 


遡ること大学時代、彼女は一人でヨーロッパに行った。


女一人で何のツアーにも参加せずヨーロッパに行くこと自体すごいのだが、彼女はユーロスターだかなんだか、国を横断する高速鉄道に乗り遅れてしまう。

予約必須の列車である。
そう簡単に一本遅らすなんてできないし、そもそも友人は現地の言葉を喋れない。

予定がおじゃんになり、一人途方に暮れていた友人は、日本人の女性に偶然出会う。



そして、その女性が世話になっているという、イタリア人のおじさんの家に連れていかれる。


そのイタリア人のおじさんは、日本かぶれの変人で、庭には自作の鳥居(…鳥居というにはお粗末なものだったそうだが)があり、おじさんは「ここは神社なんだ!」と言い張った。

そして、畳でも何でもない、ただの板張りの部屋を「ここは茶室なんだ!」と言い張った。


もう、どこからツッコめばいいのかわからないが、とりあえず知らない人について行ってはいけない。


また、イラクだったかイランだったか忘れたが、とにかく誰もが「そこは危ないっしょ!?」という国に行ってくると言い出し、友達全員から止められたりしていた。


そんな、アクティブでたくましい友人。






丸鶏一羽しっかりと煮込まれた、本格的な参鶏湯が運ばれてくると、鶏の骨をのぞくのに忙しくなり会話は自然とペースダウンする。
カニを食べるのと同じくらい真剣だ。

こっくりと白いスープは滋味深く、疲れた身体に染み込んでいく。

しかし、私がその美味しさにしみじみしているところに、思った通りというか、いつも通り彼女はぶっ込んできた。


「ほらさ、私、去年キルギス行ったじゃん」


いやいや、行ったじゃんって、聞いてないよ。


てか、そもそも


キルギスって…どこ?!笑




これがもし「ほら、わたしフランス行ったじゃん?」だったら嫌味っぽく聞こえるが、まさかのキルギスである。



これをお読みいただいてる皆様の一体何人が、キルギスの位置を正確にご存知だろうか。


キルギスは中央アジアに位置する国。日本からは飛行機を乗り継いで20時間ほどだ。

日頃から東京で発掘調査の仕事をしている彼女は、発掘のボランティアでキルギスに行ったというのだ。しかも一カ月も。


まあ、もちろん団体旅行だし、発掘に明け暮れただけの、危険な要素ゼロの旅だったというが、そんな遠い国に一カ月も行くなんて、相変わらずである。



私はここぞとばかりに、友人に色々と質問した。

中央アジアと聞くと、大陸の真ん中!どこまでも続く地平線!みたいなイメージがあるが、キルギスはとにかく山が多いそうだ。



見せてもらったキルギスの写真は、確かに青々とした木々が美しい。高い山と壮大な風景から、キルギスは「中央アジアのスイス」と呼ばれているとか。
「那須高原の小さなスイス」と呼ばれる、りんどう湖ファミリー牧場といい勝負だろうか。


また、キルギス人の顔立ちは、とても日本人に似ているそうだ。祖先が同じなのではないかと言われるぐらい似ているらしい。


そして、私が一番気になるのは食文化だったが、友人曰く、キルギス料理はとても美味しかったそうだ。 


海がないから魚より肉がメイン。イスラム教徒が多いので、特に牛や羊を食べる。

さすがに肉ばかりの食事は飽きたと言っていたが、それ以外は特に不満もなかったらしい。



(私としてはゲテモノを食べたとか不味かったとかを期待していたので、拍子抜けした。笑)




話を聞き終わる頃には、参鶏湯のおかげなのか、旅の話に興奮したからなのか、心も体もポカポカになった。


相変わらず、我が道を行く友人。そんな彼女と友達でいれることを誇らしく思った。


今度は彼女はどこにいくのだろうか。
楽しみである。



次回予告


次回は、


「友人に触発されて、キルギス料理のラグマンを作ってみた!!!」


を、お届けします。お楽しみに!












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