大根と 名俳優と ドラえもん
ドラえもんの声を演じた大山のぶ代さんが亡くなられた。
90歳だったという。
ああそうか、そんなに時が経ってしまったんだとしんみりする。
私はのぶ代ドラで育った世代。じつは子供の頃からずっとドラえもんが好きだった。
毎週のテレビ放映はもちろんのこと、映画も全て観てきた。
映画のドラえもんは名作揃いだけど、特に昔の作品は子どもながらにゾクッとするような内容が多く、伏線が回収されるストーリーもワクワクした。
中でも、私が一番好きなのは「のび太の日本誕生」という作品だ。
ドラえもんとのび太たちが七万年前の日本を舞台に、ギガゾンビ(通信料オバケではない)と名乗る敵と闘う物語だ。
詳しいあらすじはこちら↓
この映画、ストーリーも素晴らしいのだけど私の1番印象に残っているのが大根である。
大根といってもただの大根ではない。
劇中に出てくるひみつ道具の一つに「畑のレストラン」というのがある。
植物の種のように土に蒔いて、育てると大きな大根がなる。大根を二つに割ると中にはカツ丼やどら焼きなど、色んな料理が入っているのだ。
スネ夫は最初そのことを知らなかったので「これのどこがカツ丼なのさ」と戸惑う。
スネ夫「大根はね、佃煮にはならないんだよ?ボク、大根大嫌いなんだ!」
このスネ夫のセリフがもうね、大人になってから聞くとじわじわくる。
大根が大嫌いというのが珍しいし、その理由が「大根は佃煮にはならない」というのも小学五年生にしては渋すぎやしないか。笑
そして、ごはんの時間。
大根をパカっと開けるとホカホカのカツ丼にカレーライス。
ああ、なんておいしそうなんだ〜〜!!!
子供の頃、この食事の場面が大好きだった。
こんな大根があったらいいのにと本気で思っていた。
しかも後から来たのび太は、ホントにただの大根だと思って丸ごとかじっている。
のび太「おいしいねぇ、この大根!」
ニコニコしながら大根をかじるのび太にどれだけ癒されただろう。なんて幸せな映画だ。
…と、ここまで書きかけて、ニュースで西田敏行さんの訃報を知る。
私の故郷、福島の出身であり、その名演技や探偵ナイトスクープの局長としても愛されていた。
じつは、この日本誕生のエンディングテーマ「時の旅人」を歌っていたのも西田さんなのだ。
あらためてこの曲を聞くと、西田さんの優しい歌声が心に沁みて涙が出る。
そして、何度も繰り返しこの映画を見ていた子どもの頃の自分に戻ったような感覚になった。純粋にアニメの中に入り込めた、あの頃の自分。
のぶ代さんに、西田さんに。わたしの子ども時代を支えてくださった方々が旅立たれたのは悲しいけど、感謝の気持ちでいっぱいでもある。
…で、人間とはしょーもないもので泣いても腹がへる。
名優たちの前で失礼だか、ちょうど大根があるし何か作るかと腰を上げた。
…スマホで試しに調べてみる。
「大根 佃煮」
大根、佃煮になるやないか…!!!
めっちゃレシピあるやないか…!
思わずスネ夫につっこんでしまった。