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ストレスフルな社会に、伊勢うどんの優しさを

大学を卒業して、新卒で入社したのは伊勢の会社でした。

縁もゆかりもない、三重の辺境の地。
もちろん新幹線なんて通ってない。
近畿日本鉄道という、東北では見たことも聞いたこともない鉄道会社がブイブイ幅を利かせている、陸の孤島、紀伊半島。


何不自由なく育てられた甘っちょろい小娘だった当時の私にとって、自活していくにはなかなかヘビーな環境でした。

上司は厳しい人が多く、よく怒られました。
今なら、パワハラ認定、勝訴間違いなし。
でも、仕方のないことだったと思います。私がその仕事に向いてなかったんだ、と今ならわかります。



仕事で落ち込んだ時、心を慰めたのは、伊勢の海や、溢れんばかりの緑、そして伊勢神宮でした。


休みの日には、観光客にまぎれてよくお参りをしました。

参拝して気分がスッキリした後は、いつもおかげ横丁をぶらぶらしました。活気のある街並みを眺めていると、少しずつ心が元気になっていくのがわかります。


そして、欠かせないのが伊勢うどん。


釜揚げのうどんに、シンプルな薬味と、甘辛い、濃いめのタレ。

そして、なんといっても伊勢うどんの最大の特徴は、コシのない、お餅のようなふわふわとした麺です。

伊勢のとある食堂で、伊勢うどんを食べた香川県民がクレームをつけた話(なんだこのうどんは!柔らかすぎるだろ!笑)を聞いたことがありますが、

何も知らずに食べたら、確かに「何かの間違いじゃ?!」と思うくらい、柔らかい。

それは、まさに「ノンストレス」という言葉が似合います。



噛むことさえ億劫なときがあるとしたら、それは絶対に疲れているときであり、そんな時こそ伊勢うどんの柔らかさが沁みるのです。

スーパーでも手軽に買えるので、地元の方は、風邪を引いたときに食べると言っていましたが、それも納得。

伊勢うどんは、ストレスあふれる現代にピッタリの、ノンストレスうどんなのです。



そんな伊勢うどん、仕事を退職し伊勢を去ってからはあまりお目にかかる機会もなくなってしまいましたが、最近、お土産にいただきました。


しかも、新種のカレー味!
我慢できなくて、もらったその日に食べました。笑

たまごの天ぷらをのせて


いただきまーす!



うーん…沁みるぅぅう〜!
この柔らかさ、このふわふわ感、唯一無二の食感です。



さらに、20代の頃の思い出が走馬灯のように思い出されます。しょっぱい青春フィードバックです。

あの頃は辛いことも多かったけど、楽しいことや、若いからこそ出来たこともたくさんあったなぁ、、などと、しみじみ。

そして、伊勢うどんの優しさに、知らず知らず癒やされていたことに気付き、今更ながら伊勢うどんへの感謝の気持ちが溢れます。



あの頃に戻りたいかと言われたら、絶対に戻りたくないけれど(笑)、伊勢うどんが手軽に食べれたあの環境が、ちょっぴり懐かしくなりました。



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