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拍子木切りを知っていますか?

料理の先生をしていると、食材を切るとき、その切り方をどうやって説明したら良いのか、悩むことがあります。
実際に切って見本を見せることもできますが、なるべく口頭での説明で理解してほしいなと思うわけです。


野菜の切り方、といえば!

食材の切り方でみんなが知ってるものといったら「みじん切り」でしょうか。
玉ねぎのみじん切りという、とてもメジャーな例があるので、殆どの方が知っていますね。

「千切り」も、わかりやすいです。
キャベツの千切り、という、こちらもちょうど良い例があるから。

細切り、や、薄切り、も言わんとしてることはすぐ伝わります。細く切る、薄く切る、うん、わかりやすい。

しかし、くし形切りってどうでしょう。
(くし切り、とも言います。)

くし形切りは、りんごやトマトなど、球形の野菜(果物)を放射状に切る切り方です。

くし形切り


くし形のくしとは、櫛のこと。
髪をとかす道具ですね。

しかし、最近は、櫛よりコームやブラシが一般的で、特に、若い人には、櫛の形に切るんだよ、と言ってもピンと来ません。放射状に、と言うのも、わかりにくいです。

色々試して見た結果「リンゴのように切るんだよ」と言うと、イメージが湧くようで、すんなりくし形切りができます。りんごを食べる時、どう切るかは、どの家庭も一緒だからですね。

同じように悩ましい言葉として「色紙切り」があります。

にんじんなど、煮えにくいものを角切りではなく、もっと薄っぺらい正方形に切る切り方です。

色紙切り


が、色紙と言ったらサイン色紙で、あの大きさをイメージしてしまうのです。小さい色紙だよ!と言えば伝わるけれど、なんだか釈然としません。



なんて言ったら伝わる?


色々パターンを考えてみると、やはりモノに例えるといいんじゃないかと気付きます。

折り紙みたいだから「折り紙」切り?
→これじゃ色紙切りと一緒で、サイズ感がピンとこない。

紙吹雪みたいだがら、「紙吹雪」切り?
→サイズ感は合ってるけど、語呂が悪い。笑 
しかも、紙吹雪が正方形とは限らない。



結局、しっくり来る言葉が思いつかないので、「色紙のような正方形だけど、サイズは1センチ四方くらいに細かく切る切り方」と伝えています。(長いな。)


拍子木ってなに問題


しかし、色紙切りより、もっと伝えるのが難しい切り方があります。それは「拍子木切り」

大抵、拍子木ってなんだよ?という話から始まります。皆さん、拍子木、知ってますか?



拍子木とは「火の用心!マッチ一本火事のもと!」の、カンカンと鳴らすやつですね。

手に持ってるあれ↑


つまり、拍子木切りとは、直方体の棒状に切る切り方です。
味噌汁に入ってる大根なんか、よく拍子木切りになってますね。やったことのある切り方だけど、拍子木切りという言葉は知らない方も多いかもしれません。

これが拍子木切りッッ!!!



で、それをどう伝えるかです。

先程のくだりの、火の用心の話もあんまり伝わらないし、マッチ棒に例えるとサイズ感が違いすぎます。

私が考えに考えて、出した答えは


「ジェンガ切り」


どうでしょうか?ジェンガの積み木みたいな切り方だと思いませんか?

これが一番わかりやすいと私は思うのですが、なんだか恥ずかしくてまだ生徒さんの前で言ったことはありません。笑


切り方の名称もアップデート


世の中には、語源を知らない、なぜこいう言い方なのかよくわらないけど、当たり前のように使っている言葉というのがたくさんあります。

例えば「打ち合わせ」という言葉は、元は雅楽の用語で、拍子を合わせることを指していたそうです。それが、いつしか事前に話し合うという意味になりました。
よく考えてみれば、何も打たないのになんで打ち合わせ?と思いますが、何気なく使ってますよね。


それと同じように、切り方の呼び名も形骸化していくのかもしれません。
櫛形のくしが何たるかは知らないけれど、放射状に切るのがくし形切り、
拍子木なんて知らないけど、棒状に切るのが拍子木切り、というように。



時代は変わっていくので仕方ないのかもしれませんが、由来を知っていたほうが覚えやすいんじゃないかしらん、と理屈っぽい私は思ってしまいます。



ジェンガ切りはともかく(笑)、わかりやすい新しい呼び名をみんなで考えたら楽しいかも、なんて妄想する今日この頃なのでした。









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