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日本庭園のススメ① ~基礎知識~

表題写真:紫式部公園(福井県越前市、越前富士の日野山を借景)

参考資料:宮元健次 著『歴史と文化を愉しむ 日本庭園鑑賞のポイント55』
参考資料:塩 照夫 著『知られざる日本海文化の謎』



1.日本庭園の種類は3つに大別

  • 池泉(ちせん)庭園
    寝殿造庭園:平安貴族の寝殿造に付属、文献上のみで現存せず
    浄土式庭園:仏堂に付属、古くは宇治平等院や毛越寺
    書院造庭園:室町期以降に登場、江戸期以降は数寄屋造庭園として、大名庭園や宮廷庭園

  • 枯山水庭園
    禅宗思想の自然観や死生観
    流れ・池の水を用いない

  • 露地(ろじ、茶庭)
    茶室に付随する

    他、複合的な庭園もある。枯池や枯滝石組などは、やや難しい概念。
    平等院鳳凰堂については、10円玉を見てください。

2.著名な作庭家

  • 夢窓疎石(むそう そせき)
    足利尊氏側近の禅僧(石立僧)
    枯山水の名手
    京都の世界文化遺産の西芳寺(苔寺)等が著名
    東国でも作庭

  • 真相 相阿弥(しんそう そうあみ)
    越前国出身で朝倉氏から召し出され、8代足利義政(西芳寺に憧れていた)配下の同朋衆
    善阿弥(山水河原者)亡き後、銀閣寺(東山殿)の作庭を引き継ぐ

  • 古田織部(ふるた おりべ)
    利休七哲(弟子)の一人
    徳川将軍茶道指南を務めるも既成の権威を認めず後に自害
    マンガ『へうげもの』の主人公

  • 小堀遠州(こぼり えんしゅう)
    古田織部の弟子で「きれいさび」を完成
    江戸幕府作事奉行

  • 重森三玲(しげもり みれい)
    昭和の巨匠、伝統の石立と抽象モダンとが融合した枯山水

    銀閣寺は一乗谷朝倉氏遺跡と同じく三重指定。
    同朋衆とは、芸術家と「なんでも鑑定団」とアートディレクターとを兼ね合わせたもの。
    河原者とは、最下層の被差別民を指し、寺院や武家の雑用から、造園に才能を見出すものが現れた。
    「昭和の小堀遠州」こと中根金作は、足立美術館庭園(日本庭園21年連続1位)を手掛けた。
    江戸期から昭和期までの間は、私は泣く泣く端折った。

意外な造園関係者

  • 白居易(はくきょい)
    中国唐代の詩人
    『白氏文集』は『源氏物語』等の平安文学に影響を与えた
    設計した別荘も影響

  • 雪舟等楊(せっしゅう とうよう)
    日本水墨画の大成者
    山口の大内氏(戦国大名)の庇護
    中国・九州地方を中心に作庭

  • 細川高国
    室町幕府の管領を務めた戦国武将で、一乗谷にも来訪
    作品は白山平泉寺等の僻地に見られる
    私の「推し」作庭家

  • 千利休
    「茶の湯」(茶道)の大成者
    禅庭も設計(「利休好み」)
    祖父は同朋衆の田中千阿弥

  • 宮本武蔵
    剣術家
    明石城の町割り(まちづくり)や、城内の庭園

  • 進士 五十八(しんじ いそや)氏
    ランドスケープアーキテクト
    福井県立大学 前学長、福井県 元政策参与

    『源氏物語』の松風の巻に見る「桂殿」のモデルは、藤原道長の別荘(⇒江戸期に桂離宮(戦前、ドイツの建築家ブルーノ・タウトが「泣きたくなるほど美しい」))。
    一国の丞相から河原者まで、造園が受け入れる素地のおおらかさ。
    「茶禅一味」。

コラム:興聖寺 旧秀隣寺庭園(滋賀県高島市)

旧秀隣寺庭園
  • 細川高国が12代足利義晴のために作庭

  • 地元では「足利庭園」と呼ばれる

  • 朽木は歴代将軍の仮の御所だった(「朽木幕府」)

  • 銀閣寺庭園の影響を受けている

  • 三大武家庭園の一つ

旧秀隣寺庭園について、昭和の名造園家である重森三玲の逸話。
三大武家庭園として、他に一乗谷の諏訪館跡庭園が挙げられる。

コラム:『作庭記』について

  • 庭園に関する思想・技術を理論的に記述した世界最古の秘伝書

  • 現存する最古の写本

  • 成立は平安時代末期(鎌倉時代という説も)

  • 作者は、藤原頼通(道長の子、平等院鳳凰堂を建立)の次男である橘 俊綱(生没年未詳)

  • 寝殿造庭園の骨格と地割り、園地・流れ・島、滝と遣水、立石や植栽の禁忌、樹木、泉等について、現場に即して解説

    桂離宮(国内最高の庭園・建築)は藤原道長の別荘跡に造営された。松琴亭の流れ手水・飛び石。

3.日本庭園の構成要素

  • 荒磯(ありそ)、州浜(すはま)

  • 流れ、曲水(きょくすい)・遣水(やりみず)

  • 石組(いわぐみ、いしぐみ)⇒次項に詳細

  • 植栽(しょくさい)

  • 灯籠(とうろう)

  • 手水鉢(ちょうずばち)・蹲踞(つくばい)

  • 飛石(とびいし)

  • 垣(かき)、刈込(かりこみ)
    等々

コラム:石組の一例

  • 仏教思想
    須弥(しゅみ)山(妙高山)・九山八海(くせんはっかい)
    補陀落(ふだらく)山
    三尊仏・脇侍石組・礼拝(らいはい)石
    守護石

  • 神仙・蓬莱思想
    鶴・亀石組
    陰陽石
    七五三石組

  • 禅宗などの新仏教思想
    十六羅漢石
    影向(ようごう)石
    楽器石(聖衆(しょうじゅ)石)?
    座禅石

  • 風景的石組
    滝石組
    連山石組
    護岸石組

    類例はきりがないので、割愛。補陀落山は観音信仰。
    一乗谷 朝倉館跡庭園(池庭)での護岸石組の使い方。

4.福井市近隣の日本庭園での実例

(「日本庭園のススメ②」の投稿へ続く)


※記事の内容はドラフト版のため、予告なく変更される場合があります。

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