谷崎潤一郎に学ぶ東京と関西の異文化の魅力
もともとは東京生まれで長く在住していましたが、現在は大阪に住んでいます。大阪に行くことになった時には、東京の友人から大阪の危ない噂や東京と大阪の文化の違い(笑いに厳しい、粉ものばっか食べるなど)に馴染めなかった人のエピソードなどを、やたらと話された記憶があります。
実際に暮らしてみると大阪は僕にとって快適な社会であり、生まれ育った東京とは異なる文化が根付き、常に新鮮で刺激に溢れる毎日を過ごさせてくれる魅力的な街でした。今でも関西暮らしは快適そのものです。
この様に「行かない方がいい」というようなニュアンスで助言をしてくれる人は、長く地元で定住生活を続けてその土地での生活を営み続けることが心地よいのだと思います。
一方で全国を飛び回って常に変化のある環境で暮らし続けることを好むタイプの人もいます。僕はずっと同じ環境に身を置くと飽きてしまうので完全にこちらのタイプの人間です。
どちらがいいと言う話ではありませんが、新しい環境に身を置く側のメリットについては僕自身の経験から話せることはたくさんあります。
東京と大阪で文化が異なることは確かですが、それが原因で悪く思われることはほとんどなく、大阪のみなさんは快く迎えいれてくれています。(少なくとも僕はそう思っている)
そして職場では大阪生まれの部下と二人で仕事を進めていますが、長く一緒に居続けることで東京と大阪の違いを二人で発見し続ける日々を送っています。
大阪の人は隣にいる人が電話をしていたとしたら、誰と電話をしていたのかが気になるようで、そのため電話を切った後に「誰々からでした」とほとんど必ず報告してきます。
僕は隣にいる人が誰と電話していたかについて全く興味がないため、大阪の部下が電話を切るたびに報告してくることを「なんでこいつはいちいち報告してくるんだ?」と冷たい反応をしてました。
この文化の差に気づいたのは部下の方で「東京の人は隣の人が誰と電話していたのか気にならないんですね?」と聞いてきてくれた時、この文化の違いに二人で気づきました。どうやら僕の冷たい反応に違和感を感じ、調べたり知人に聞いたりしてこれが文化の違いだと気づいたそうです。
こういった出来事がこれ以外にもたくさんあり、これからもまだまだたくさん出てきそうです。僕が大阪の文化に対してアウェイになってしまう懸念は一切必要なかったどころか、東京の人間である僕が来ることで大阪の部下自身も当たり前過ぎて気づくことができなかった大阪の文化を見つめ直す学びになっているようです。
日本の文豪である谷崎潤一郎は東京生まれですが、関東大震災を機に関西に移住し、それ以降たくさんの作品を執筆し名作と呼ばれる小説を生み出すこととなります。
代表作である『細雪』は4姉妹の日常生活を綴った作品で、大阪と兵庫県の芦屋が舞台になっています。この日常生活を描いた文体が読者の心を捉えたのは、谷崎が東京生まれであり「外部からの視点」を持っていたからだと言われています。
その土地の魅力に気づくことができるのは、意外にも外部から来た人なのです。地元の人にとって、魅力的な文化は当たり前過ぎて、それがそもそも魅力だと思っていないのです。
引っ越しや移住などを経験すると、異なる環境に身を置くことにネガティブな気持ちを抱くこともあるかもしれませんが、「外部からの視点」を活かして現地の人にも発見をもたらしてあげれば、お互いにとって価値のある文化交流ができるようになるはずです。