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禁酒して読書する日々|人生は勝ったり負けたり

ここ最近は読書をする時間を取り戻すために、どんなに忙しかろうと本を読むようにしている。

そのためにまず始めたのが禁酒だ。夜遅くに仕事を終えて頭のなかが仕事のことで一杯になっている状態をリセットすべく、いち早く酒を飲んで目の前の世界から逃げだすように酔っ払っていたが、酔っ払うと当然のように本を読むことができない。

だから仕事終わりにいち早くマクドナルドに駆け込んで夜マックの倍バーガーを食べてしまい、コーラを飲みながら読書に耽るという生活をしている。コーラがビールに取って代わり、倍バーガーで満腹になると、もはや酒を飲みたくなくなっている。そのまま「マックカフェ」として閉店まで読書に耽るという読書戦略だ。

これによりだいぶ読書量が増えて自分の時間を取り戻すことができるようになったが、出社をする週に5日の全てマクドナルドを食べ続けたいかというと、さすがに「また今日もマクドナルドか…」という気持ちになってしまい、禁酒ができるのも週のうちに半分程度になっている。(僕が仕事を終えた時に空いている飲食店が近隣にマクドナルドしかないのだ)

僕の場合は毎日マクドナルドを食べ続けても、おそらく太りはしない。胃を全摘出しているのでその点の不安は少ないが、さすがに何かしらの生活習慣病になる気がする。思わずスーパーサイズ・ミーを思い出した。

だから実情としては、週に3~4日は禁酒できている程度に過ぎない。1週間を振り返ってみても「飲んだり飲まなかったりだったな」という感じだ。

こうして自分の禁酒を振り返っていて、昔読んだ中島らもの『さかだち日記』というエッセイを思い出した。「さかだち」とは「酒断ち」のことで、アルコール依存症で入院をしてからの禁酒の日々を赤裸々に書いているエッセイである。

『さかだち日記』では禁酒をしている日々の日記が綴られているが、こんなタイトルにも関わず割と酒を飲んでいる。あとがきにも書いてあるが、辞めたり飲んだりしているリアルなエッセイなのだ。

さて、酒絶ち生活の話なのだが、これは勝ったり負けたりである。相手が勝ったりおれが負けたりだ。夜中に自動販売機に走ることも時々ある。そうしてたまに飲む時には、下痢も引っ込むようだ。その代わり原稿は全然書けない。

『さかだち日記』中島らも(講談社文庫)p.303

禁酒のことを勝ち負けで考えてみることで、不思議なことに毎日にメリハリが出てきたのである。酒を辞めて読書ができた日は勝った気になる。思わず酒を飲んでしまった日には、「今日は負けてしまった」と自分の弱さを嘆きながら酩酊して眠る。勝っても負けても一日の総ざらいとして楽しく過ごせているのだ。

本来はきっかりと辞めて猛烈に読書に勤しみたいところだけれど、人間に弱さはつきものであり、どうしても時々負けてしまう。

これからも「勝ったり負けたり」する日常を楽しんでいこうと思う。健康を害さない程度に。

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