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今を生きるためのiDeCo|デメリットも死なない理由に
みなさんはiDeCoに加入していますでしょうか。
個人型確定拠出年金とも呼ばれ、自分が拠出した掛金を自分自身で運用して資産を形成する制度です。
税制上のメリットを受けながら長期投資ができることが特徴で、老後に向けての資産運用に適した従来とは異なる年金制度です。
今回はiDeCoをやった方が良いか迷っている方に向けて、ひとつの考え方を提案しようと思います。
iDeCoのデメリットを考える
iDeCoをやらない人たちが口を揃えて挙げる「iDeCoをやらない理由」のひとつが「60歳になるまで引き出すことができない」ということです。
どんなに合理的な手段だとしても、不確実な老後のために価値ある今を犠牲にしたくないという心理は非常によくわかります。
一般的な会社員の場合、毎月の掛け金の上限は23,000円です。
もちろん額は自分で決めることができますが、若い人の場合はまだ給料も充分でないことも多いでしょうし、そんななかそこそこの金額を数十年降ろせない状態で拠出するわけです。
しかも貯金ではなく投資なので元本を下回る可能性もある。長期投資をするつもりであれば何もiDeCoじゃなくてもいいじゃないか。その考え方はとてもよくわかります。
僕も昔はそう考えていましたが、今はiDeCoに毎月上限である23,000円を拠出し続けています。その決断への踏ん切りがついたのは、自分の中で納得のいく考え方ができるようになったからなので、その考えをご紹介します。
60歳まで生きるということ
60歳までの人生は非常に長く、誰にでも様々な困難が待ち受けているはずです。
僕は23歳の時に胃がんと診断されてしまい、若い年代にも関わらず、はっきりと死を意識する経験をしています。
治療やリハビリが辛い時に「いっそのことひと思いに死んだ方が…」と思う様なこともザラにありましたが、そんな時は「ここで死んだらどうなるか」という想像をしていたことをよく覚えています。
「友人と旅行に行く約束してたけど結局行けなくなるな…」とか
「ポールマッカートニーの来日公演、死ぬまでに一回は観たかったな」とか
「友達に借りた本を返してないや…」など、
想像した「死んだら達成できなくなること」は意外にも日常的なことだったのが非常に印象的です。
生きることを諦めたくなるような本当にしんどかった時、これらの小さな後悔がひとつの踏ん張りになりました。「生きる理由」になったのです。
この「生きる理由」がiDeCoの加入に関わってきます。
「死なない理由」のひとつにする
iDeCoに加入する決断に至った考え方は、iDeCoを引き出すことを人生の楽しみのひとつにして、「死なない理由」のひとつにしようと思ったからです。
僕は若い頃に死を意識する経験をしたので、一般的な若い年代の方々よりも、60歳以降も生き続けていたいという気持ちが強いのだと思います。要は「長生きしたい」と人より強く思っているということです。
これからの人生でも「いっそひと思いに死んだ方が」と諦めたくなってしまうような困難があると思います。
そんな時にiDeCoに拠出してきたことが、60歳以降までの「死なない理由」になるんじゃないかと思ったわけです。
「ここで諦めて死んだら、せっかくコツコツ拠出してきたiDeCoを引き出せない」
そんな気持ちが働いたら、辛いことがあっても諦めずに生きようと思うはずだと考え、僕はiDeCoに加入することを決断しました。
通常は「60歳以降のため」に拠出するところを、「60歳までのため」に拠出するわけです。
これが僕が考える「今を生きるためのiDeCo」戦略です。
そもそも将来に余計な不安を持たないということは、現在をより良く生きることに繋がります。
「希望がある」ということが、今を生きるための大きな力になるのは間違いないはずです。
お金にまつわる話では合理性に関心が行きがちですが、iDeCoの様な長い人生に関わるものについては、人生観にも照らし合わせて判断してみても良いのではないでしょうか。
投資判断は読者のみなさまに委ねますが、ひとつの参考になれば非常に嬉しく思います。