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逆風を追い風に変える、サービス価値と営業組織の再構築~Sansanが契約件数1万件を達成するまで~

2007年に名刺管理サービスの提供を開始し、市場を切り拓いてきた「Sansan」。2024年10月、その契約件数は1万件を突破しました。現在は名刺管理にとどまらず、接点情報や企業情報、営業履歴を一元管理して全社で共有できるようにすることで、売上拡大とコスト削減を同時に実現する営業DXサービスとして進化を続けています。

Sansan事業部で営業部長を務めている本田は、入社から約10年目を迎えます。そのほとんどを営業として過ごし、Sansanの市場拡大に努めてきました。2019年に上場を果たし、ようやくサービスの価値が市場に理解されはじめたと思った直後に状況が一変。新型コロナウイルスの流行をきっかけに、サービスの価値や営業スタイルの変更を迫られました。その状況下、本田が組織を率いるために行ったこととは何だったのか、話を聞きました。

本田 慶太(ほんだ けいた)
Sansan事業部 エンタープライズ東日本営業部 部長
2015年2月、Sansan株式会社へ入社。インサイドセールスを経て中小規模向け営業を担い、マーケティング部門ではオフラインイベントなどを担当。大手企業を担当する営業部門のグループマネジャーを担った後、コロナ禍における既存顧客との関係維持をミッションとし、中小企業向け営業部門の部長に就任。現在は大手企業向け営業部門の部長を務める。


順調に成長を続けたSansan。突然訪れた市場の激変

ー入社された当時のSansanの状況を教えてください。

私が入社したのは創業から約8年後の2015年です。当時、世間では名刺を組織で共有する文化がないのはもちろんのこと、紙の名刺をデータ化して管理することも珍しい時代でした。

お客様からの問い合わせは「名刺を作りたい」といった名刺作成の内容が多く、名刺管理サービスとしての問い合わせも、「展示会で獲得した名刺の管理をしたい」といった単発での引き合いが多かったと記憶しています。

そのため、営業として「名刺を企業の資産に変える」という価値を伝える難しさはありました。ただ、会社としてはこれから伸びていくフェーズで、勢いに満ちていました。

その後、当社は2019年に旧東証マザーズへ上場を果たします。まさに、名刺管理サービスの価値が市場へ伝わったことが証明された瞬間だと感じました。

ー名刺管理サービスとして順調に成長を遂げたSansanですが、その後にサービスとしての大きな方針転換がありましたね。

そのきっかけとなったのが、新型コロナウイルスの流行でした。2020年4月に緊急事態宣言が発出され、人と会えなくなり、名刺交換もほとんど行われなくなりました。当時のSansanは、名刺を取り込むことで価値が発揮されるサービスですから、まさに逆風が吹き荒れる状況でした

中小企業を中心に解約を検討する声が上がり始め、新規の問い合わせも減少。2021年10月には、創業以来初めて月次の継続売上が純減しました。上場後わずか2年で、このままでは事業が存続できなくなるかもしれないという状況に、危機感が募る日々でした。

抜本的にサービス価値を定義し直し、営業スタイルもアップデート

ーSansanに逆風が吹くなかで営業部長に就任されたと伺いました。どのように危機を乗り越えたのでしょうか?

まず、サービスの価値を定義し直しました。もちろん一人で行ったのではなく、当時のCPO(Chief Product Officer)やプロダクトマネジャーと「どうやったらコロナ禍でも受け入れられるサービスになるか?」を議論したのです。

開発部門へのフィードバックは日常的に行っていましたが、サービスの提供価値を議論する場に営業が参加するのは珍しいことでした。それほど、全社を挙げた変革が必要だったのです。お客様と接する機会の多い営業として、意見を求められていることを強く感じました。

議論の中では最初、開発部門からアップデート案をいくつか出してもらい、その優先順位を決めるために社内アンケートを採ろうという話になりました。

しかし、名刺交換が行われない状況を踏まえると、抜本的にサービス価値を定義し直した方がいいかもしれないと感じ、改めて自分たちの営業活動を振り返りニーズを整理しました。結果として、新しく企業情報のデータベースを実装し、新規顧客の開拓につなげられないかと考えました。

既存のお客様にもヒアリングをしたところ、新規顧客の開拓に課題を持っている人は多く、筋が良さそうだと分かりました。企業データベースにこれまでSansanで蓄積されてきた接点の履歴を掛け合わせれば、より営業を行いやすくなり相乗効果が生まれます。

こうして、進むべき方向が決まりました。そこで、「名刺管理サービス」の枠を越えた価値を提供するSansanを「営業DXサービス」と再定義しました。

ー創業から一貫して「名刺管理サービス」を提供してきた当社。サービスの方針転換に伴い、混乱はありませんでしたか?

正直、混乱がなかったとは言えません。

最も苦労したのは、組織全体で営業スタイルを変えなければならない点でした。試行錯誤を続け、結果も出してきた「名刺管理サービスを提案する組織」から、「お客様の営業戦略を語れる組織」に短期間で変えなくてはならなかったのです。

ー具体的にどのようなことを行ったのでしょうか?

朝会でロールプレーイングを行ったり、営業を中心として「営業DXサービス」の価値を言語化する合宿を開催したりと、地道なことを行っていきました。私を含め、気を抜くと従来の提案スタイルに戻ってしまうので、小さなことですが営業資料の中から「名刺管理サービス」という言葉をなくすことも徹底しました。

それに加えて、中小企業担当の営業部門で独自に実施していたのは「デモ選手権」です。メンバーの前でそれぞれがSansanの操作デモをしながら提案を行い、互いに感想を述べ、最終的に優勝者の表彰を行いました。これにより、「営業DXサービスとしてのSansan」の提案方法を考えるきっかけになったと思いますし、メンバー同士で提案トークを学び合うこともできました。

当時、150人ほど営業メンバーが在籍するなか、そういった小さなことを積み重ねていきました。

ーサービス定義の変更を発表した2022年4月から約2年半。「営業DXサービス」としてのSansanが普及したと感じる瞬間はありますか?

「営業としてどのようなDXができるかを考えたい」といった内容の問い合わせをいただく機会が増えたことです。名刺管理サービスではなく、そういった課題からSansanを思い浮かべてもらえるようになったことは非常にうれしいですね。

商談時には、「その戦略を実行したいのであれば、Sansanでできますよ」と言えるシーンが増え、営業活動を網羅的にサポートできるサービスになったことを実感しています。

最近は、お客様から自然に「営業DX」という言葉が出る場面も増えてきました。私たちがこの数年で進めてきたことは間違いなかったこと、そして改めて市場にサービスがフィットしたことを確信しています。導入企業も伸び続け、2024年1月には契約件数が9000件を、さらに10月には1万件を突破しました。

営業DXの力で、「営業は楽しいもの」というイメージをつくりたい

ー 今後、Sansanで実現したい世界を教えてください。

Sansanで世の中の営業DXをさらに加速させ、営業のイメージを変えていきたいです。

営業の醍醐味は、目の前にいるお客様の感情が動く瞬間を見られる、その瞬間を自分が作れることだと思っています。感情が動くと、個人の判断が変わります。そして企業の判断が変わり、導入していただいた先に、その企業の事業成長をサポートできます。そう考えると、営業はとてもやりがいのある楽しい仕事です。

だからこそ、営業パーソンの時間は可能な限りお客様との商談に割いてほしいと考えています。営業DXが加速すれば、営業戦略を立てるための情報収集や、商談の記録作成など、商談以外の時間を短縮できます。

今話した点は現状のSansanでも実現できますが、これからさらにSansanで解決できる範囲を広げていくことで、より商談に集中できる環境を作れます。

お客様の収益も、おのずと最大化していくでしょう。そうして、営業はつらいものではなく楽しいものだとイメージを変えていきたいですね。その先に、あらゆる企業にとってSansanがなくてはならないサービスになれたらと考えています。

▼Sansanのプロダクトサイトはこちら

【もっと「Sansan」を知りたい方へ】
他にもSansanに関わるメンバーのnote記事を公開しています。ぜひご覧ください。


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