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東京大学運動会スキー山岳部百周年記念式典・懇親会(「山桜通信」52号)

当会も2019年に100周年記念式典を開催したが、ここ数年各大学山岳部の100周年が目白押しである。今号以降、その式典の内容をリポートいたします。(編集部)

荒川一郎

東京大学スキー山岳部(TUSAC: Tokyo University Ski and Alpine Club)の百周年を記念する式典と懇親会が、2023年6月4日に神田学士会館にて開催された。式典はTUSACの、懇親会は東京大学山の会(TUSACのOB•OG会で山桜会に相当)の主催である。参加者は150名を超え、その内訳は出席者名簿によれば、山の会会員:89名、TUSAC現役部員:6名、大学山岳部関係:34名、山岳団体関係:14名、山岳出版関係:7名等であった。なお学習院からは私の他に、右川清夫、福岡孝昭、藤大路美興,加藤洋の各氏が出席した。

山の会の久村俊幸氏の司会で式は進行し、初めにTUSACの教員部長でいらっしゃる森田一樹教授の開会の辞、その後、来賓の東京大学津田敦副学長、日本山岳ガイド協会と全国山の日協議会の谷垣禎一会長、谷川岳山岳資料館の八木原圀明館長からの祝辞が述べられた。

記念講演は鹿屋体育大学の山本正嘉名誉教授による「登山は百薬の長〜運動生理学から見た効能とは」であった。山本氏は、シヴリン北稜の初登攀、アコンカグア南壁の登攀、また『登山の運動生理学とトレーニング学』(東京新聞)など文武両面で知られる方であるが、この記念講演は、前者の先鋭的登山の話ではなく、後者のそれもどちらかというと「高齢者が長く登山を続けるためには」という話であった。月に一度標高差2000mの登山を行うよりは、週に一度500mの上り下りの山に行く方が健康と体力の維持・増進には有効であることをご自身の研究データーを基に大変わかりやすく解説された。また登山・ハイキングのためのエクササイズも紹介された。Exhike で検索すると動画を見ることができる。

懇親会は、山の会の安田典夫会長の開会の辞に続き内田博元会長の乾杯で始まった。コロナ禍の下の制約から開放されて、久々に山の仲間が集まったせいであろう、会場のそこかしこで話の輪ができ、大変賑やかであった。懇親会の間には、スキー山岳部の百年を紹介する映像が流されたが、私自身は色々な方との話に忙しく、その映像に注目する暇がなかったというのが実際のところであった。懇親会の終盤には、山の会の鹿野勝彦氏から主催者のご挨拶があり、またご来賓の和田城志氏のご祝辞があったものの、会場の賑やかさの中でなかなか聴き取れないという状況であった。会はTUSACリート(アルトハイデルベルグ、放浪の歌、スキーの寵児の三曲からなる)を歌って締め括られた。

東大スキー山岳部の百年の歴史の中には、登山黎明期の先人たちの活躍、二十世紀半ばのバルトロカンリ、キンヤンキッシュ、南極、同世紀後半のシヴリン、K7での活躍、その後の部員減少の危機とそこからの再建など、様々のトピックスがある。挨拶や祝辞の中で断片的に触れられたものの、それらを振り返り紹介する充分な時間がなかったことは惜しまれる。百年の活動の総括は、東京大学山の会発行の東京大学運動会スキー山岳部百周年記念誌『山と友 III』に丁寧になされている。ご一読されたい。

大学山岳部の歴史を語る時、OB•OGを中心とした海外登山等の活躍に目が行きがちである。TUSAC・山の会にしてもその例から外れるわけではないが、1976〜1983年の間の部活動の記録は、まさに大学の山岳部の現役学生の活動という点で目を見張るものがある。そしてそれはシブリンとK7に繋がっていく。多くの大学の山岳部が百年の歴史を刻む中で,それぞれの栄枯盛衰を経験してきたものと思う。歴史は繰り返すという。いつかまた、何処かの大学で現役学生の活発な活動が始まるに違いない。

(学習院大学山岳部元部長、東京大学山の会特別会員)

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