夢の伝承

学習院大学山岳部　昭和57年卒
学習院山桜会（学習院大学山岳部・学習院高等科山岳部ＯＢＯＧ会）
会長　加藤洋

　私の学生時代はガストン・レビュファ（※１）やヴァルテル・ボナッティ（※２）などのスーパースターが健在で彼らの本を読みさったものだ。 またラインホルト・メスナー（※３）やイェジ・ククチカ（※４）の登攀に胸躍らせていた。 同じころパタゴニヤからクリーンクライムの風が吹いてきてみんなで競ってそのまねをした。 私たちは相変わらずハーケンやボルトを持って岩登りをしていたけれど、今日のルートより明日のルートはもっとグレードの高いところを登ろう、今年の冬山より来年の冬山はもっと難しいところにいこうと思って山登りを続けていたことは間違いない。 辛いことも多かったがそれよりも数倍の楽しみと喜びがあった山岳部時代だったと思う。 純粋に山のことだけ考えることができた幸せな時代だった。

　登山は山に登りたいという情熱がなければ始まらない。 それぞれの季節と山域によってさまざまな楽しみと困難がある。 部員たちはその多様性の中から自分たちの山登りを発見してきた。 学習院の山登りというものはどこかの活躍した世代だけがつくるものではない。 １００年間続いたトレースの一歩一歩は「すべての世代」がつくってきた。 山岳部の記録の中にはそれぞれの時代の現役部員達の情熱と矜持があふれている。

（※１）ガストン・レビュファ（Gaston Rébuffat）
フランスの登山家（1921年5月7日 - 1985年5月31日）。
『星と嵐』を皆が読んでいた。読むと登りたくなる。

（※２）ヴァルテル・ボナッティ（Walter Bonatti）
イタリアの登山家（1930年6月22日 - 2011年9月13日）。

（※３）ラインホルト・メスナー（Reinhold Andreas Messner）
イタリアの登山家（1944年9月17日 - ）。
言わずと知れたスーパースター。

（※４）イェジ・ククチカ（Jerzy Kukuczka）
ポーランドの登山家（1948年3月24日 - 1989年10月24日）。

山岳部では、時代によってスーパースターは変遷する。 憧れていたアルピニストの名前を語らせるとおおよその年齢がわかる。（笑）

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