光徳小屋の思い出（100年の自画像）③

学習院大学山岳部　昭和47年卒　秦野郁郎（山桜会小屋係）

　平成六年のあるとき、突然会社の上司から声がかかり、私が「山櫻会」の会員かと正してきました。 今園国建さん（※）という大先輩で名前は知っていましたが、仕事での接点もなくお付き合いもありませんでした。名簿に載っていますが幽霊会員です、と答えると近日中に山櫻会の総会があるから一緒に出ろとのこと。 二十年以上も接点のないＯＢ会に出るのも心苦しく顔を出してすぐ帰ろうと出向きました。 予想した通り名前と顔が一致する人もなく隅に隠れていると、かすかに思い出のある藤大路さんが近寄ってきて「光徳小屋が開鎖になるかもしれません。」との開ロ一番。

　唯一の学生時代の思い出の場所の光徳小屋が閉鎖と聞いて胸が騒ぎ出しました。 その一年ほど前仕事の関係で宇都宮の近くに出向いたのですが、仕事が早く終わり何気なく日光・中宮祠と足を延ばしそのまま光徳小屋に行きついてしまいました。 三代目の光徳小屋が卒業後に建て直されていることを聴いていたので、ちょっと光徳小屋を見せていただこうと新しい管理人さんに昔のはなしをしました。 管理人さんの返事は、「許可証を見せてください」と。

　二十年ぶりに近くに来た「光徳小屋係り」だった卒業生にとうとう首を縦に振らず、光徳小屋を見せてもらえずに引き返しました。 二度と光徳小屋にもＯＢ会にも来ることはあるまい、と夕刻の光徳小屋を後にしました。 藤大路さんの言うには光徳小屋の利用者が激減して学校としてもこれ以上負担に耐えられない、との話でした。

　私の現役時代は、あれほど多くの学生が楽しく利用していた光徳小屋に何が起きているのか気になりましたが二十年以上のブランクがあり、すぐにしゃしゃり出ることもできず取りあえずは光徳小屋の実態を知ることからと光徳小屋に足を向けることにしました。

（※）今園国建
旧制中高等科山岳部昭和20年卒

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