2023 小満 紅花栄(べにばなさかう)
わたしのお茶のお稽古は、いつも14時に始まる。だから、その1時間前には先生のお宅の玄関に着て、靴を脱いで手を洗ったらそのままお台所へ。今日も、いい匂いがしてきたぞ。
お稽古に行っているのか、お昼ご飯を食べさせてもらいに行っているのか。鳥が先か卵が先かみたいなノリで言うもんじゃないんだろうけれども、お稽古の前にいただく先生とのお昼ご飯の時間がたまらなく好き。
手の込んだ天ぷらや唐揚げの日もあれば、買ってきた肉まんの日もある。でもその肉まんだって、我が家ではレンチンだけれども先生のお家では蒸し器で蒸されてから食卓にあがる。そして、顔を見合わせて「おいしいねぇ」と何かを食べることの幸福感に満たされながら1時間を過ごすのが、もう楽しみで。
この日のお昼ご飯は、富士宮焼きそば。でも、なんだかシャキシャキとした食感がする。これはなんだろうと思いながら噛み締めていると
「今日はねぇ、アスパラを入れたのよ。食感が良いわよねぇ。」
と嬉しそうな声が聞こえてきた。そういえば、この春はまだアスパラを充分に楽しんでいなかったなぁということに気がついて、ますます嬉しくなる。季節を味わえば味わうほど、その季節がさらに愛おしくなる。
「おいしいですー。わたし、今期初めてこんなにアスパラを味わっています。」
と答えると、そのアスパラは知り合いから送られてきたものだとのことで。まだまだたくさんあるから、持って帰りなさいよとお土産に持たせてもらった。なんと、12本も。
その日はお稽古の帰りに丘のお家へ向かう予定だったので、アスパラガスを抱きしめながら電車を乗り継ぎ、丘のお家まで。その日は家主とそれぞれご飯を食べようと話していたし、翌日は久しぶりに外食をしたので、翌々日にアスパラパーティをすることに。
別に「パーティーをしよう!」と話し合ったわけではないけれども、語呂としてなんだかテンションがあがるでしょう?ウキウキな気持ちでお料理をする日はいつも勝手に「〇〇パーティー」と名付けることにしているのです。
この日は、全部で3品。アスパラご飯と、アスパラと豚肉の炒め物と、アスパラの卵スープ。12本全部使ってしまうことにした。
まずは、お米を炊く。最近家主はダイエット中らしいので、お米は2合。2合だって、わたし一人で食べたら2〜3食分だけれども、今回は1食分。炊く前に塩をパラパラとふりかけて、数粒のブラックペッパーと一緒にスイッチオン。
アスパラは全部洗ってしまって、ご飯に混ぜる分はフキご飯のときみたいに5mmずつに切って、他はいつも通り斜め切りに。
あとは、ご飯が炊ける20分前になったら薄切りした玉ねぎをバターで炒めてお肉も入れて、お水とアスパラも入れて、コンソメと塩胡椒で味付けたらグツグツ味がつくのを待つだけ。
その間に、オリーブオイルでご飯用のアスパラを炒めて艶がついたらいったんボウルへ。そのフライパンで豚肉とアスパラの炒め物を作る頃にご飯が炊き上がる。
ブラックペッパーを取り出して、代わりに炒めたアスパラを入れてご飯を混ぜたら、スープに溶き卵を入れてさぁ完成。
実は、ご飯を作ること、特にそれを誰かに振る舞うことに対する苦手意識がものすごく強かったので、noteに自分の作ったご飯を載せるなんて本当におこがましい‼︎とさえ思っているのだけれども。でも、食べたいと思った食材で自分なりに工夫してご飯を作って、それを誰かと一緒に食べながら「おいしいねぇ」と言ってもらえるということは、なんて幸せなんだろうとそんなことにも最近気づき始めていて。
この日も「おいしいおいしい」と残らず全て平らげてもらって、自分で言うのもアレだけれども自分で作ったご飯がとても美味しかったので、とてもとても嬉しかった。できれば、来年の春も、これからずっと先も、春にはアスパラを食卓に出しながら「おいしいおいしい」という思い出を積み重ねていけたら素敵だなぁと思って、備忘録みたいにこうやってnoteに残しておくことにしたのです。もはやこれは全くお茶のお稽古日記ではなくなってしまったけれども。
食後に作ったご飯の写真をLINEで先生に送ったら「あら、やればできるじゃない。今度はもっと早くいらっしゃい。一緒に台所に立ちましょう。」とお誘いまでいただいてしまったりして。楽しみがまたひとつ増えた2023年春です。