2023 初釜

お茶の世界では、新年最初のお茶事を「初釜」と呼び、みんな正装の着物を着て集合して、懐石を食べて、炭をくべて、濃茶を点てて、薄茶を点て、お祝いする。

そしてわたしは今回、一番最後の「薄茶を点てる」のお役目をいただいてしまった。だから、ご飯を食べていても、お酒を飲んでいても、お姉さまがお濃茶を点ててくださっても、わたしはずっとドキドキしっぱなし。前回の炉開きで行った初炭手前は、課題ばかり残るお手前となってしまったから、今回は12月の一ヶ月間をかけてなんどもお稽古を繰り返し、お道具の名前も空で言えるように練習してきた。

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濃茶を終えたお姉様が戻ってきて、薄茶のお菓子を用意する。今回は、わたしも地元仙台の銘菓「みちのく煎餅」を購入してきたので、それも一緒に並べる。小さい頃から大好きだったこのお菓子を、みなさんは気に入ってくれるかしら。

ある程度準備を終えたところで、いよいよわたしのお点前が始まる。

５歩で座り、茶碗・建水・箸を定位置に並べて、いざお点前。

と、ちょうどそのタイミングでみなさんの元へお菓子が配られ、「これおいしいわー」「なんていうお菓子なの？」とお菓子談義に花が咲く。うちの門下は、とにかくみんなお菓子が大好きだ。どうやら「みちのく煎餅」もみなさんの中で大ヒットだったらしく「さんまりちゃん、素敵なお菓子を教えてくれてありがとうーー！」と喜んでもらえて、ほっと一息。

そんなやりとりをしながらも、手先はしっかりと集中して動かして。いよいよ、一服目のお茶をお招客様へ。

その後は順番にみんなでお茶を点て合って、最後の一服をわたしがいただいたら、しまいつけ。どれもが、お稽古の通りにすっと流れていって、気付いたら水屋の入り口で礼をしてお茶会の全てが終わってしまった。

本当に拍子抜けするくらいに、それは「いつも通り」に終わってしまった。

一時間近くかけて着付けた着物も、脱ぐ時はあっという間。身体中の紐という紐を全て解いて片付けをしに茶室へ戻ると、前回わたしと一緒にお点前をしてくださったお姉様がニコッと笑って薄茶を一服点てて下さった。そして、茶碗を出しながら

「さんまりちゃん、身体がしっかりと覚えるまでお稽古を重ねたのね」

と一言。

今までみんなの前でお点前をするとなると緊張して「さぁ、お稽古の成果を存分に披露するぞ！」とどこか発表会とかそんな心持ちでお点前をしていたように思う。でも今回は、主役はお客様で、わたしはお迎えする立場……と、純粋にいつも通りのお点前を丁寧にできたような、そんな感じ。

それってやっぱり、「いつも」のお稽古の延長線上にあると思うから。だから、「身体がしっかりと覚えるまで」というのは最大の褒め言葉だなぁと、お茶会自体を純粋に楽しめたような、うれしいなぁ。

お姉様が点てて下さったそれは、ツーっと身体の芯をとおっていく。あついあついお茶だった。んー！

というわけで、2023年もお稽古に励みます。今年は「所作の美しい女性になる」が目標のひとつなので、この調子で頭でなく身体で綺麗な所作をひとつひとつ身につけて、それらを生かせるようになりたいので。