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分からないことは聞いてみたらいいんだよ

「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」ということわざがある。

子どもはすぐに「どうして?」と言う。
そこに恥なんて1ミリもない。

「どうして?」と聞かれた私は、恥ずかしながらその答えを持ち合わせていない事が多い。だから「分からないことは聞いてみればいいんだよ」と教えた。



息子が5歳の頃。
涙でうるんだ瞳は、テレビ画面に映るカルガモに向けられていた。


5月、テレビでは各局で「カルガモのお引越し」が放映される。

カルガモのお母さんがコガモを助けながら旅をする。横断歩道を渡り、階段を登っては降り、時にはカラスに狙われて命を落としながらも一列になって川を目指す。

画面ではカルガモのお引越しが山場を迎えていた。人間が川の中に作ったダムに、カルガモの親子が苦戦していた。何度登ろうとしても高くて登ることができず、コガモが次々と命を落とした。目的地である川にたどりつけたコガモは半分だけだった。

「どうしてカルガモが死んじゃうことが分かってて誰も助けないの?」
「どうしてダムを作っちゃったの?」

息子は大層悲しんだ。
悲しくて、しばらくの間眠れなかった。
そして私はこの時もまた「どうして」の答えを持っていなかった。


だから、息子と一緒に手紙を書いた。


悲しかったことを言葉に出して伝えられたら
眠れるようになるかもしれないという願いもあった


私からの説明書きも添えて、この手紙をダムを管理している市役所に送らせてもらった。


すると、ありがたいことに町田市役所の担当者様が返事をくださった。

息子宛
私宛

私たち親子がカルガモ側からしか見ていなかったダムは、他方から見ると必要なものだったこと、ダムが水害や魚のために作られていることを知った。


手紙を読んだ息子はうんと考えて
「川が削れなくて、魚がすめて、カモも渡れるダムが作れたらいいね!」と言った。私は「そうだね」と答えた。

息子はまた眠れるようになった。



あれから5年。現在10歳になる息子は、日本野鳥の会に所属しながら鳥を守る活動に力を入れている。

日本野鳥の会 広報誌に掲載の投稿



「どうして?」と聞かれたら、スマホを開いて検索するのが現代のスタンダード。1秒で答えが出る。なんて便利な世の中だろう。タイパなんて言葉が流行するのも頷ける。


だけど恥を忍び、手間を惜しまず聞いてみることで、得られるものは大きい。


「どうして?」
たった一言の、その先には無限の可能性が広がっている。



#未来のためにできること

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本田すのう │   書いて読む主婦noter
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