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カードゲームブームの今だからこそ”百人一首”を取り入れてみた
カードゲームが流行っている。
電気店やおもちゃ屋に行くとポケモンやワンピースやドラゴンボール、ウルトラマンなどカードゲームのコーナーがどんどん広がっている。
我が家の子どもたちももちろん大好きで、トランプから始まり、UNO、ポケモン、蟲神器、イジンデン……と次々と新しいカードゲームに手を出している。
小学4年生の長男も小学1年生の二男も、何かにつけて「ポケカ買って」とか「サンタさんにはポケカのデッキをお願いする」とか言うのでカードは増える一方だ。
そんな今だからこそ、日本に古来から伝わるあのカードゲームがあるじゃないか!!と今年の正月に購入したのが百人一首である。
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百人が詠んだ、百の句が収録されたカードは「読み札としての上の句カード100枚」と「取り札としての下の句100枚」合計200枚のカードで構成されており、お値段たったの2,000円弱。まずお手頃。
並べてみるとまずはその枚数に圧倒された。
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今回は大きさが分かりやすいよう隙間なくぴっちりと並べたが、実際は隙間を開けて並べるので畳1枚分は必要になる。
並べてみてから気がつく。
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読めない……!!!!!
小学生には「ゑ」はまだ読めなかった。「ゐ」も同じく読めない。カルタとルールは同じだよと説明したけれど、読めないことには取ることも難しい。
でも大丈夫。
そんな子どもたちのために作られたのが坊主めくりである。
坊主めくり
使用する札は読み札のみで、取り札は使用しない。百枚の絵札を裏返して場におき、各参加者がそれを一枚ずつ取って表に向けていくことでゲームが進む。多くのローカルルールが存在するが、多くで共通しているルールは以下のようなものである。
・男性が描かれた札(殿)を引いた場合は、そのまま自分の手札とする。
・僧侶が描かれた札の描かれた札を引いた場合には、引いた人の手元の札を全て山札の横に置く。
・女性が描かれた札(姫)を引いた場合には、引いた人がそれまでに山札の横に置かれていた札を全てもらう。
・蝉丸の札を引いた場合、引いた人は一回休み。
裏向きに積まれた札の山がなくなるとゲーム終了。このとき最も多くの札を手元に持っていた参加者が勝者となる。
まだひらがなを読めない子どもでも楽しめるように考案されたのがこの坊主めくりなので、まずは坊主めくりで遊んでみた。
何度か遊んでいるうちに、子ども達は『蝉丸』を覚えていた。蝉丸はトランプでいうところのJOKER的役割なので、引いた瞬間「蝉丸だー!!」とすぐに気がつくようになった。
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しかもこの坊主めくり、正式なルールがなく各地でローカルルールがあるらしい。色々なサイトを調べてみたけれど「蝉丸の扱い方についてはおじいちゃんおばあちゃんに聞いてみよう!」と書いてある。
口頭で伝承していくローカルルールなんて、日本の無形文化遺産に登録した方がいいんじゃないかと思うくらいおもしろい話だと思いながら実家の母に電話をかけた。
「蝉丸ってどうするの?」
九州出身の母は「坊主めくりやったことないけん、知らん。」と答えた。
このままではローカルルールの伝承が途絶えてしまう。危機的状況かもしれないからこれを読んだ方はおじいちゃんおばあちゃんに聞いてみて欲しい。
そうこうしているうちに子どもたちが色々な発見をし始める。
「同じ坊主でも”法師”って人とそうじゃない人がいるよ」
「坊主だけど帽子かぶってる人は僧侶なの?」
「天皇が3人いるよ!」
とか、なんとなくカードの絵柄や役職についていつの間にか頭に入っていってる。恐るべき子どもの柔らかい頭。
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何回か坊主めくりを楽しんだ後、せっかくだから百人一首をやってみることにした。「私が読むから、カルタみたいに取ってみてね」と子ども達に伝えて取り札を並べた。
ここでもう1つ問題が起きる。
読めない……!!!(再び)
読み札が、読めない。いや、正確に言うと、ものすごく下手なのである、親が。「けふ」は「けふ」と読んでいいのかそれとも「きょう」と読まなくてはいけないのか。イントネーションはどこで切るのか。分からない。分からなすぎる。
読みなれていない句に最初の何枚か読んで諦めた。これは、プロのチカラが必要だと気がつき、Youtubeで検索をかけた。
あった。
そして決してマネのできない独特の読み方だということも新発見。
プロの読む百人一首をバックに、私と長男と二男が3人で手分けして札の周りをうろうろと歩き回る。100枚もあると、1枚見つけるのに3分以上かかることもある。
しかも、やっと見つけたと思ったら……
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ひとから始まる句が7枚もあるではないか!!!
「ひと……何だっけ!?」
「ひとこそだって!!」
「……ひとこそ2枚ある!!!」
こんな感じで本当に進まない。
ようやく1回目が終了する頃には1時間半が経過していた。
けっこう疲れる。
あーやっと終わった、と一息つこうとしたら
「もう1回やろう!!!」
と子ども達。(結局その後2回やった)
そしてやはり、何回か行うことで色々発見していく子どもたち。
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春と秋の2種類だとか
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きりぎりす→衣かたしき
だとか
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とか、言い出すのである。
どうやら百人一首をなかなかに楽しんでいる様子。なんとなく、学習にも良さそうだったので「百人一首を解説している本」も購入してみた。
今度はクイズ大会が開催された。
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【問題】
この句を読んだのは「天皇」ですが、どんな気持ちでしょうか!?
「き…気持ち!?えっと…春が過ぎて洗濯物を干してたら、てふ…蝶?蝶が飛んできて夏だな~って思った!?天皇って洗濯するのかな…?」
【正解】
いつの間にか、春が過ぎて夏がやってきたようですね。夏になると真っ白な衣を干すと言いますから。あの天の香具山にあのように衣がひるがえっているのですから。
チョウチョいなかった。てふ…とは?
「天皇」を強調した理由も分からないまま。
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【問題】
この句はどんな気持ちでしょうか!?
「えぇっと、鹿が山で紅葉踏んでいるのを聞いて秋だな~なんか寂しい気持ちだな~って思ってる!」
【正解】
人里離れた奥山で、散り敷かれた紅葉を踏み分けながら、雌鹿が恋しいと鳴いている雄の鹿の声を聞くときこそ、いよいよ秋は悲しいものだと感じられる。
「秋の悲しい気持ちを、山奥で鳴く鹿で表現しているんだよ!」と本を読みながらドヤ顔をする長男。なんだろう、悔しい気持ちとあっぱれの気持ちが同居している。
長男は意味も知りながら覚えたいらしい。
二男は意味よりもキリギリス~とかまにまに~とか、響きが特徴的なものから覚えている。そして私は吸収力がほとんどなくなった頭と、過去の経験からなんとなく聞いた句を再度インプットしようとしている。
3人同時に始めた百人一首。
果たして一番取れるようになるのは誰なのか。
私はこれから覚えられるのか。
このブームはいつまで続くのか。
ポケカと同じくらい末永く楽しんで欲しい。
そしてあわよくば蝉丸のルールを後世に伝承していって欲しいなんて、買ってからたったの1週間で大きすぎる夢を抱いているのである。
そんな句も、ちゃんとあった。
ながらへば また此の頃や しのばれむ
憂しと見し世ぞ 今は恋しき
この先もっと長く生きていれば、辛いと思っている今この時もまた懐かしく思い出されてくるのだろうか。辛く苦しいと思っていた昔の日々も、今となっては恋しく思い出されるのだから。
世の中は 常にもがもな 渚こぐ
あまの小舟の 綱手かなしも
世の中の様子が、こんな風にいつまでも変わらずあってほしいものだ。波打ち際を漕いでゆく漁師の小舟が、舳先(へさき)にくくった綱で陸から引かれている、ごく普通の情景が切なくいとしい。
百人一首をしてみたら、古の歌人が伝えたいことを代弁して後世に残してくれていた。
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