学会参加報告:交流分析学会2023その2 ポジティブ心理学
8月に行われた交流分析学会の参加報告その2です。初日午前は一般演題発表、ポジティブ心理学の教育講演、そして午後一番に会長講演が行われました。
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日本交流分析学会 第48回学術大会・講習会
日時:2023年8月12、13日
会場:日本大学歯学部 本館7F
テーマ:交流分析の未来
https://jsta48th.com/
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▼一般演題発表から
一般演題で印象に残ったものから。まずは松本敦先生の「こころのメガネ」。交流分析的には「準拠枠」の話になりますし、認知行動療法的には「自動思考」に絡む部分ですが、「メガネ」に例えることでより理解しやすくなりますね。そして大事だなと思ったのは、メガネの短所だけでなく長所にも目を向けていることです。「こころのメガネ」の資料は以前、松本さんからいただいていたのですが、今回改めてお話を伺って、これは患者/クライアントだけでなく、企業の一般社員研修でも使える内容だし、学会の研修会で取り上げてもいいテーマではないかと思いました。
齋藤紀先先生の3ヒドロキシ酪酸(3HB)の話は初めて知りました。3HBがうつ状態やストレスの指標になるかもしれないというのです。こういったバイオマーカーはいろいろなものが現れては消え、を繰り返してきましたが、3HBの有効な活用法が見つかるといいなと思いながらお話を伺っていました。
そして江花昭一先生の夏目漱石の発表。「吾輩は猫である」の作品成立の過程をコ・クリエイティブ交流分析の視点から眺め、漱石はさまざまな読者との重層的な語らいを踏まえながら執筆を続け、回復していった面があるのではないか、と分析されていました。対話の重要性ですね。私が最近取り組んでいるオープンダイアローグともつながるように感じました。
▼会長講演「交流分析の未来」
会長の丸岡秀一郎先生は「交流分析の未来」について話されました。自我の構造分析を脳と内分泌系、脳と自律神経系、脳と免疫系、常在細菌叢、そしてエピゲノム修飾まで視野に入れた分子生物学的アプローチから考え、そこにウェルビーイング理論(ポジティブ心理学)の応用と、アプリなども活用したセルフマネジメントを軸に、個別化医療、自己成長モデルとして交流分析を考えていきたいと仰っていました。実は講演中、機器の不調で一部のスライドがうまく映写されなかったのですが、なんと、後日録画し直したものをアーカイブ配信してくださいました。講演のソフトな語り口だけでなく、その誠実なお人柄に心を打たれました。
▼教育講演「ポジティブサイコロジーの応用」
今回、個人的に最も収穫になったのはこの講演です。ポジティブ心理学を提唱するセリグマンの本は持っていますし、最近は学会でも取り上げられる機会が増え、私も何度か聴いてはいたのですが、1990年代から解決志向アプローチを学んできた身にとっては、当たり前だよな、くらいにしか感じていませんでした。でも今回はなぜかすごく心に入ってきたのです。録画ではありましたが、松隈信一郎先生(フィリピン大学ディリマン校心理学部)の話し方がうまかったのかもしれません。
松隈先生が紹介した考え方は、24種の「徳性の強み」の中から自分のトップ5を見出し、それを伸ばしていくというもの。カウンセリングをしていると、どうしてもその人の困っていることを聞きますから、問題に焦点が当たってしまう。「問題を解決できない自分」「困難を克服できない自分」などに焦点が当たってしまう。しかし変化を引き起こす原動力はその人の強みではないか。ところがその強みに本人は気づいていない。強みという考え方さえしたことがない。問題の解決に向け、「あなたの強みを一緒に考えてみませんか」というアプローチ、強みを一緒に考えていくオプションがあってもいいんじゃないだろうか。そのためにはキーワードがあった方がいい。クライアントから引き出すと言っても、そんなことは考えたこともないからなかなか出てこない。24種の「徳性の強み」を元に一緒に考えていく方がうまく進むのではないかと思ったのです。
オンラインで自分の強みを診断できるサイトがあります。無料です。
●VIA強み診断テスト
私も早速やってみました。私のトップ5は誠実さ、大局観、向学心、愛情、好奇心でした。ちなみに「リーダーシップ」が最下位なのには笑いました。これでもクリニックの院長をやっていたんですよ、私は。みんな好き勝手なことをするわけです。チームワークは良かったですけどね。
このサイトから具体的なアドバイスをもらうにはお金を払う必要がありますので、そこはご自身の判断で。
カウンセリングの場面で24種の「徳性の強み」をどう使っていくのか、具体例を知りたいですし、探っていきたいなと思いました。
大会に登壇された先生方、お疲れさまでした&ありがとうございました!
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