みんな働いてる人に見える
仕事を辞めて一ヶ月がたった。
3月末、移動転職しなきゃいけなくなった。辞めると聞いて、職場の子育て支援施設で出会ってきた親子さんたちが、一同に介してサヨナラ会をやってくれた。今までやってきたご褒美みたいな時間だった。離れたくない。ホントは離れたくないんだよーと、言えないけど思っていた。
ここでたくさん学び、たくさん自信もついた。
そのころ仕事の話といえば「来てる子たちが可愛い」というものばかり(あとは、「人手が足りない」……)だった私が、4月に入り、帰ってくるたびに涙ながらの愚痴ばかり言うようになった。とうとう夫から「辞めなさい」とドクターストップならぬパパストップがかかった。「それもできるだけ早く」。
何があったかは、本題から外れるので割愛するが、怒涛の様な仕事と分かってもらえない衝突とがあり、ずっと胃が痛かったことだけお伝えする。
方向性の違いでバンドは解散するものだ。
方向性って大事。
とんとん拍子にそれは決まり、気がつくと、8月から無職になっていた。
辞める前は、仕事と家事育児と愚痴で20時間くらい費やしていた日々だった。睡眠時間は4時間くらい。なので、辞めたら永遠に時間がある気がして、あれもしたいこれもしたいと思いを巡らせて、仕事してなかったらできない事するぞ!と意気込んでいた。平日に美容室とか行っちゃう?免許取っちゃう?!資格取っちゃう?
だが、いざ、辞めたあとは、保険証もろもろの手続きやら、家の片付けやら、お盆はお盆で出かけたりして忙しいやらで、あっという間に8月が過ぎた。退職が娘の夏休みに間に合ってよかった。のだが、娘の初めての夏休みの思い出づくりに、奔走した感じだった。
さて、9月。ようやく一人でご褒美の時間が取れる、と思っていたのだが……。
ふらりと都会に出て気づく。
あれ?私、都会に来たのに100均と3COINSで、便利グッズしか買ってないや!!
おかしいな、あっちもこっちもお金かかるな。
急に、収入のなさを実感したのである。世の中街を歩けば支出ばかりである!
あれだけ忙殺されながら、何万もするもの買うんでもないし稼いでたんだから多少使ってもいいんでないかい、という思いと、今更美容室とか行って何になる?今お金使っちゃっていいの?という思いが交錯して、結局どこにも行けなかった。
ハローワークと、病院と、スーパーと、100均と、図書館。
仕事してるときとあんまり変わらない。
美容室とか、ネイルサロンとか、マツゲパーマとか、美術館とか、マッサージとか………に全くいかず、家事して携帯見て、本読んでるうちに、あっという間に午後になる。
テレビをつけると、みんな働いてるなぁ、創業何年と聞くと、長く続けるってすごいなぁ、スーパーに行くと、レジの仕事ってすごいなぁ。
なんていうか、まさにみんな働いて見えるし、みんなすごいなぁモードになってる。バリバリ働いてた頃から、自分の価値が急に下がった気がして……。肩が下がる。スマホに逃げる。
娘が帰ってきて、おやつを用意して一緒に食べる。
宿題を一緒にやる。
少し遊ぶ。
遊びながら、ふと、娘に聞いてみた。
「ママがお仕事辞めてよかった?」
「うん!」と即答。
「どうして良かったの?」
と聞くと、
「ママといっぱい一緒にいられるから」
と返ってきた。
そうか。
そうだった。
あそこで働いて稼ぐより、家庭を優先しようと決めたから、ここにいるんだった。
「働くか働かないか」「稼ぐか稼がないか」という価値と
「家族に時間を使うか、使わないか」
という価値と
比べるものが違うのだ。
娘はずっと「学校行きたくない。」と言っていた。夏休みまでの4ヶ月弱、私は自分の仕事のために、娘に学校に行ってほしいと思っていた。
どうしても、8時半〜5時半までは1人にさせてしまうので、実際問題、“行ってもらわなきゃ(こちらが)困る”という形で、家から押し出していたのだ。
「今日は学校休む」という娘を、分かったよ休もうとは、とても言えない状況だった。その上、娘と帰ってきてからも、ずっと仕事のことを考えていたし、夜も朝も早く早くといつも急かしていた。
ごめんね。といつも思いながら、娘のために学校にうながしているような言い方をしていた。
辞めた今、いつでも休める状況になって夏休みが明けて、娘は一度も「今日休む」と言っていない。放課後学童(うちは親が働いてなくても5時までなら行けるシステム)のあと、前より帰って来る時間が1時間早いだけで、夕飯後の余裕が違う。
学校かぁ。つまらない。とはいうし、今でも玄関出て少しは一緒に登校しているが、前より嫌だと言わない。
絵日記が書けなくて泣いたりもしない。
学校の問題というより、やはり、こちらの気持ちの問題だったのかな。。
そして、私は全てスルーしてきた学校ボランティアに、初めて参加してみた。
今まで、忙しさを理由に見ないふりをしてきた、好意で無償で学校を支えている人がこんなにもいるのだと、改めて目の当たりにした。
色々と、新鮮だった。
学校にいる私に、くっつく嬉しそうな娘も。
もちろん、お金を稼ぎたいのは山々だし、働いてたからこそ得られる充実感や出会いも、あることは知っている。
でも、働いていない自分に価値がないと嘆くより、ここで知見を広げて視野が広がる世界もある。
辞めたあとも仲間はいる。
再就職したとしても、きっと今の時間は役に立つ。
やりたいことをしよう。
もう少し、胸張っていこう!
資格でも取るか……うーん高いな……(笑)