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初舞台と、指しゃぶり
小さな保育園の小さな運動会。
ひとクラスずつの入れ換え制だった。
おとなは一人に2人まで。
だから、いわゆる『運動会』を知っている親の世代から見たら、本当にこじんまりとした小さな1時間もない会だ。
それでも、去年の運動会は出られなかったので、年中の娘にとっては初舞台。
人前に立つということ自体初めてだったのだ。
ゾロゾロゾロと、ニコニコでこぼこしながら一列で入場する子どもたちが、なんとも可愛い。
泣いちゃうこ、はみ出しちゃうこ、いろいろいるのも可愛い。
でも、やっぱり目が行くのは娘で。ああまた指加えてる。爪を噛んでるな。そんなところが気になってしまう。
余談だが、先日娘憧れのマニキュアを買った。乾くと、ペリッと剥がれる子ども用のやつ。
ずっと憧れていたので、大事に大事に抱えて帰ってきて、早速塗ってみたというのに、塗るときも乾かすときもめちゃくちゃ嬉しそうだったのに、5分後に全部はがしていた。
「何で剥がしちゃったの?」と聞くと、
「爪噛みたくなっちゃったから」と。
マニキュアが爪噛みに負けた瞬間である。
困ったもんだ。
で、運動会に話題を戻すと、娘は緊張した顔をしながらも立派に演目や演技を終えた。どう転んでも、隣としゃべっても、なにしても可愛い、立派、という演目なので助かる。
娘に、爪噛みのことは言うべきか、と迷ったが、言わないことにした。と思っていたが、家でゆっくりしているちょっとしたタイミングで、つい言ってしまった。
すると、娘は明るく言い返す。
「娘ちゃん、爪噛まないと生きていけないんだよー」
ブハッと、吹き出す私に娘も大笑い。
生きていけないとは良く言ったもんだわ。
ひとしきり、娘を抱いて笑い合う。
緊張したり手持ち無沙汰の時に、確かにそれは良く出る。普段はあんまり出ない。
普段は勝ち気女子で、保育園でもほぼ突っ込みみたいな立ち位置でいるのではないかと思っていたが、
ああ、爪噛みは緊張を隠し、弱みを見せまいとする、娘の生きる術なのか。
大袈裟かもしれないけど、笑いながらなんだか納得してしまった。
*****
午後は近所のお祭りに顔を出した。
ステージで、大人の方のフラダンスがやっており、見る。笑顔で美しい。
こんな風に、娘もいずれはと、思いながらも、その方達の手が、小刻みに震えているのを見た。
そうだよな。大人だって緊張する。手も震える。自分がその立場だったら、震えるだろう。
子どもは、なにしても可愛いし元気に踊ればいいと思いがちだけど、こどもだって緊張するよな。
娘のフラダンスの発表会では、ありのままを受け入れて、爪を噛もうが、舞台に立てただけでもいっぱい褒めようと、誓った母なのであった。
初舞台の上で、娘はなんとかその瞬間を生きようとするに違いないから。